「なにかを始めるのに遅すぎることはないことを和田さんから学ばせていただきました!」
雑誌アントレの編集デスクであり、商業出版のプロデュース、コンサルタントを手がけるコンセプトワークスの>天田社長が、FBで呟いてくださった一言だ。
嬉しくもあり、ちょっと不思議な感覚を味わった。
僕もふだん、伊能忠敬などの例を出して、「なにかを始めるに遅すぎることはない」というようなことを書いているのだが、それはどちらかと言えば、自分を励ますためであった。
自分がやっていることが、誰かをそのように感じさせることができるかもしれない、ということはあまり真正面から考えてみなかった。
ひとつには、僕が達成したことがあまりに小さいからだし、もうひとつには、なにかやってる本人にとっては、「誰かに、遅すぎると思われるかもしれないことをやっている」という意識が皆無だからだ。
たしかに、僕の夢のひとつは本を商業出版することだった。
ずっと諦めていたが、53才で始めたブログが起点となり、先月、商業出版させていただいた。
昔の仲間たちやブログの読者の方が応援してくださったおかげで、増刷がかかり、韓国で翻訳出版されることも決まった。韓国からは複数の出版社からの応札があり出版社の担当の方を驚かすような好条件になったそうだ。
どうやら、次の本のチャンスもいただけるようだ。
その過程はひょっとしたら、天田さんがおっしゃってくださったように見えるのかもしれない。
そこで、僕がそこに至るまでに、学んだことをシェアしてみたいと思う。
僕の場合は「本を出す」ということだったけど、他の夢の実現のためにも、役に立つことも含まれているように思う。
もし、50才を超えて、人生の残り時間になにをしようか、今さら昔の夢を取り出してみるのもどうだかな、と思っているような方がおられたら、ぜひ、参考にしていただきたいと思う。
たしかに、天田さんがおっしゃるように、もっとも自分らしいと思えることを始めるのに、遅すぎるということはないのである。
1.残りの人生で何をやりたいか立ち止まって考えた
ほんとうに自分がやりたかったことは何か、立ち止まってじっくり考えてみた。
自分の会社をできる極限まで大きくしたいのか、早くにリタイアして世界旅行でもしたいのか・・・
そして、やはり何かが書きたいという結論に達した。
それが、商業出版にいたるかどうかは、まったくわからなかった。
自信もなかった。
とにかくブログを3年続けてみようと思った。
人生は短いが、50才の声を聞けば、いよいよ短い。
これを最後のトライにして、3年で何も変わらなかったら、諦めようと思っていた。
2.パンツを脱いだ
50のおっさんだ。
いい格好がしたかった。
だけど、人に何かを伝えるためには、自分の弱さも失敗もすべてさらけださなければならないと学んだ。
そういえば、40才を超えて会社を辞め、自分の商売を始めたときもそうだった。
いい格好がしたいという思いが当初僕をがんじがらめに縛った。
しかし、どんな格好を晒しても生きていかなければと思えた時に、門は開かれた。
何歳になっても、パンツを脱いでスタートすること、それがもっとも重要なことだと学んだ。
3.ゴールが見えなくても、とにかく毎日トライした
毎日、毎日、書いた。
最初はほとんど反応もなかった。
反応の薄いブログに、よい歳の大人が自分の弱さをさらけ出す。
恥ずかしくて仕方がなかった。
何度も何度も、自分にはやはり書く才能がない、無駄な時間の使い方をし、恥をさらしているだけだ、そう思った。
しかし、やめなかった。
やめれなかった。
いままでも、何度も書くことにトライし、何度も途中で放り出してきた。
辛い「無反応の恥ずかしい時期」をなんとか乗り越えることが出来たのは、なんと言っても、これが昔から考えていた夢にトライする最後の機会だから、と思っていたからだ。
残り時間が少ないという制約は、持てる才能を最大限絞りだす効果もあるのである。
4.周囲にはけっして理解されない
周囲の人たちには、自分のやろうとしていることは、けっして理解されない。
馬鹿なことをやっていると、嘲笑されもする。
自分の周りにいて活躍している人たちは、自分が日々実務をしているフィールドでともに頑張っている人たちだ。
自分が再設定した夢の世界とは、まったく違う世界に住んでいる。
しかし、わずかだが、理解してくる人、そして応援までしてくれる人もいる。
理解してくれない人の言説に振り回されてモチベーションを折られることほど無駄なことはない。
理解してくれるわずかな人の声に耳を傾けて、その言葉を胸に染み込ませよう。
5.リスクを許容することを学んだ
実名で書くことにはさまざまなリスクがある。
3年続ける過程で、間違えたり、書くべきことではないことを書いたりしてしまい、辛いこともいろいろとあった。
僕は徐々にそのリスクを許容することを学んだ。
とても実名であんな本やブログは書く勇気がありません、と何度か言われた。
おそらく、人は自分がほんとうにやりたいこと、自分のミッションを感じて何かをしているとき、リスクを許容する範囲を広げていくのではないかと思う。
だから、どんなことをするにせよ、自分が心の底からしたいと思っていることをはじめるなら、そのリスクを想像して、最初から躊躇する必要はないのだ。
(2015年4月12日 「ICHIROYAのブログ」より転載)