外国籍住民を「住民」扱いせず、推し進められるごみ処理施設建設計画

市には、この多様性を市政に最大限生かすよう心掛けてほしい。
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Public waste disposal facility with signs indicating organics, recycling and trash compartments.
sfe-co2 via Getty Images

新潟県の南魚沼市、魚沼市、湯沢町の21町が進める新ごみ処理施設の建設候補地に、60カ国のエリートが通う国際大学の敷地が選定されたことは以前のブログで書いたが、日本語がわからない学生たちへの周知がいまだに徹底しておらず、学生たちからは「なぜ私たちを住民扱いしないのか?」と疑問の声が上がってる。

 事業規模は約150億円で2025年の稼働を目指している。国際大学は、学生の9割が外国籍で、大部分は日本語がわからず、候補地は彼らが暮らす寮から700メートルの距離だ。21町と国際大が同意したのは今年1月で、すでに半年以上が経つが、いまだに大学も市も学生全員に英語で建設計画の詳細について説明していない。ある学生は「9割の学生は建設計画について知らないのではないか」と言う。

 当初、市は大学の学生向け説明会を予定していなかった。それについて私が3月の住民説明会で林茂男・南魚沼市長に尋ねたことで、421日に開催することで決まった。

 しかし、市は、「学生は大学の管理下」にあるとし、通知を大学に任せ、大学は春休み中の329日、多くの学生が旅行中に、説明会についてのメールを一斉送信した。

内容は

●市長が最新技術を用いたごみ処理施設について説明に来ます。

●施設は78年後に「Boya Mountain」の麓で関越高速道路の隣に建設される予定です。

●市長はこのエネルギーリサイクルセンターのシステム、環境への安全性、そしてこの建設によって大学がどんな恩恵を受けるかについて説明します。

施設が大学の敷地内に作られ、学生寮から目と鼻の距離だという重要な情報が抜け落ちているため、学生の1人は、「一体、何についてのメールなのかさっぱりわからなかったから読み飛ばした」と打ち明ける。さらに、市内に「Boya」という山は存在しない。「坊谷山」と書いて、「ぼたんやま」なら国際大の近くにある。

しかも、421日は、国際大の学生にとって一大イベントである「オリンピック」の初日で、説明会に参加したのはたったの12人だった。

市は地元住民の理解促進のため、6月から7月にかけて計3回、東京と新潟県上越市にあるごみ処理施設の視察ツアーを企画し、国際大を通して、学生も招待した。

これも、市は大学に学生への通知を任せ、大学が523日に学生に送ったメールには、市がエネルギーリサイクルセンターの視察ツアーを企画し、ランチも無料で提供されることだけが書かれ、またしても、国際大の敷地内に施設が建設される予定とは書かれなかった。学生の1人は「無料で東京に行けて、しかもランチも出るなら、行くことにしました」と振り返る。

しかも、市は専門の通訳をつけなかったため、学生たちは説明されたことの半分も理解できなかった。そして、視察後、大学の担当者から、「今日見たような施設が78年後、大学の敷地内に建設されるとしたらどう思うか教えてほしい」と視察参加者だけにメールが送られた。「無料で旅行に連れて行ってもらっているのに、悪いことは書けない。そもそも、施設について英語での説明がなかったから正確な感想なんて書けない」と参加した学生は言う。

しかし、市が89日、議会全員協議会に提出した資料には、視察に参加した学生の意見がすべて掲載され、「ああいう施設が私の国にもできたらいい」などと記された。視察参加者89人のうち国際大の学生が31人で全体の3割強を占め、そのほとんどが現地での説明を理解していないにも関わらず、資料には「視察参加者に対してアンケート調査を行いましたが、結果は概ね好印象であったと考えます」と記された。

ある学生は「市が本当に私たちの意見を聞きたいなら、なぜ通訳をつけなかったのか理解できない」と話す。 

大学と市が候補地について合意したのは今年1月。しかし、9月18日時点で、候補地の正確な位置を知っているのは説明会に来た12人と、視察に参加した31人の延べ43人ということになる。説明会や視察の案内通知で、建設予定地が大学敷地内ということに言及しなかったことについて、国際大は「特段の意図はありません。詳細については市長主催の説明会で話しております」とコメント。また、「Boya Mountain」に関しては、「国際大学では開学以来、坊谷山=Boya mountainとしてきました。旧来の大学内での呼称を用いました」とコメントした。私が10人以上の学生に「Boya Mountainはどこか?」と尋ねてみたが、誰一人知っているものはいなかった。

621日、農作物への風評被害や交通量の増加を心配する近隣住民は449人分の反対署名を市長、市議会、国際大学にそれぞれ提出した。そして、914日、市長と反対派住民との会合が持たれた。

私は市長に質問した。

私: 89日の議会の全員協議会に提出された資料には市長は事前に目を通されましたか?

市長:はい。

私:視察ツアーに行った国際大の学生の感想がいくつか書かれていましたが、どんなものがあったか覚えていますか?

市長:いや、ちょっとすぐには出てこないかな。

私:「英語での説明もあったほうが良い」という感想があったのに気づかれましたか?市は日本語がわからない学生31人を招待し、通訳をつけることはしなかった。そして、彼らの「こんな施設が私の国にもあったらいい」というコメントを資料に掲載し、「視察参加者に対してアンケート調査を行いましたが、結果は概ね好印象であったと考えます」と記しました。31人という数は、視察参加者全体の3割以上です。それだけの人が理解できない言語で説明しておいて、なぜ「概ね好印象だった」と結論付けることができるのでしょうか?市長はこの資料を事前に目を通し、ハンコを押しているのですよね?

市長:否定はしません。言い訳にしかならないけど、こんなに学生が来るとは思っていなかった。住民の人が来るものだと思っていた。

この瞬間、私は外国籍住民は「住民」扱いされていないという悲しい現実に直面した

会合終了後、私と握手をした市長は「確かに通訳はつけるべきだったな」と言い、公用車に乗り込んでいった。

視察に参加した学生は、「私たちの感想がそんな大事な資料に使われるなんて知らなかった!あの視察は、単なる『見学』だと思っていたから驚いた。私たちの大学の敷地にあれを作るということをなぜ事前に教えてくれなかったのか」と言う。

市は、大学の学生を住民扱いし、こういった大事な事業説明を、大学任せにするのではなく、市と外国籍住民が直接やり取りできるプラットフォームを作るべきだ。ごみ処理施設建設を推進する大学が間に入っては、すべての情報が正確に届くとは限らない。学生と違い、大学の職員はキャンパスに暮らしているわけではないのだから、当事者意識を持つことは難しいだろう。

人口10万人以下の自治体に60カ国からの住民が暮らしているというのは世界でも珍しいことだ。市には、この多様性を市政に最大限生かすよう心掛けてほしい。