民主党の岡田代表によると、今年は「若者、若者、若者」の年だそうです。
さらに岡田氏は、「20代の若者が知事や市長、あるいは国会議員になれないというのは極めておかしな話だ」と述べ、今の通常国会に被選挙権の年齢を引き下げる法案を提出する考えを表明した。
そう、日本は若手国会議員が異常に少ないんです。
2014年時点では、日本では722人中のわずか4名が30歳以下、つまり全体の議員数のうちわずか0.6%しか30歳以下の議員がいないのです。ひるがえって、ドイツは6%※、スウェーデンは5.6%※、ノルウェーは5%※でした。つまり、ドイツは30歳以下の若手国会議員が日本の10倍いるのです。一院制、連邦制の違いはありますが、同じ民主主義国家なのです。
若い政治家を出したいなら被選挙権年齢、下げなきゃ
若手議員の少なさのひとつの理由に被選挙権年齢があります。
被選挙権年齢は、日本では国政選挙において衆議院議員が25歳、参議院選挙が30歳ですが、世界では21歳の時点で被選挙権が得られる国は、108カ国(約55%) を占めています。
一応日本も民主主義国家なのでその基準に照らしてヨーロッパを参考にすると、ヨーロッパでは、44カ国中26カ国が選挙権を18歳としており、そのうち全ての国で被選挙権年齢も18歳としています※。
つまり18歳で、立候補した同年齢の友達に投票できるのです。そりゃ感覚違いますよ。
供託金というハードルも聞いたことはありません。
スウェーデンでも16歳へ引き下げの動きとその理由
ヨーロッパでは1970年代から選挙権年齢と被選挙権年齢の引き下げを進めてきましたが、今はもう「投票年齢16歳への引き下げ」を進めています。日本が18歳へ下げてる一方で、ヨーロッパはさらに下げようとしているのです。ヨーロッパ若者フォーラムでは、Vote at 16 というキャンペーンも始動しています。
実際に、2007年にオーストリアが国政および地方選挙での選挙権の16歳への引き下げ、市町村レベルではドイツ・ノルウェー・スイスでも引き下げが進んでいます※。
そんな渦中、スウェーデンも16歳へ投票年齢を引き下げる動きが最近ありました。
1月5日のExpressen紙にて、民主主義検討委員会(demokratiutredning)の委員長のOlle氏が、2018年と2022年の地方選挙で16歳が投票できるパイロットプロジェクトを提案すると述べています。ノルウェーでやってたやつと同じです。
もともとOlle氏自身も16歳への引き下げには否定的だったのですが、専門家の意見と他国でのトライアルの結果を知って、意が変わったとのこと。その理由は以下のとおり。
- スウェーデンの選挙権は18歳であるが、選挙が開かれるのは4年に一度と決まっており、国民は誕生日には投票できないから、初回投票者の平均年齢は20歳である。なので、16歳に下げることで初回投票者の平均年齢が18歳になる。
- 11月、EU議会は加盟国に16歳での投票をEU議会選挙で実施するように勧告。オーストリアでは国レベルで、ドイツ・ノルウェーではいくつかの自治体の地方選挙で16歳投票を実施しているが、特に目立った「問題」は起きておらず、むしろいい経験となっている。若者の投票が選挙結果に大きく影響を与えているわけでもない。
- ノルウェーのある自治体での16歳投票のトライアルによると、16歳の投票は将来的に高い投票率につながると報告されている。大学に進学したり、仕事をはじめて実家を出る若者の年齢は18歳なので、初回の投票率は下がる。しかし、学校にいる時(16歳)で初めて投票すれば、将来的に「投票所へ行く」という投票行動が高まる可能性がある。
- スウェーデンの生徒は、民主主義がどのように機能するか知らない。おそらくスウェーデンの地方選挙よりも、アメリカの大統領選挙のほうが知っている。それは地方政治が学校から欠落しているから。ゆえに、選挙年齢を引き下げると学校での市民教育のやり方を変えるインセンティブになる。
- 義務教育、刑事責任年齢、アルコールが買える年齢、被選挙権年齢など、法的年齢は様々である。ゆえに、投票年齢を下げても劇的な変化が起きるとはいえない。
- 研究者の見解では、16歳も18歳と成熟度はそう変わらず、個々の違いによるものが大きい。
とのことです。18歳に選挙年齢が日本も下がりましたが、18歳という年齢は、高校3年から大学1年にまたがる年齢なので、一人暮らしして上京したら「住民票を変えてない!」から投票しないみたいな問題が起こる可能性があります。この点は参考になります。
研究者の見解も興味深いです。投票率に関する調査では、こちらの記事でオーストリアの選挙年齢引き下げ前後に行われた調査の結果を引用しています。
オーストリアでは、選挙権年齢引き下げの実施前後の2004年と2008年に、16・17歳と18歳以上の若者の政治への関心に関する調査が行なわれた。2004年の総選挙では、16・17歳は「関心がある」「とても関心がある」と回答する割合が31%だったが、選挙権を引き下げた後の2008年の総選挙では61%まで上昇。また、ニュースをチェックするという質問でも同様の効果が見られた。また、その他の指標においても、オーストリアの地方選挙を利用した事例では、16・17歳の政治的成熟度は18歳ともさほど変わらず、投票行動にも有為な差は見られないとの結果がある。
そうです。選挙年齢を引き下げたら関心が高まったんです。それも、16・17歳の高校生たちの関心がですよ。
その他の調査の結果もこちらに載っているので、ぜひ政治家のかたはこれを読んでみてください。
日本だと、文化も教育制度もヨーロッパと大きく異なるので、いきなり引き下げはとても難しいかもしれませんが、ノルウェーやスウェーデンのように特区を設けて、その効果を実証するなどしてみる委員会をたちあげてはどうでしょうか。(というか18歳に引き下がるのでこれも調査をやるチャンスですね)
ちなみにスウェーデンの民主主義検討委員会というのは、前回の穏健党政権時代に2014年に立ち上げられた、政治的な参加と投票率を向上させるために立ち上げられた委員会なのですが、日本でもこういう委員会立ち上げて科学的に調査して、まっとうな政策つくっていきませんか。
「若者、若者、若者」というならそこまでやりませんか?
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