アマゾンの油田開発再開へ エクアドル、保全基金募るも目標額の0.37%しか達せず

南米の産油国エクアドルのコレア大統領は15日、アマゾン川源流域のヤスニ国立公園内での油田開発を中止する代わりに、森林保全を目指すとして国際社会に呼び掛けてきた信託基金が目標金額に到達しなかったとして、油田開発を再開する方針を明らかにした。
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南米の産油国エクアドルのコレア大統領は8月15日、アマゾン川源流域のヤスニ国立公園内での油田開発を中止する代わりに、森林保全を目指すとして国際社会に呼び掛けてきた信託基金が目標金額に到達しなかったとして、油田開発を再開する方針を明らかにした。産経新聞が伝えた。

朝日新聞デジタルによると、エクアドルは国際社会が収入を補償することでアマゾン原生林での石油開発をやめる「ヤスニITT計画」を提唱。気候変動対策や生物多様性の保護を目的に掲げ、2007年から東部のヤスニ国立公園内に眠る石油の開発で見込まれる収入の半分にあたる36億ドル(約3500億円)の提供を呼びかけ、10年に国連開発計画(UNDP)に基金ができた。

環境保護の新たな試みと注目され、日本からも「無印良品」を企画開発する良品計画が20万ドルを提供。しかし、これまでに基金に寄せられたのは約1300万ドルと、目標の0・37%にとどまる。債務の相殺などの申し出を含めても1億ドル余りにしかならなかった。

コレア大統領はテレビを通じた演説で「世界が計画を頓挫させた」と述べ、一部の油田で開発を始めると表明。収益は貧困撲滅などにあてることを強調し理解を求めた。また、コレア大統領は「先進国の理解を得られなかった。(開発は)大統領として下した最も困難な選択の一つだ」と説明した。地元メディアによると、国民の78%が開発に反対しており、発表後、首都キトの大統領府周辺では抗議デモが起きた。

■ 洪水と旱魃(かんばつ)を繰り返すアマゾン、ブラジルは100年後砂漠に?

ブラジルのアマゾン熱帯雨林では、地球温暖化による洪水と干魃(かんばつ)が繰り返され、生態系に変化が出始めている。北東部の高地は最悪の場合、100年後に砂漠になるとの予測もあり、専門家は「今すぐ行動しなければ手遅れ。地球全体にとって深刻な問題だ」と訴えている

ブラジル国立宇宙研究所(INPE)地球科学システムセンターのリンコルン・アルベス研究員は「アマゾンでは太古の昔から豪雨と干魃が繰り返されてきたが、温暖化でその間隔が著しく短くなっている」と指摘。「大西洋の表面水温の上昇が原因だ。違法森林伐採や焼き畑も影響している」と説明する

ブラジル政府は、放牧地開墾や木材の違法伐採の取り締まりと監視を進め、伐採面積は過去4年間、最低を更新し続けている。それでも、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などによると、アマゾン熱帯雨林の面積は2100年に現在の3分の2になるとの試算もある

■ ダム建設進むブラジル 環境破壊がより深刻に

ブラジルでは現在、発電量で世界第3位のベロモンテ水力発電ダムが建設されている。完成すると、4万8000ヘクタール超の熱帯雨林が水没し、全長1980キロにわたるシングー川のほぼ全域で流れが変わる可能性がある

水力発電開発を進めるブラジル政府は、今後20年間でアマゾン川流域に60基以上の大規模ダムを建設する計画だ。非営利の環境・人権保護団体「インターナショナル・リバーズ」によれば、ベロモンテをきっかけに一帯でダム建設が進み、深刻な環境破壊につながる可能性が指摘されているという。 また、住民2万人以上が立ち退きを強いられ、カヤポ族をはじめとする先住民が独自に育んできた文化が脅かされるとの批判も出ている

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