フランス同時多発テロなど

世論の反発を招くことは必至ですが、現状のままでは日本がテロ組織の活動の抜け穴にもなりかねません。

石破 茂 です。

大阪のダブル選挙は明後日投開票となります。

コメント欄にもいくつかのご意見が寄せられていますが、自民党本部として総裁名で推薦候補を出している以上、府連から党本部を通じて要請があった場合、支援に行くのは党所属国会議員の責務と考えます。

日本全体から見て、大阪の経済状況が、若者の失業率、小売店の売上高、現金給与所得、貸出金残高など多くの指標で伸びが低い、若しくは低下している現実を、主権者である府民、市民がどのように判断されるかです。

ともすれば橋下氏に対する好き嫌いで論じられがちですが、双方とも対立感情を煽るのではなく、真摯かつ冷静な議論が交わされた上での投票を期待しております(選挙においてこれはとても難しいことをよくわかっておりますが、最近切にそう思います)。

今まで愛知県知事選、名古屋市長選、静岡県知事選など、状況が厳しい選挙であってもできるだけ応援に出向いてきました。地方組織が困難な立場にあるときこそ、党本部や政権として最大限の支援が必要だと私は思っています。

フランス・パリにおけるテロは、一連のISによる攻撃とされています。ISについては様々な見解がありますが、軍隊と警察という実力組織を一元的に掌握できなくなったいくつかの国家の崩壊(マックス・ウェーバーによる国家の定義「正当性を有する、実力を独占する主体」は一面の真実です)と、米国の中東外交方針の転換による力の空白の発生がその主な遠因であり、この二つに対する根本的な対応策を講じることは決して容易ではありません。

防衛庁長官や防衛大臣在任時に、テロ対策については私なりに突き詰めて考え、論じてきたのですが、その都度「国民生活を不便にすることには反対だ」「国民の権利を抑圧するのか」等の批判が寄せられました。

9・11後にテロ対策の一環として駅のごみ箱を撤去した時は、安全保障委員会で「国民に迷惑をかけるようなことはやめるべきだ」との指摘がなされたことをよく覚えております。

過密ダイヤで運行される鉄道において航空と同様の検査を実施すれば、社会生活はたちどころに麻痺してしまうのですが、さりとて今のままでよいとはとても思われません。フランスにおいてはジャンダルムリという軍隊と警察双方の機能を併せ持つ組織が存在しますが、自衛隊の治安出動が極めて下令困難であることに鑑みれば、警察力の強化は急務ですし、自動改札通過時に危険物を瞬時に探知できるシステムの開発の加速化など、今でも可能なことは多くあるものと思われます。

さらには、今まで何度も廃案となってきた「共謀罪」も今一度真剣に考えなくてはなりません。

「共謀罪」という語感から世論の反発を招くことは必至ですが、現状のままでは各国共通の処罰法整備を目的として二〇〇〇年に国連総会で採択された「国際組織犯罪防止条約」を批准することも出来ず(日本も同年に署名はしています)、重大な国際犯罪に問われて日本に逃げ込んだ犯人を逮捕することも外国に引き渡すこともできないこととなってしまい、日本がテロ組織の活動の抜け穴にもなりかねません。

既に185の国・地域が批准・締結済みで、未締結なのはイランや北朝鮮などごく僅かです。

2006年の審議において、与党は適用対象を「組織的犯罪集団」に限定し、共謀しただけでは足らず「犯罪の実行に必要な準備その他の行為」があった場合に限り成立することにすることとし、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限してはならない」「労働組合その他の団体の正当な活動を制限することがあってはならない」という文言も追加して提案しましたが、結局与野党協議は決裂となったという経緯があります。

国際的な常識からかなり乖離した議論が行われているのはこれに限ったことではありませんが、日本さえよければいい、ということにはなりません。担当当局が主体となって政府全体で判断すべきことですが、国民の懸念を払拭するに足る丁寧かつ真摯な説明が何より重要です。

週末は21日土曜日が東京大学駒場祭 第一高等学校・東大弁論部主催講演会で講演(午前11時)、鳥取県立八頭高等学校関東同窓会で講演(午後1時)、JA鳥取中央「ミッキー会」(午後7時・倉吉市)。

22日日曜日が「時事放談」出演(TBS系列・午前6時・収録)「長野すけなりの政界キーパーソンに聞く」(ラジオ日本系列・午前8時45分・収録)、自民党鳥取県連選挙対策委員会(午前10時半・鳥取市内)。

23日勤労感謝の日が新嘗祭 神嘉殿の儀(皇居)という日程です。

11月もはや下旬となりました。皆様お元気でお過ごしくださいませ。

(2015年11月20日「石破茂オフィシャルブログ」より転載)