格差社会が世界的に問題になっています。
素朴な疑問として(日本における格差の拡大は、先進各国より早く進行しているのだろうか?)ということが頭を過ります。それに対する回答が下のグラフです。
これは税引き前所得に占めるトップ1%の割合を、1981年当時と今日という二つの時点で比較したものです。矢印が長いほど、格差拡大が激しかったと言えます。
このグラフからは、アメリカとイギリスにおける格差拡大がとりわけ大きかったことがわかります。これはレーガンやサッチャーの登場と関係があるのではないでしょうか?
日本における格差拡大のペースは、先進国全体の中では突出していません。またトップ1%の所得占有率(9.5%)も、大体、真ん中くらいです。
フランスやオランダでは殆ど裕福層の寡占が進行しなかったことがわかります。
株式市場と格差拡大の問題は、関係あるのか? ということですが、僕は今後ますますこの問題に投資家は注意を払うべきだと考えています。
なぜなら、普通、現在米国が行っている量的緩和政策のような大胆な政策を5年も続ければ、景気はかなり上向いてくるものだからです。しかし、今回の景気回復局面は、いつになく弱々しいです。
住宅市場の回復も(どうも変だな)と感じるくらい、遅々としています。
よく言われることは、ミレニアル世代を中心とした若者たちの価値観が大きく変わり、それが一戸建て住宅などに対する需要に影響を及ぼしているのではないか? という推論です。
彼らは僕らブーマー世代より高学歴であるにもかかわらず経済的には不遇で、政治観は左寄りです。
過去において格差社会の行き過ぎが訂正された局面は、第一次大戦や第二次大戦などの大戦争でした。それらを通じて特権階級の独占的な富の多くが霧散してしまったのです。その意味で戦争は格差是正の最も大きな要因だったと評価できます。
なぜ格差社会が大戦争うんぬんの議論に一足飛びに発展するのか? ということですが、最近、ブームになっているトマ・ピケティによれば格差社会の進行は、個人の努力や才能が正当に評価されない社会の到来を意味し、それは民主主義のプロセスを弱体化するからです。
全体主義や国粋主義は、そういう鬱積した不満を栄養として育ってゆくのです。
(2014年5月5日「Market Hack」より転載)