日本経済が人口減少の影響を受けるのはこれからが本番
厚生労働省は2014年1月1日、最新の人口動態統計の結果を発表した。それによると2013年における人口の自然減は24万4000人と過去最高を記録した。人口が自然減となるのは7年連続のことであり、今後もこの傾向が続くことになる。
2013年における出生数は103万1000人で、2012年を約6000人下回った。一方死亡数は127万5000人で、2012年を約1万9000人上回った。出生数から死亡数を引いた人口の自然減は24万4000人になる。自然減は2012年より約2万5000人増えた。
日本の人口は2005年に初めて自然減に転じている。だがしばらくの間、自然減は数万人のレベルにとどまっていた。人口減少が急激に進んだのは2010年からで、2011年には自然減が20万人を突破。2012年には22万人に、2013年には24万人となった。今後しばらくは人口減少のペースが拡大すると予想されている。日本が人口減少の影響を受けるのはこれからが本番ということになる。
人口とGDPには強い相関性がある。いわゆる経済成長モデルにおいて、経済成長を実現する2大要素は人口(労働投下)と資本投下である。イノベーションによる生産性の拡大は、あくまでこの両者の増加分を超えた差分として理解されている。
生産面に限って言えば、日本における人口減少はすでにかなり前から始まっている。日本の就業者数が減少に転じたのは1997年のことであり、翌年には労働力人口も減少に転じている。生産に従事する人口が減ったにも関わらず、GDPは当時からほぼ横ばいが続いている。これはわずかながら総人口の増加が2005年まで続き、消費の面では経済の持続力があったからである。
だが総人口も減少に転じ、その減少スピードがここ1~2年で急激に拡大している。そろそろ人口減少の影響が経済全般に波及してきてもおかしくない頃だ。
日本経済は、雇用を最優先し、ひたすら生産性を下げてきた。2012年の労働生産性はリーマンショック前の2007年と比較すると5%以上下がっている。日本では賃金低下が問題となっているが、生産性が下がっているので、賃金が増加しないのは当然の結果なのである。
人口が増加あるいは横ばいという状況であれば、雇用維持を優先して生産性を下げるという選択肢(皆で貧乏を分かち合う)も可能だったが、人口の絶対値が減少する状況では、こうしたやり方を維持することは難しい。人口が減少する中で生産性を下げ続けると、経済のパイが加速度的に縮小する危険性がある。
この状況を回避するためには、産業全体の付加価値を上げ、労働生産性を向上させる必要がある。また海外投資を加速させ、海外からの投資収益を拡大することも重要である。だが生産性の向上や海外投資の拡大は、当然のことながら雇用者数の減少を伴うことになる。
成長戦略とは本来、こうした産業構造の転換をスムーズに進めるためのものでなければならない。だが現在のアベノミクスは、むしろ逆の方向を向いている。縮小する市場に対して、公共事業を拡大することで無理に需要を維持しようとしているのだ。
経済政策に関して、純粋に経済的な面からのみ意思決定をすることは難しい。安倍政権が直面している政治的状況を考えると、公共事業の拡大は「政治的」にはやむを得ない面もある。だがこうした政策はいつかは行き詰まる。
安倍政権が長期政権となる可能性が高いのであればなおさらのことだが、アベノミクスの方向性を180度転換せざるを得なくなる日もそう遠くはないだろう。
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