5月30日に小笠原沖で発生したマグニチュード8.5の巨大地震で、気象庁はテレビや携帯電話に地震の発生をいち早く知らせる緊急地震速報(警報)を発表しなかった。日本周辺でマグニチュード8.0以上を観測したのは、2011年の東日本大震災(マグニチュード9.0)以来だというが、なぜ発表されなかったのか。
■鳴らなかったのは「深発地震だったから」
気象庁は緊急地震速報(警報)を発表しなかった理由について、今回の地震の震源の深さが590キロと深い、深発地震(震源が深さ200キロを超える地震)であったためとした。気象庁では震源の深さが150キロを超える場合には、緊急地震速報(警報)を発表しないシステムになっているのだという。
震源が非常に深い場合、震源の真上ではほとんど揺れないのに、震源から遠く離れた場所でも強い揺れが伝わることもあり、地域ごとの正確な震度の予測が難しい。そのため、緊急地震速報(警報)は発表しないのだという。
■深発地震の予測が難しいのは「異常震域」が起こる可能性があるから
震源から離れた場所でも強い揺れが感じられる現象は「異常震域」と呼ばれる。異常震域の現象が起こるのは、地震波をあまり減衰せずに伝えやすい「海洋プレート」のなかを、ゆれが伝わることで起こるためだ。
今回の地震は震源から遠く離れた神奈川県二宮町で震度5強を記録するなど、関東地方には震度が減衰せず伝わっており、異常震域の現象が起きたのではないかとみられる。
毎日新聞によると、古村孝志・東大地震研究所副所長は異常震域が起きるのは、プレート内で地震が発生したためとして、「揺れはプレート内に閉じ込められ伝わる。プレートの形に沿って、北海道や東北、関東まで揺れが広がった」と説明した。
■気象庁「現在の技術では限界」
異常震域での震度の予測は、難しいのが現状だ。気象庁の中村浩二・地震情報企画官はこの日の記者会見で、緊急地震速報(警報)について、「震源が浅い地震であれば、震源からの距離が遠くなると震度が弱くなるという性質を使い、各地の震度を計算し緊急地震速報を出す。しかし、深さが150キロを超える地震であれば、震源からの距離が遠くなると、震度が弱くなるという予測式では精度よく計算できなくなる」と話し、「現在の技術では限界がある」とした。
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