大義なき解散?正当な権利?首相(内閣)の解散権は、どのように正当化されうるのか

この三連休の話題はやはり解散総選挙についてが中心となりました。

こんばんは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

地元周りをする中でも、この三連休の話題はやはり解散総選挙についてが中心となりました。

野党や各種論壇からも指摘されているのが、今回の解散に「大義」があるのか?という点についてです。

確かに我が国では議会の「解散権」は首相(内閣)の専権事項とされており、内閣不信任案の提出などがなくても、自由なタイミングで議会を解散させることができます。(根拠は憲法7条、国事行為)

しかしながらこの慣例により、日本では戦後だけで20回以上の解散が行われ、衆議院議員の任期は平均すると2年半に満たないなど、政治的安定が損なわれてきたとの指摘もあります。

「いや、首相による解散権は、議会制民主主義の根幹だ」

とする意見もあるようですが、その議会制民主主義の元祖であるイギリスでも、2011年の法改正「任期固定法」により、議会の同意(三分の二以上の賛同)がなければ解散は不可能になっています。

先進諸外国でも「内閣不信任案可決時の解散」は明記されているものの、日本のように首相が解散権を自由に行使するということは珍しいようです。

この点については、下記の記事が詳しいので参考にしてみてください。

イギリス首相になくなった?「解散権」を憲法の視点で考える

しかし、先進各国では解散権を制限する傾向が見られる。今見たイギリスもその例の一つであるが、ドイツでは1949年の憲法(ドイツでは「基本法」という)制定当時から、解散権は下院での首相選出ができず政治が行き詰まった場合などに厳格に制限されていた。その結果、現行憲法下での解散はわずかに3回だけである(日本はほぼ同じ期間に23回)。フランスについても、解散権を制約する憲法の条文はわずかであるが、政治の運用をみれば、解散はまれであり、1958年制定の現行憲法においては5回だけである。他方、頻繁な解散が行われてきたカナダでは法改正によって解散権の制限が試みられたが、抜け道があって成功していないようである。

さて、もう一つの比較対象として、我が国の地方議会の制度ではどうなっているでしょうか。

もちろん、議院内閣制と二元代表制という大きな違いはあれど、地方自治体の首長には首長不信任案可決時を除いて議会の解散権はありません

しかしながら国政の解散と同様、自分自身の政権基盤を安定させることが目的であるならば、首長みずからが辞職して「出直し選挙」を自分に有利なタイミングで行うということは考えられます。

実際、一時期まで日本各地の自治体で、首長が「自分に有利なタイミングで辞職 選挙でまんまと勝利 もう4年間の任期を得る」という事態が横行しました。

その結果、現在では地方自治法が改正され、

「首長が自己都合で辞職し、自ら再選した場合、再選後の任期は辞職前に残された期間のみとする

と定められました。つまり、残り2年のタイミングで辞職をして再選した場合、任期はそこから4年間ではなく、2年間となって「元の選挙のタイミング」では結局は選挙になる仕組みに変えたわけですね。

この法改正により、首長の自己保身政略による「セルフ辞職選挙」は激減したと言われています。

日本においても法改正を行い、イギリスの「任期固定法」のようなルールを定めることができるのか?

ここについては、憲法学の見地からも様々な意見があるようですが、これをきっかけに議論が深まるのは望ましいことではないでしょうか。

安倍内閣による「奇襲」とも言える解散が二度続き、大義なき解散が叫ばれる今、「首相(内閣)による解散権の制限」を公約に掲げる野党勢力が出てもおかしくないかもしれません。

...まあその公約は、自らが政権を取ったときに、大きく手足を縛るものになるのですけれど。。

皆さまも今回の解散をきっかけに、諸外国や地方自治体と照らし合わせて、首相の「解散権」について一考をしてみていただけますと幸いです。

それでは、また明日。

(2017年9月18日「おときた駿 公式サイト」より転載)