「この世の終わりみたいな渋谷」はコラ画像だった。SNSで拡散、作者も困惑

小池知事の屋外ビジョンと街灯以外は真っ暗になった渋谷のスクランブル交差点。コラージュ画像が拡散し、実際の写真と誤解する人も。
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PCのイメージ画像
Mensent Photography via Getty Images

「友達からこの世の終わりみたいな渋谷送られてきて2分くらいずっと笑ってた」

「渋谷の写真送られてきたけどディストピアじゃん」

「ブレードランナーみたいだ」

こんな言葉と共に、ある写真がSNS上で拡散している。スクランブル交差点ではネオンや看板の照明が消えて、街灯がわずかにつくのみ。屋外ビジョンには小池百合子・都知事の顔が煌々と光っている。

小池知事は4月23日の定例会見で、3度目の緊急事態宣言に伴う人出抑制策を打ち出した。「20時以降ですけど、街頭の看板であるとか、明るい看板ですね、照明を伴う看板、ネオン、イルミネーションなども停止をしていただくようにお願いを致します」と関係団体に協力を要請する意向を示していた。

小池知事の要請を受けて、渋谷は本当に真っ暗になってしまったのか。いや、違う。この写真は、既存の渋谷の夜景に小池知事の写真を合わせて加工したコラージュ画像だ。 

この画像は、DJやトラックメーカーとして活動する「サツバツおやつ」さんが4月24日に作成して、Twitterに投稿した。本人のツイートでは「女帝の要請ぜんぶ乗せしてみたらディストピア感すごい」と書かれており、コラージュ画像だと分かるようになっていた。しかし、転載が重ねられるうちに、実際の渋谷の風景であるかのように情報が一人歩きしてしまった。

本人も昼休みに「緊急事態宣言中の東京の様子」というタイトルのまとめサイトの記事をクリックすると、自分が作成したコラージュ画像が出てきたので衝撃を受けたという。26日には、コラージュ画像の制作風景の動画を投稿して、実際の写真ではないことを再度強調している。

ハフポスト日本版では「サツバツおやつ」さんに、画像を作った経緯や今の思いを取材した。

■「サツバツおやつ」さんへの一問一答

 

—— 渋谷のコラージュ画像を作成した理由は?

画像を作成したのは23日の夜ですね。街灯以外の照明を消すというニュースを見ながら、頭の中ではイメージがありましたので「全部消えたらこんなになるなー」と手を動かしていました。DJという活動を主としているので、今年に入って出演予定だったイベントの中止・延期が続いたり身近な店舗の窮状も実感していますが、今回の投稿に関して政治的な意図はありません。あくまでもビジュアルの話です。

 

—— SF作品の『ブレードランナー』や『1984』を想起された人も多いようですが、こうした反応は予想していましたか?

『ブレードランナー』『20世紀少年』『攻殻機動隊』(押井守監督)あたりをイメージしていましたね。『攻殻機動隊SAC_2045』は「バーチャル渋谷」でコラボしてたので、きらびやかなイメージとはコントラストになるなと思いました。みなさん他にも多くの作品を挙げていて大変興味深いです。近未来というイメージはブレードランナー以降、遺伝子のように他の作品へと引き継がれていて「見慣れた風景の違和感」がそれぞれの方の強烈に残ったシーンを想起させるトリガーになったのかもしれません。

 

—— コラージュ画像を投稿する際に気を付けたことは?

このコラージュは20分くらいで作った非常に雑なものです。自分の認識では雰囲気がわかれば良い程度のつもりでしたが、万が一、本物と間違わないよう下記の点に配慮してツイートしていました。 (「要請ぜんぶ乗せしてみたら」と加工物であると示す文章をつける/「2016.07.20 Release」という広告をあえて見えるように残す /109のロゴが古い画像を選定 ・緊急事態宣言前にツイートする)。ほとんどの方は創作物と認識して楽しんで頂いていますが、それでも誤解してリツイート・リプライされる人に対しては「コラです」「コラです」とコメントして回っていました。通じなかったギャグの解説を自らするようで野暮な事だとは思いつつも、私なりのフォローアップと考えた為です。

 

—— この画像が、さまざまなサイトやSNSで拡散され、コラージュ画像と気づかずに、本当の渋谷の様子と誤解している人も多いようです。それについてはどう感じますか?

 

「これは本物だ」という趣旨の文章と共に画像の無断転載が行われ始めたあたりから、ポリティカルな色がつき始めました。普段から表現活動をしている以上、私が生み出したもの・発信する内容に対しては責任を持っていますが、人格をも否定するような辛辣なコメントの大半は転載からたどり着いた方たちのようです。 畑から盗まれたリンゴに絵の具かけて売ってたから食べたら不味かったといわれてしまうと、絵の具かけないで食べてくださいと答えるしかないです。

 

—— 製作手順を動画でアップしたのは誤解を解くのが理由でしょうか?

 表現のひとつとしてメイキング的な側面もありますが、誤解を招かないためのフォローでもあります。「現実じゃないよ」「製作者本人の発言だよ」という2点を証明できる手っ取り早い方法です。 

  

—— 今回の件に関して思うことは?

決して「この光景を見に行こう」などということはせずに、みんなで協力しあい早期の収束を実現し、このような現実が来ないことを願っています。