アメリカ・サウスカロライナ州チャールストンの教会で2015年6月17日、黒人の男女9人を殺害した銃乱射事件で、サウスカロライナ州の連邦裁判所の陪審員はディラン・ルーフ被告(22)に死刑を言い渡した。
ルーフ被告は連邦検察からヘイトクライム(憎悪犯罪)、信教の自由に対する妨害など33の罪で有罪となり、そのうち17の罪で死刑相当となった。
2015年6月18日、ノースカロライナ州シェルビーの裁判所を出るディラン・ルーフ被告。 / JASON MICZEK/REUTERS
当時21歳だった白人のルーフ被告は、黒人の信徒が集まる「エマニュエル・アフリカン・メソジスト・エピスコパル教会」(通称「マザー・エマニュエル」)で聖書勉強会が開かれていたとき、教会内に足を踏み入れた。信者たちが集まっている席に着席してから、銃を取り出し、突然銃を乱射した。
ルーフ被告に殺害されたのは、シンシア・ハードさん、エセル・ランスさん、スージー・ジャクソンさん、ダニエル・シモンズさん、タイワンザ・サンダースさん、シャロンダ・コールマン=シングルトンさん、デパイン・ミドルトン=ドクターさん、マイラ・トンプソンさん、そして教会の牧師のクレメンタ・ピンクニーさんだった。
検察官は、ルーフ被告に死刑を宣告するように陪審員に訴えた。もし陪審員が全会一致で死刑にならない場合は、自動的に終身刑になっていた。
「彼らはあの夜、13人目の訪問客を歓迎しました。...優しい言葉をかけ、聖書、チラシ、そして椅子を差し出しました」と、ジェイ・リチャードソン検事補は、ルーフ被告の量刑言い渡しの最終弁論で述べた。「ルーフ被告は憎しみとグロック45口径の銃を携えてやってきたのです」
ディラン・ルーフ被告は、自分の生死を決める陪審員の判決を待っている間、全く反省の色を示さなかった。
最終弁論の冒頭、ルーフ被告は「心理学的に言って、おかしなことは何もない」と言った。彼は以前書いた論文に、心理学は「ユダヤ人が発明したもの」だと記している。
「私の冒頭陳述はちょっと場違いのように思える」と、ルーフ被告は陪審員に語った。「ウソをつくつもりはない。私がそうすべきではないという人がいるだろうし、おそらくこれまでいた人たちよりも、私はずっときまりの悪い思いをしている。それ以外何もない」
2016年6月15日、事件から1年経ったマザー・エマニュエル / SEBASTIAN MURDOCK / THE HUFFINGTON POST
ルーフ被告は、アメリカ連邦捜査局(FBI)から2時間にわたって尋問を受けた。その時撮影された動画が法廷で流され、ルーフ被告が罪を認めている場面が写し出された。
「私は有罪だ。誰が見たって有罪だ」と、ルーフ被告は語った。
また彼はFBIの捜査官に、「白人が二級市民になり、白人女性が日常的に黒人男性にレイプされていると信じていたから、9人の無実の人たちを殺害した」と語った。
量刑言い渡しの最終弁論の終了間際、ルーフ被告は自身の銃撃を正当化した。
「やらなければならないと感じた。今でもそう感じている」
ルーフ被告は陪審員に、「死刑を回避するよう懇願することもできたが、そうするのがいいのかどうかはわからなかった」と述べた。ルーフ被告は、控訴する意向を示している。
ルーフ被告の家族は声明を発表し、亡くなった人たちに哀悼の意を表明した。
「私たちはいつまでもディランを愛しています。私たちは彼がどうしてこのような恐ろしい襲撃をし、多くの人々に多くの苦しみを与えてしまったのかを理解するため、生きている限り困難に立ち向かいます。犠牲者の方々に深い悲しみを表明するとともに、多くのご家族のみなさんにお悔やみを申し上げます」
事件から1年後の2016年6月には、聖書勉強会と礼拝が行われた。教会の信徒で、マザー・エマニュエル内で生まれたトーマス・ローズさん(66)は亡くなった人たちに祈りを捧げた。ローズさんは事件当日、ルーフ被告が銃を乱射する1時間前に教会を後にしていた。
「今でも立ち直れません」と、ローズさんはハフィントンポストに語った。「もうしばらく時間がかかるでしょう。彼がやったことは赦します。しかし彼は私たちの家族の一員を連れ去りました。決して乗り越えることができないのです」
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。