「草食男子」は、もはや肉食になれない。これだけの理由

セックスが素晴らしいことナンバーワンだった時代は終わった。一体何が起こったんだろう?
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Don Bayley via Getty Images

映画「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」の影響で、僕たちの夜はしばらく拷問が流行りそうだ。絹のロープ、割れた腹筋、湿っぽい会話...。特に、「セックスの達人」たちは大満足だろう。僕が「達人」と言ったのは、「もう終わってる人」という意味だけど。

1977年、高校生だった頃。友達も僕も、どうやって童貞を捨てるかにしか興味がなかった。いつもそればかり話していたのに、結果はさっぱりだった。ガールフレンドの1人も作れなかったのだ。童貞のまま大学生になるなんて考えられなくて、僕は高校2年をもう1回やることに決めた(それでも女の子には振られっぱなしだった)。

つまり、70年代はセックスがものすごい関心事だった。あの頃のアメリカは、ベトナム戦争、ウォーターゲート事件と続いて国全体が疲れ切っていた。食べ物も着るものも、TVだってろくでもないものばかりだった。インターネットもパソコンも、テレビゲームもなかった。月にはもう行ってしまっていたし、何かすごいことといえば、セックスだけだった。それに、アメリカはまだそのころ飽食の国じゃなかった。スリムサイズの服で十分だったし、実際誰もがジョギングか、でなければコカインで痩せていた。

あれから40年、まだ僕たちは、セックスが大好きだと思っている。でも正直言って違う。セックスが素晴らしいことナンバーワンだった時代は終わった。一体何が起こったんだろう?

1. セックスに人生の意味なんてなくなった。

70年代、セックスはイケメンだけのためにあるもので、寂しいオタクには縁のないものだった。セックスすなわちエリートの証だったんだ。今やオタクが崇拝される時代だ。オタクでも誰でも、ソーシャルメディアで似た者同士が結びついて人生へのヒントを見つけられる。今どきの高校生は、僕らが「一生セックスできないんじゃないか」と悩んでいたなんて、想像もできないだろう。

2. アメリカ人はデブになった。

70年代の人々は皆引き締まった体をしていたから、ディスコで踊ってローラースケートで滑って、セックスするのにちょうどよかった。でも今じゃすっかりブヨブヨだ。セックスが楽しいのは同じでも、2人で合計180kgのカップルがファミレスでガッツリ食べてからエッチするのが今風で、合計60kgのカップルがコーラ1本を分け合いながら愛し合ったのが1970年代風だ。

3. 楽しいことが多すぎる。

今は食事も美味しいものだらけだし、TVも映画もゲームもよりどりみどり、どこにいたっていつでも好きなものを見られる。メディアだっていろいろあるから「歌ってみた」動画からスターにだってなれる時代だ。足の踏み場もないほど散らかった寮の部屋で、一人シコシコするしかなかったあの頃とは比べものにならない。

4. 脳みそがエロ動画に侵されている。

スマホかiPadかパソコンがあれば、巨大ポルノサイトが見放題だ。刺激的な場面をお腹いっぱい見たあとは、セックスなんてどうでもよくなってしまう。頭の中が場末のポルノ映画館かレンタルショップのAVコーナーみたいになってしまった2人は、生身の相手との本番があまり重要ではなくなってしまう。今や「セックスの名人」による至高の演技を、ネット回線経由で鑑賞するのが最高の快楽になってしまった。

5. 下ネタのスキャンダルが多すぎる。

ビル・クリントンにタイガー・ウッズ。教師は次々に生徒と関係を持ってしまうし、政治家は見習い秘書にどんどん手を出す。下半身の不祥事は本当にみっともないし、そもそも今さら感が満載だ。「他人の不幸は蜜の味」と言うけれど、下半身で人生を棒に振るところまで行かないと、僕らはオーガズムに達しなくなってしまった。

6. プライベートの秘密なんて消え失せてしまった。

その昔、有名人の私生活は誰もが知りたい秘密の花園だった。今じゃ有名人の自撮りヌードが流出して誰でも見られる。人気女優のベッドでニャンニャン動画が流出して世間を騒がせたけど、もはやほとんどの人には退屈すぎて見るに堪えないレベルだ。

セックスが昔ほど力を持たなくなってきたのは、もしかするといいことなのかもしれない。昔は女をとっかえひっかえするイケメンと、童貞を捨てられないオタクのピラミッド型階層が厳然とあって、ほとんどの男はみじめな気持ちですごしていた。そんな差別がなくなった文化を、僕みたいな年寄りは「何と軟弱な、嘆かわしい」と思ってしまうが、時代は進化したんだ。LGBT(同性愛者・両性愛者・性転換者)だってだんだん生きやすい世の中になってきているじゃないか。

セックスはそもそも現代のものじゃない。原始時代に、人間を進歩させる原動力だった。僕たちがさらに進化して「超人間」とか「生体ロボット」か何かになっている頃には、おそらくセックスという妄想をつかさどる回路はなくなっているに違いない。何となく汚らわしくて、裏でコソコソ、公には許されないものだったからこそ、セックスは魅力にあふれていた。そのトリックに誰もが引っかかって、自分たちの利益にならなくても、人類は愛を営み、子孫の繁栄へとつながってきた。それがすっかりオープンになってしまった今、感動は薄れてしまったんだ。

ごめんね、セックスくん。今でも大好きだけど、前ほど夢中になれないんだ。

セックスが人生の大問題でなくなってきた証拠

・2000年のブッシュ政権誕生以降、ウエスト周りを気にしなくなった (でも、ヒッピーみたいな腰までの長い髪が戻ってきたのはいいニュースだ)。

・洗ってない下着しか持ってなくても平気だ。

・2人のベッドでペットや子供たちと一緒に寝る夜がちょっと増えた。

・「今日は添い寝でいいや」という日が月に2回以上ある。

・ほぼ毎朝、起きるとベッドにTVのリモコンやデジタル製品が置いてある。

・あなたのパートナーの裸を見るよりも、動画サイトの新着動画を探す方が楽しい。

・2人でシャワーを浴びるのは水道代を節約したいから。

・料理番組が終わる頃、パートナーがもう眠っている。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。