使用年数が長期化する電化製品~買い控えはもったいない!?:研究員の眼

性能の良い製品が次々と登場するなかで、同じ製品を長期間使用することも、ある意味もったいないと言える。

皆さんの家にある家電やパソコンなどの電化製品は購入してどれくらい経つだろうか。わが家ではテレビは買って9年目、パソコンは5年目、冷蔵庫は4年目、洗濯機は1年目である。

内閣府では、毎年3月に主な耐久消費財(*1)の買い替えるまでの平均使用年数(2人以上の世帯)を調査している。最新の調査(2017年3月)によると、エアコンは13.6年、冷蔵庫は13.3年、洗濯機は13.6年と10年を超える商品も多い(図表1)。

また、2000年代半ばには買い替えサイクルが5年未満と比較的短かったパソコンやカメラも使用年数が長期化している。

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さらに、ここ2~3年の動向をみると、いずれの商品も使用年数が長期化している。掃除機、テレビを除いた全ての商品で、調査開始以来、最も使用年数が長い状態にある。

どの商品も買い替えた理由の半数以上を故障が占めている(図表2)ことから、耐久性が高まり、壊れにくくなっているのかもしれない。

また、より性能が高い商品が欲しかったからとする回答はデジタルカメラやビデオカメラでは3割程度存在するが、使用年数の長いエアコンや冷蔵庫などは1割程度にしか満たず、大半が今使っている電化製品で満足しているのかもしれない。

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滅多に買わないと、今どれくらいの値段でどんな製品が売られているのか、なかなか分からないのではないだろうか。総務省が公表している消費者物価指数でそれぞれの指数をみると、どの電化製品も大きく低下している。

平均使用年数を基に現在との物価を比較すると、カメラを除いてどの品目も50%以上下落している(図表3)。特に、ビデオカメラは下落が著しく、平均使用年数である10年前と比較して87%も下落している。

例えば当時5万円で買って今も使っているビデオカメラは、今なら6,500円の価値しかないということになる。ただ、一般の家電量販店に行っても、この価格帯のビデオカメラが並んでいるわけではない。店頭の価格帯は10年前と変わらず、製品の価値が7.7倍になったということである。

物価とは、純粋な物の値段の動きを把握するために、対象品目の機能や規格、容量を定めて毎月同じ商品を調査している。

ただ、技術進歩によってより高機能の新商品が1年を待たずに次々と登場する電化製品などは、調査商品を頻繁に入れ替える必要があり、その際に性能や品質が向上した分は、物価が下落したとみなしている。

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冒頭で筆者の洗濯機は買って1年目と紹介したが、その前の洗濯機は9年使っていた。買い替えた理由は家族が増えて洗濯容量が足りなくなったからだ。一度により多く洗濯できるものを求めて商品の情報収集をするようになって初めて気付いたが、今の洗濯機はより少ない水量と時間で衣類を洗えるように進化していた。

家族が増えて洗濯物も増えたが、買い替えたことによって水道使用量は却って減った(洗剤の使用量も減った)うえに時短になったのには驚いた。図表3によれば、約10年で洗濯機の物価指数は55%下落しており、10年前と同一価格の製品の性能は約2倍向上している。

その性能差は買い替えて使ってみると実感できるものだった。他の耐久消費財も性能の向上から物価指数は低下しており、5年前や10年前の製品と比較すると性能差はより明確になるだろう。

今回、筆者は上位の品目を求めて買い替えたが、図表2の内閣府の調査によれば11%と少数派のようだ。79%と大部分の人が故障してから洗濯機を買い替えている。しかし家電の故障というのは前触れがあるとは限らず、ある日突然に故障することもあるだろう。

娯楽のための物ならまだしも、洗濯機・冷蔵庫・エアコン・電子レンジなど毎日の生活に使用する家電製品だとたちまち不便を強いられる。特に、冷蔵庫は壊れるのを待ってからでは色々と手遅れである。

故障してからで良いと考えていると、必ず故障時の不便さに直面するのは当然として、購入時もなるべく早く調達できることに目が行きがちで、性能や価格の吟味が十分にできない可能性が高い。これでは満足度の高い買い物ができるか疑問である。

まだ使えるのに買い替えるのはもったいないと感じるのは日本人の美徳かもしれない。ただ、性能の良い製品が次々と登場するなかで、同じ製品を長期間使用することも、ある意味もったいないと言える。

時間に余裕のある時に家電量販店に足を運び、今使っている電化製品にない新機能、性能の向上した点を吟味する時間をとることも必要ではないだろうか。

(*1) 1度購入すれば、長期間使用することができる財。自動車、テレビなどの家電製品、ピアノなどの楽器、机や椅子などの家具が該当する。

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(2017年7月14日「研究員の眼」より転載)

株式会社ニッセイ基礎研究所

経済研究部 研究員