『ジョブ型』の働き方を意識して、進路を選んでいる若者が増えているのではないかという分析が、8月15日に大和総研から発表された。8月7日に文部科学省から発表された、『平成25年度学校基本調査』に基づく分析である。
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『ジョブ型』とは専門性を武器に、スペシャリストとしてのキャリアを選ぶ働き方で、職種が限定されているということが特徴だ。いっぽう、これに対する『メンバーシップ型』は、職務も労働時間も勤務場所も決められておらず、企業側でいくらでも変えることができる雇用のあり方で、企業の一員(メンバー)になるという意味で使われる。専門スキルを要求されるわけではないが、組織への順応性や成長可能性、自発的な学習能力などが問われる。
大和総研の分析では、学校基本調査の大学進学状況に着目。平成25年の入学者のうち、保健、家政、教育の増加率が高くなっているのに対し、人文・社会科学の増加率は1%以下の水準にとどまっている点と、直近5年の学生数を、学部ごとに構成比でみた際にも、人文・社会科学の分野で低下が続く一方、保健・家政・教育の分野が上昇していることを指摘し、『ジョブ型』を意識した進路を選んでいるのではないかと分析した。
安倍首相が参院選前に打ち出した成長戦略では、『ジョブ型正社員』の本格導入などが盛り込まれた。職務等に着目した「多様な正社員」モデルの普及・促進を図るために、有識者懇談会を立ち上げ、来年度中のできるだけ早期に取りまとめて周知を図るとしている。
しかし、ジョブ型の雇用には、懐疑的な見方もある。東海大学の芦田宏直教授は、「企業の中で経験を積み、責任ある立場へと登っていくためには、スペシャリストではダメで、メンバーとしての能力を発揮することが重要」と述べている。
また、ジャーナリストの冷泉彰彦氏は、日本では「その会社でしか通用しない進め方」が発達しており、大学を卒業したら、そこで習ったスキルがそのまま“ジョブ”に結びつくための“標準化”など、社会的な変化が必要と指摘する。
これからの日本の雇用のあり方には『ジョブ型』または『メンバーシップ型』のどちらがふさわしいだろうか。あなたの考えをお寄せください。