太陽光線が届かなくても生命を育むことで知られる海底の熱水噴出孔が、土星の衛星「エンケラドス」にある可能性が高まった。アメリカ航空宇宙局(NASA)などのチームが4月14日付の科学誌「サイエンス」に発表した論文で明らかになった。
土星の衛星「エンケラドス」
エンケラドスは直径約500キロ。表面は厚さ数十キロの氷で覆われている。土星の重力などによる変形で衛星内部が熱を持ち、氷の下には液体の水をたたえた海が存在すると見られている。
NASAの発表によると、探査機「カッシーニ」が2015年10月にエンケラドスに接近した際、表面から噴き出す水蒸気ガスを採取した。機体に積んだ装置で分析したところ、約98%は水だったが、1%ほどの割合で水素の分子も存在していた。このことから、エンケラドスの地下にある海の底で熱水が噴き出していると考えられるという。
NASAが公開したエンケラドスの「氷の海」の想像図
朝日新聞デジタルによると、地球の深海にある熱水噴出口では太陽光が届かない暗闇にもかかわらず、水素をエネルギー源にして二酸化炭素からメタンを作り出す微生物が生息。独自の生態系が形成されている。エンケラドスの内部でも、微生物の存在に必要な環境が整っていることになる。
NASAの科学者、リンダ・スピルカーさんは「生命が存在するための化学エネルギーが、土星の小さな衛星にあると確認されました。このことは、地球以外の居住可能な世界を探す上で、重要なマイルストーンです」とコメントしている。
地球の海底の熱水噴出孔で撮影された白いカニ。もしかしたらエンケラドスにも、こんな生物が…
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