感染が広がるエボラ出血熱が、西アフリカ以外の地域でも見つかるケースが相次いでいる。10月27日には、リベリアから羽田空港に到着した45歳の男性が発熱。エボラ出血熱への感染が疑われる事態になった。
もし今後、国内で感染者が見つかった場合にはどのように治療するのか。また、感染拡大を防止するために、どのような対策を取るのか。政府・医療機関などの対応をまとめてみた。
■空港などで「水際対策」
厚労省では水際での阻止を最優先に対策を講じている。各検疫所では8月以降、エボラ流行国からの乗り継ぎ便に注意し、サーモグラフィーで入国者の体温を測定。10月24日からはエボラ出血熱の流行するギニア、リベリア、シエラレオネ、コンゴに過去21日以内に滞在していないか乗客に確認している。滞在が確認されると、必要に応じて医師が診察。発熱や頭痛などエボラ出血熱の症状があれば検疫法に基づき隔離するという。
そこまでしても、完全に流入を阻止するのは困難だ。時事ドットコムでは次のように水際対策の難しさについて、次のように報じている。
入国者は全国の空港で年約2800万人に上り、全員の滞在歴を細かくチェックするのは困難だ。自覚症状がない感染者は、検疫で時間が取られるのを嫌がり、入国審査で虚偽の回答をする可能性もある。
(時事ドットコム:エボラ熱、水際対策強化=流入阻止困難も-厚労省 2014/10/28 06:37)
■エボラ感染を確認する方法は?
もし発生国からの帰国者でエボラウイルスへの感染が疑われた場合には、 隔離病室を備えた全国45カ所の「感染症指定医療機関」で対応する。感染しているかどうかの検査は、東京都武蔵村山市にある国立感染症研究所の村山庁舎で行うことになっている。
国立感染症研究所ではエボラウイルスを扱う施設はあるものの、周辺住民の反対などの結果、施設の使用が認められてない。
そのため、エボラウイルスへの感染は「組換え核蛋白を抗原とした診断法」を使って診断するが、確定診断を行うには海外の機関に検体を送って検査を依頼する必要があるという。
国立感染症研究所の「エボラ出血熱診断マニュアル」には次のように書かれている。
エボラウイルス感染症のウイルス学的検査は,国立感染症研究所(村山庁舎)ウイルス第一部第一室において可能である.国立感染症研究所においては,現在のところ感染性のあるエボラウイルスの取り扱いが認められていないので,血清学的診断のための抗原の作製にエボラウイルスを用いることができない.そこで組換え核蛋白を抗原とした診断法を開発し,採用している.
■国内でもアビガン錠を使用へ
厚労省は10月24日、患者を国内で治療する際の医療態勢や治療方法を検討する専門家会議を初めて開催した。「エボラ熱の治療法が確立していない現状では未承認薬の使用も許容される」とする見解をまとめ、富士フイルムグループの富山化学工業が製造する「アビガン錠」の使用を認めることで合意した。
専門家会議は、国内で感染した患者が確認された場合に医療機関に助言するための組織として厚労省が設置した。西アフリカ・リベリアで治療経験のある国立国際医療研究センターの医師ら6人が参加している。
この日の会議では、未承認薬の使用は患者や家族への同意が必要との指摘や、流行国で実施されている血清療法は日本では困難との見解も示された。
(エボラ出血熱:未承認薬使用を許容…日本国内での対応協議 - 毎日新聞 2014/10/24 23:58)
アビガン錠は、新型インフルエンザの治療薬として4月に認可され、国内に2万人分の備蓄がある。フランスとスペインで投与を受けたエボラ患者が回復している。未承認薬には他にもエボラ熱の治療に使用された海外メーカー製の物が複数あるが、現在、国内で入手可能な薬はアビガン錠のみだという。
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