世界の教育はよくなっているのか? Education for Allの報告会に参加してきました。

ストックホルム大学国際比較教育研究科の学生として、あるイベントに招待されました。ユネスコが取りまとめを行っている、EFAモニタリング報告書(2000-2015年版)の発刊記念セミナーです。
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本日は、ストックホルム大学国際比較教育研究科の学生として、あるイベントに招待されました。ユネスコが取りまとめを行っている、EFAモニタリング報告書(2000-2015年版)の発刊記念セミナーです。

EFAとは、Education for All(万人のための教育)の略で、

今なお世界中に「読み・書き・そろばん(計算)」といった基礎教育を受けられない立場にある者が多いなかで、各国が協力しながら、国連ミレニアム開発目標(MDGs)に基づき、2015年までに世界中の全ての人たちが初等教育を受けられる、字が読めるようになる(識字)環境を整備しようとする取り組み(文部科学省HPより)

です。

ユネスコ、ユニセフ、国連開発計画、国連人口基金及び世界銀行が主催した、2000年にダカール(セネガル)において開催された「世界教育フォーラム」において、「ダカール行動枠組み」が採択されました。その際に、掲げれた6つの目標を達成するために、2002年から「EFAモニタリング・レポート」を発行し、目標の達成度合いの進捗状況を定期的に報告してきました。今回のレポートが特に重要な理由はこの目標の中に、2015年までに達成すべきことが盛り込まれていたからでした。その3つの目標とは、

  • 女子や困難な環境下にある子供達,少数民族出身の子供達に対し特別な配慮を払いつつ,2015年までに全ての子供達が,無償で質の高い義務教育へのアクセスを持ち,修学を完了できるようにすること。
  • 2015年まで成人(特に女性の)識字率の50パーセント改善を達成すること。また,全ての成人が基礎教育及び継続教育に対する公正なアクセスを達成すること。
  • 2015年まで教育における男女の平等を達成すること。この過程において,女子の質の良い基礎教育への充分かつ平等なアクセス及び修学の達成について特段の配慮を払うこと。(文部科学省HPより)

これらの指標が達成されたかどうかが明らかになるわけですから、そら注目されるわけです。

会場はスウェーデン国際開発協力庁(SIDA)でした。日本のJICAにあたる機関です。

SIDAの事務総長 Charlotte Petri Gornitzka による挨拶のあと、まずはスウェーデン教育省の大臣、環境党(党首)の若手政治家、グスタフ・フリードリンによる講演でした。

Utbildnmin @GustavFridolin@sida pratar om sit för världens skolbarn;många framsteg men också utmaningar #GMR2015pic.twitter.com/o9Dp7qazLy

-- Inga-Lill Hagberg (@ingalillhagberg) 2015, 4月 28

Gustav Fridolin (グスタフ・フリドリーン)

環境党 31歳

・2002年の国政選挙において19歳で当選し、史上最年少の議員となった。国会議員を1期務めたあと、教師やジャーナリストを務めた。2010年の国政選挙で再び議員。二人代表制をとる環境党党首を2011年から務める。(佐藤 吉宗さんのブログ:スウェーデンの今より)

2012年に初めてスウェーデンに留学したときに見かけたとき以来で、昔より貫禄ありました。SIDAは今年で50歳になるそうですが、こうしてSIDAに教育大臣を呼ぶのは史上初だったようです。「教育は、達成されることによって価値がある」という大臣のメッセージが印象的でした。

その後、ユネスコの上級政策分析官のManos Antoninnis による本題のEFAグローバル・モニタリングレポートの報告。

Twitterでメモがてら、ハッシュタグつけてつぶやきましたので、和訳つけてまとめます。

"Only a third of countries have achieved all EFA goals with measurable targets" by Manos Antoninis (FEA GMR Team, UNESCO) #GMR2015

