政治家には様々なタイプがある。一気に政党の風にのって国会議員になる人もいれば、基礎自治体議員から都道府県議、国会議員にと叩き上げもいる。そして地方議員から基礎自治体の首長や都道府県知事に立候補をする人も少なくない。
政治家として上を目指すことは一般的なことであるが、基礎自治体議員からその上に行くことは至難の業である。基礎自治体の議員は数十人が当選するが、都道府県議になると当選する人数は激減する(※各議会の定数によって異なる)。更に同じ組織の中から候補者を選定するため、中での争いも激しい。ちなみに我孫子市では市議会の定数は現在24名であるが我孫子市選出の県議会議員はたったの2名である。その為、組織を持つ候補者が強いことは言うまでもないが、都道府県議会も含め、地方政治は二元代表制であるから政党に左右されないフェアな議員が当選することが望ましい。それは政党の縛りによって市民、県民の希望とは異なる採決をしかねないからだ。実際にそういったことが地方議会で横行し、党議拘束によって道が逸れてしまうことがあるのだ。
しかしながら、実際の選挙では無所属の当選は相当険しい。その為に政党に入ったり、組織の応援を求め、しがらみが生まれてしまうのが日本政治の常だ。そこで、無所属議員で上を目指す人は第三極を含め政党にアプローチをせざるを得なくなってしまう。更に無所属で勝てる力がなく、更には政党の公認を得られなかった候補者は次の一手を考える。それが、自分が焦点を当てている選挙の一つ前の大きな選挙に出馬し、売名行為を行うという裏ワザだ。
有権者は今一度、自分の貴重な1票をよく考えてもらいたい。例えば、我孫子市の例を見てみよう。我孫子市では今年1月に市長選、4月に県議選、11月に市議選と1年に3つの選挙が行われ、尚且つ全てうまい具合に大きい選挙順にずれている。まず、市議経験者が市長や県議に立候補をすることはあり得るだろう。ただし、政治に精通している人からすれば一目瞭然だが、市議や新人が市長選と県議選の両方を狙うということはおかしなことなのだ。
市長とは、市議会と対峙し執行権を持ついわば基礎自治体の社長だ。一方で県議会は県の行政を監視・チェックをし、選出市や国とのパイプ役を担うことが多い。つまり、市長と県議は全く別種の職責であり、市長立候補者が次の県議選に立候補した場合、市長と県議の仕事内容自体が異なることから候補者が政治家になって成し遂げたいことが理解できないため、県議選にターゲットを絞った売名行為である可能性が高いと言われている。
要は数か月前に名前を売っておき、記憶があるうちに本命の選挙で自分の名前を書いてもらうという魂胆だ。これは政界でよく行われる手法なのだ。
こういった事態が起きる要因として無所属で基礎自治体議員から脱却するのは難しいということが考えられるが、このままでは地方でも政党政治や、あってはならない与野党構造が生じてしまい、本来の地方政治のあるべき姿が見いだされない。有権者はここまでの裏事情に気付いておらず、こういったことが続くようでは地方政治が危うい。「政治家になりたい」が為に2回目の本命選挙に向けて先行して行われる他種の選挙に立候補するとは有権者を愚弄しているとしか言いようがない。絶えず努力をし、市民の為になる政治に汗を流している政治家からしてみればインチキな手法に映る。
更にはそういった見え透いた行動をする候補者を公認する政党も信用ならないことも付け加えておく。