遠く離れた2つの国の間に、人と人との助け合いの輪が生まれたことに、私たちは一筋の光を見いだしています --- セルビア共和国大使館

セルビアは今年5月中旬、大規模な洪水に見舞われ、多くの人命が失われたほか、現在も多くの被災者の方々が避難生活を余儀なくされていると聞きます。
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A man walks out from his mud covered front yard in Krupanj, some 130 kilometres south west of Belgrade, on May 20, 2014, after it was hit with floods and landslides, cutting the western Serbian town off for four days. Serbia declared three days of national mourning on May 20 as the death toll from the worst flood to hit the Balkans in living memory rose and health officials warned of a possible epidemic. At least 49 people have been killed already by the worst floods in central Europe for a century and more than 1.6 million people have been hit as the river Sava and its tributaries have burst their banks, inundating tens of thousands of hectares of farmland and destroying houses and buildings. AFP PHOTO / ANDREJ ISAKOVIC (Photo credit should read ANDREJ ISAKOVIC/AFP/Getty Images)
ANDREJ ISAKOVIC via Getty Images

今年は日本各地で水害に見舞われました。そして今月、広島市内で土砂災害が起き、多くの方々が犠牲になりました。そのような報道をハフィントンポストなどで見るたびに胸が苦しくなりますが、実は同じような思いを、日本から約9000キロ離れたヨーロッパのある国の人たちが抱いています。

その国の名は"セルビア共和国"。南東ヨーロッパ、バルカン半島内陸部にある国です。この国は今年5月中旬、大規模な洪水に見舞われ、多くの人命が失われたほか、現在も多くの被災者の方々が避難生活を余儀なくされていると聞きます。

遠い遠い国の人たちの広島への思いを、セルビアの現況や水害発生の背景と合わせて、セルビア共和国大使館スタッフの方にお伺いしました。

*インタビュー@セルビア共和国大使館(北品川)


■ 今も油断できない状況

今年5月に発生した洪水の被災地からは、水はもう引いており、それ以降の大きな被害はありません。ただし8月はセルビアも日本と同じように天気が不安定でしたので、再びたくさんの雨が降りました。それにより洪水の被害に遭った家屋の中には、再び浸水したものもありました。5月当時ほど大変な状況ではありませんが、それでもまだまだ落ち着かない状況です。

洪水による瓦礫は、被災地によりその処理状況はまちまちです。首都ベオグラードから西へ40キロほど離れたところにオブレノヴァツという町があります。ここは今回の洪水被害が最も大きかったところですが、少しずつ状況は改善されています。市内の家の壁には、洪水の水位を示す線が残され、それを今でも見ることができます。それはちょうど、震災直後に行った東北地方でも目にした光景でした。

洪水発生当時は、通行できないところが多くありました。小さい道路や橋は、まだ完全には直っていません。でも今、高速道路は復旧しており、そのおかげで世界中の皆様からいただいた物資が被災地に届くようになりました。そして同じく皆様からいただいた寄付金も、セルビア政府を通じて復興活動の支援に充てられています。


■ 備えゼロで遭遇した自然災害

それまで私たちは、洪水を経験したことがありませんでした。セルビアには台風はほとんど来ませんし、地震も日本で体験するような大きなものは起きません。

そんな中で、今年5月に急に豪雨が起きました。3日間ずっと雨が止まず、川が氾濫し、セルビアの北から南まで大変な状況に見舞われ、各自治体に避難所が設けられました。セルビア全土に非常事態宣言が出るような自然災害は、私たちにとっては初めてでした。

雨と同じくらい大変だったのが、停電です。一時期は停電が広い範囲で起きました。洪水発生当時に私たちが一番心配したのが、オブレノヴァツにある国内最大のニコラ・テスラ火力発電所への浸水でした。そこにもし水が入ったら、国内の大部分の電気が消えてしまうからです。政府や周辺住民、ボランティアが発電所の周辺に土嚢を積み上げて、何とか浸水を免れました。

東欧を流れるサヴァ川が氾濫して街に流れ込み、甚大な被害をもたらしました。「あ、水が来たな」と思ったら、数分経たないうちに水がどんどん押し寄せ、その様子は"川の津波"と言われたほどです。それに対して、人々は対策を取ってこなかった。川には堤防もなく、護岸工事に留まっています。でもそれも仕方の無いことです。"100年に1度"と言われる今回の洪水ですが、つまりは自分の生きている間でほぼ経験しないであろうということですから。


■「広島の人たちを助けたい」

今回のセルビアの洪水に対して、日本の方々から多くの寄付金をいただきました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。郵便で書留をお送りいただいただけでなく、大使館にいらっしゃって私たちに直に寄付金をお渡し下さった方々もいました。しかも東京からだけでなく、関西や北海道、そして東北の方々がたくさんお見えになりました。「セルビアは東北にたくさん支援してくださったから・・・」とおっしゃり、私たちもとても感動しました。心からお礼を申し上げたいです。

今年は日本各地で水による自然災害が起きました。そして今、広島が大変な状況になっています。その報道に接するたびに、悲しくなります。急に土砂崩れが起き、たくさんの方々が犠牲になるのは、本当に大変だと思います。セルビアでも山がちな地域では、同じように土砂崩れが起き、車が土砂に埋まるなどの光景を目にしました。

今回の広島の状況は、セルビアでも報道されています。今はインターネットで流れるニュースにコメントできる機能がありますが、それを見ると「残念だ」「日本という素晴らしい国の人々が、自然災害の犠牲になったことはとても悲しい」「何とかして助けたい」というコメントが並んでいました。

3年前に日本で震災が起き、今年5月にセルビアで洪水が起き、その数ヶ月後に再び日本で土砂災害が起きた。本当に悲しいことですが、その中で国と国を越え、セルビアが日本に支援し、日本がセルビアに支援し、セルビアが親日国であることを日本の人々に知っていただきました。遠く離れた2つの国の間に、人と人との助け合いの輪が生まれたことに、私たちは一筋の光を見いだしています。

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私たちMy Eyes Tokyoは、このたび国際交流団体"The International Center in Tokyo(ICT)"様と「セルビア洪水被災地復興チャリティイベント」を共催させていただくことになりました。私たちはこのイベントを、日本とセルビアのさらなる相互理解を図る場にしたいと考えています。辛い出来事を経験した日本とセルビアですが、それを乗り越えて楽しい時を皆様と共に過ごせたら幸いです。イベント内容の詳細およびお申し込み方法についてはhttp://www.myeyestokyo.jp/48689をご覧下さいませ。

*使用言語は主に英語です。


【関連リンク】

セルビア共和国大使館:http://www.tokyo.mfa.gov.rs/jpn/

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