-- Tatsuhei Morozumi (@tppay) 2015, 4月 28

「測定可能なEFAの目標を達成したのは、全体で3分の1の国にすぎなかった。」(ユネスコ)

"Almost 100 million children will not complete primary school in low and middle-income countries in 2015" by Manos Antoninis #GMR2015 -- Tatsuhei Morozumi (@tppay) 2015, 4月 28

"And 5 times more likely not to finish primary school" #GMR2015 -- Tatsuhei Morozumi (@tppay) 2015, 4月 28

42 million adolescents in lower secondary school since 2000 but only 1 in 3 complete in low and middle-income countries. (UNESCO) #GMR2015-- Tatsuhei Morozumi (@tppay) 2015, 4月 28

"Gender parity is still the exception in lower and upper secondary education" #GMR2015 -- Tatsuhei Morozumi (@tppay) 2015, 4月 28

「最も貧困な女子は、未だにほとんどが小学校にいかない。」(ユネスコ)

"Boys increasingly likely to leave school before the end of lower secondary in richer countries" #GMR2015 -- Tatsuhei Morozumi (@tppay) 2015, 4月 28

「裕福な国においては、今まで以上に増して男子は中学校を修了する前に学校をやめるようになっている。」(ユネスコ)  

報告後、僕らの大学院の教授で、元国連職員だったクリスティン教授から、財源不足の問題に対してフィードバックのコメント。

「政治的にこれまで以上により効果的に働きかけなければいけません。財源を問題にしてはいけません。」

"We focused on access without thinking quality" (Christine Mcnab) #GMR2015 -- Tatsuhei Morozumi (@tppay) 2015, 4月 28

「(教育への)アクセスばかりを重視していて、その質についてはこれまであまり重きが置かれていなかったのではないでしょうか」 いやさすが、いつもながらパッション感じました。 質疑応答では参加者からこんな質問やコメントがありました。

"Questions: Huge military budgets yet less on education but why?" #GMR2015 -- Tatsuhei Morozumi (@tppay) 2015, 4月 28

"Needs of moving out from monitoring & governance in access to development. Instead share success story. Last is finances" #GMR2015

-- Tatsuhei Morozumi (@tppay) 2015, 4月 28

「開発へのアクセスというこれまでのモニタリングとガバナンスのやり方から離れる必要がある。その代わりに成功事例を共有してはどうか。財源はその後にくる。」

僕のクラスメートも何人か質問をしたのですが「クリスティン教授の学生の〜です」とみんな口を揃えて言うので、会場大爆笑。そういうわけで僕もささやかにこの流れにのって、  上記のつぶやきからのハッシュタグ作成↓

そしたら別の参加者の方から以下のようにリツイートいただきました。笑

A brilliant university teacher shows up with her likewise brilliant master students at the #GMR2015@Sida ! https://t.co/MDe66aSVf9 -- Inger Raaby (@ingerringer) 2015, 4月 28

この後は、お昼休憩を挟んで午後はSIDAに関する小セミナーが続きました。

EFAの今回の報告で明らかになったのは、2000年に掲げた目標が「高すぎた」という結果になったということです。資金不足の問題は深刻であり、より分野横断的にセクター間で共同して資金力を高めていくことの必要性が指摘されました。

国連の教育目標、達成できず 資金不足が課題

 

 「私には二つの選択肢しかない。一つは、声を上げずに殺されること。もう一つは、声を上げて殺されること」

「一人の子ども、一人の教師、一冊の本、一本のペンが、世界を変える」

-マララ・ユスフザイ

ノーベル平和賞を受賞したパキスタン人のマララ・ユスフザイもまた、Education for All(万人のための教育)の必要性を主張しています。彼女は、パキスタンで女子への教育を主張しましたが、それがゆえに武装勢力に襲撃され重傷を負いました。しかし奇跡的に回復した彼女は今なお脅しに屈することなく、活動家として女子の教育を受ける権利を訴え続けています。