「麻薬王の大脱走」エル・チャポに知っておくべき5つのこと

グスマンの逃走について知っておくべきことが5つある。
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MEXICO CITY, MEXICO - JULY 12: View of a house under construction used by El Chapo Guzman to scape from prison during an operation on the surroundings of Mexican Maximum Security Prison of 'El Altiplano' after confirming the escape of Mexican drug trafficker Joaquin 'El Chapo' Guzman on July 12, 2015 in Mexico City, Mexico. 'El Chapo' was seen last time around 20:52 on the video security system when he got close to the showers where he normally take his shower and wash his essentials. (Photo by Manuel Velasquez/LatinContent/Getty Images)
Manuel Velasquez/STR via Getty Images

世界で最も悪名高い犯罪者が7月11日、脱獄した。計画は周到で、逃走用に長さ1マイル (1.6キロメートル) のトンネルも作られていた。ホアキン・"エル・チャポ"・グスマンは、メキシコ最大の麻薬組織「シナロア・カルテル」の最高幹部で、現在逃走中だ。メキシコ当局が大規模な捜索を行っている。

カルテルの広大なネットワークの中に消えてしまう前にグスマンを見つけ出そうと圧力がかかっている。消えてしまえばもう二度と見つからないかもしれないからだ。治安部隊がメキシコ中を捜査しているが、グスマンの逃走について知っておくべきことが5つある。

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ホアキン「エル・チャポ」グスマンは、2014年2月22日、メキシコシティの海軍格納庫で手錠をかけられ、メキシコ海軍の海兵隊員によってヘリコプターに乗せられた。 (AP Photo/Eduardo Verdugo)

2014年2月下旬、グスマンとグスマンの妻がシナロア州マサトランのマンションで寝ていたところをメキシコ海兵隊が発見し、銃撃戦を行うことなくグスマンを逮捕した。グスマンは、メキシコ政府の最重要指名手配犯で、闇世界の大物であった。

貧困家庭に生まれ、ときにロビン・フッドにもなぞらえられたグスマンは、シナロア・カルテルを数十億ドル規模の国際組織に育てた。雑誌「ザ・ニューヨーカー」に掲載されたグスマンのプロフィールによると、シナロア・カルテルは毎年メキシコからアメリカに密輸される違法麻薬のおよそ半数に関与していると考えられている。

残忍でミステリアスな親玉の逮捕は、10年以上に及んだ捜索、そして彼の逮捕をめぐって陰謀説の盛り上がりに終止符を打ったが、彼の解放を求める抗議活動もあった。

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2015年7月12日、グアテマラシティでの記者会見で、麻薬の売人ホアキン・"エル・チャポ"・グスマン・ロエーラの写真を見せる、グアテマラの移民担当官のカルロス・パック(ヨハン・オルドネス/AFP/ゲッティイメージズ)

2014年の逮捕後、アメリカ政府は、殺人や犯罪組織運営の容疑で告訴するため、グスマンの引き渡しを求めようとしたが、メキシコは拒否した。その時もグスマンが脱獄する可能性があるという懸念があった。不名誉なことに、2001年にメキシコで最もセキュリティが厳重なプエンテ・グランデ刑務所からグスマンは脱獄したからだ。

諸説あるが、グスマンは洗濯かごに隠れてプエンテ・グランデ刑務所から脱獄したとされている。「ザ・ニューヨーカー」によると、この脱獄の後、共犯とみられる70人以上の刑務所職員が告訴された。

グスマンを脱獄させるために、長さ1マイル (1.6キロメートル)、高さ5.5フィート (1.7メートル)、幅2.5フィート (76センチメートル) のトンネルが刑務所の地下に作られていた。通路には照明と換気口があり、内部に専用のバイクもあった。

グスマンは、自分の監房のシャワーエリアに作られた穴からトンネルに入り、長いはしごを下りた。シナロア・カルテルは過去に、麻薬の輸送のため、複雑なドリル設備を使用して、数マイルの長さの広いトンネルを建設していたと考えられている。

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2015年7月12日、メキシコ、アルモロヤ・デ・ファレスにあるアルティプラーノ刑務所の近くで建設中のパイプラインのそばで警戒にあたる警察官(ユリ・コルテス/AFP/ゲッティイメージズ)

当局はグスマンの大規模な捜索を展開中だ。AP通信によると、元アメリカ麻薬取締局職員は「48時間もあれば、グスマンがシナロア・カルテルの完全な支配下に置かれる可能性がある」と語った。刑務所の守衛は尋問のため拘束されており、近くのトルカ空港は閉鎖されている。隣国のグアテマラも厳戒態勢で、特殊部隊が国境を監視している。

連邦警察は道路をパトロールし、同エリアに路上バリケードを設置している。グスマンは再び最重要指名手配犯となったため、兵士がメキシコシティの国際空港で警戒にあたっている

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2015年7月12日、メキシコの麻薬王、ホアキン「エル・チャポ」グスマンが、メキシコ、アルモロヤ・デ・ファレスのアルティプラーノ刑務所から脱獄する際に使用したとみられるトンネルの終点。家の周りには黄色いテープの警戒線が張られている (YURI CORTEZ/AFP/Getty Images)

2014年にグスマンが逮捕された時、ペーニャ・ニエト大統領政権は政府の麻薬犯罪取り締り政策が大きな成果をおさめたと評価されたが、今回の脱獄は政権にとって大きな屈辱だ。ニエト大統領は批判の声に対し、グスマンの拘留には万全を期していると繰り返し答えてきた。これが誤りであったことが証明されてしまったため、自国での拘束を求めたアメリカ政府から強い反発を受ける可能性がある。

ニューヨーク・タイムズによると、今回の脱獄でアメリカの引き渡し要求が強まる可能性がある。これは、メキシコに秩序をもたらすというペーニャ・ニエト大統領の主張に深刻なダメージを与えかねない。

用意周到に準備された脱獄は、メキシコのカルテルの権力と、その権力が及ぶ範囲の大きさを証明するものでもある。これは、10万人以上の死者を生んだ政府と麻薬密売組織と戦争が今もなお継続していることを意味する。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。