4月1日から東京ディズニーランドの入場料が値上げされた。6400円から6900円へ500円の値上げである。
しかし、海外に目を転じると東京ディズニーランドの入場料が世界で一番安いことがわかる。下表の通り、フロリダの12,600円 カリフォルニアの11,500円に比べれば、およそ半分の入場料だ。円安の効果が大きい。
1ドル120円前後の円安になって半年近くが過ぎた。ドルを持っている人からすれば、80円の時代に比べれば、3分の2の価格になっていることになる。
この円安の効果は、東京ディズニーランドだけではなく、日本のあらゆるもの・サービスの価格競争力を高めている。内閣府の景気ウォッチャー調査でも、外国人からの需要の強さは如実に出ている。
昨年春ごろは、「外国人」「インバウンド」といった言葉をともなった景気前向きコメントはほんのぱらぱらという感じであったのが、秋ごろから急激に増えはじめ、今や景気ウォッチャーの強気コメントの大半は「外国人・インバウンド」という感じである。
もともと外国や外国人からの需要に注力している分野では、この価格競争力を活かしさらにビジネスチャンスを拡大するための投資が活発に行われている。東京都心における免税品専用店舗の開発などもそうだし、地方の観光地においても外国人観光客受入れ増加のための様々な投資が行われている。
しかし、「外需」慣れしていない産業や地域では、まだまだこの円安効果を生かしたビジネス戦略が立てられていないところも多そうだ。
品質に自信はあるが、外国に輸出したこともない、日本に来る外国人に売ったこともない。外国人に自分たちの作るもの、提供するサービスの良さがわかるのか、という迷いもわかるが、まずはチャレンジしてみてはどうだろうか。国産ワインの産地も地道な努力を続けて、本場欧州への輸出を試みてきている。
今の円安水準がずっと続くとは限らないが、すぐに80円に戻ることもなさそうだ。価格競争力のある間に、海外向け商品の開発、従業員への外国語教育、外国語ホームページの整備、海外販路の開拓、海外で通用するブランド構築などへの投資を進めてはどうか。多少円高になっても通用する日本のもの・サービスがひとつでも増えることを期待したい。
円安には、メリットもデメリットもある。円安のメリットを最大限に生かす努力をしなければ、国民の購買力が減少するデメリットだけが残ってしまうことになりかねない。
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(2015年4月27日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
取締役 経済研究部 部長