「夫婦同姓」合憲か違憲か、最高裁で弁論 年内にも判決
「夫婦は同じ姓を名乗る」「女性は離婚後6カ月間は再婚できない」とする民法の規定が、それぞれ憲法に違反するかが争われた2件の訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は4日、原告と国から意見を聞く弁論を開いた。いずれも結審し、年内にも大法廷で初めてとなる憲法判断が示される。判決日は後日、指定される。
民法750条の「夫婦同姓」の規定をめぐっては、東京都内に住む事実婚の夫婦ら男女5人が、2011年に提訴。改姓を強制することは、憲法が保障する「個人の尊重」や「男女平等」などを侵害しており、国会が法改正を怠ったことで精神的苦痛を受けたとして、計600万円の損害賠償を求めた。
13年の一審・東京地裁判決と昨年3月の二審・東京高裁判決はともに、別姓を選ぶ権利は憲法で保障されていないなどとして、請求を退けている。
原告の一人で行政書士の小国香織さん(41)は15人の裁判官を前に5分間、意見を述べた。小国は旧姓。「結婚後の姓で呼ばれると、自分ではない他の人を呼んでいるという感覚にかられます」
改姓が必要な法律婚を選ぶか、婚姻届を出さない事実婚にするか。夫は「事実婚でいい」と話したが、手術する際の承諾などで家族と認められないかもしれない。結婚式当日まで悩んだ末、行政書士として「法律手続きはきちんとしたい」とも考え、婚姻届を出したという。
夫の姓の「丹菊(たんぎく)」は珍しく、「きれいな名前で嫌いではない。もし『小国』が嫌いだったら、喜んで変えたかも」。保育園に通う娘の母親としては丹菊姓を使う。自宅には事務所と両方の姓の三つの表札が並ぶ。だが、小国姓に切っても切れない愛着を感じてきた。「自分を表すのにぴったりで、変えられるのはねじ曲げられるような感じがする」
仕事では小国姓を使い続けているが、遺言書の作成手続きに立ち会った際、戸籍名での署名を求められたこともある。依頼人からは「誰かと思った」と言われたという。
「結婚した日を境に、自分の存在を失うのはつらいんだよ、と裁判官に分かってほしい」。弁論終了後に都内で記者会見した小国さんは、そう話した。
法廷で原告側の弁護士は、法律婚を選んだ夫婦の約96%が夫の姓を選んでいることを挙げて、「事実上、ほとんどの女性に改姓を強いる性差別だ」などと主張。国は「夫か妻のどちらかを優越させるものではない」などと反論した。
この日は、女性は離婚後6カ月間、再婚できないと定めた民法733条をめぐる訴訟の弁論も開かれた。原告側は「規定は女性の結婚の権利を必要以上に制約している」などと訴えた。
朝日新聞社
(朝日新聞デジタル 2015/11/14 20:00)