あの家入さんも参考にしたスウェーデンの「インターネット×直接民主主義」政党とは?

前回の都知事選で出馬した家入一真さんが立ち上げた「インターネッ党 」の起原ってなんなんでしょうね…。こちらプロブロガーのIkedaHayatoさんのインタビュー ではこう述べています。
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前回の都知事選で出馬した家入一真さんが立ち上げた「インターネッ党」の起原ってなんなんでしょうね…。こちらプロブロガーのIkedaHayatoさんのインタビューではこう述べています。

あとはハンガリーの「IDE」とか、スウェーデンの「Demox」とかも面白いと思う。ぼくらの「インターネッ党」にはそういう動きをつくりたい、という狙いもあったりします。

そうなんですスウェーデンの「Demoex(インタビューでは”Demox”となっていますが正式には”Demoex”です)」っていう政党がそのひとつだそうなんです。

そんなわけで、今年の6月にこの団体を訪問してきたので簡単に紹介します。(※この記事は僕も同行した、静岡の学生若者支援団体YECのスウェーデンスタディツアーの報告書を参考にしています)

■スウェーデン直接民主党とは?

デモエックス(Demoex)は元々、バレントゥーナ市(ストックホルムの郊外)の政党として活動をしていましたが、 現在は「直接民主党」(Direktdemokratena 英名:Direct Democracy)として活動しています。

直接民主党を紹介した動画

インターネットを活用して、間接民主制と直接民主制を補完を目指し、 市民の直接的な政治運営を実現した、まさに「直接間接並存政治」主義の政党です。デモエックス(Demoex)は、Democracy Experiment(民主主義の実験)の略称だったそうで、実際にバレントゥーナ市で実験的(experiment)に、デモンストレーション(demonstration)していたのでそういう意味もあったみたいです。2002年に発足し、2003年にはバレントゥーナ市で実際に19歳の女子学生が出馬をし当選を果たしました。(今回のスウェーデンの国政選挙では国政政党を目指し出馬しましたが負けてしまいました)

■ネットを活用した「直接民主制」とは?

直接民主党には党員もいますが、従来の政党と異なるのは特定の「政策・イデオロギー」を持たないことです。

インターネット上の 「直接民主党」のウェブサイトに登録した会員たちが、特定の争点について議論した後、評決で 立場を決め、直接民主党の議員はその結果に忠実に従うのです。つまり議員は「伝達役」に徹するだけなのです。(これは家入さんもやろうとしていたことだと思います)そんなことを実際にどうやってやるのかと思うかもしれませんが、それを可能にしたのがVoteIT(ボウトイット)という、オンライン参加型会議のウェブプラットフォームです。実際に登録してデモ版を使ってみた様子がこんな感じ。(Google翻訳で日本語表示してみました)

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「デモ会議」 とは、これがデモンストレーションであることを意味しているだけですが、通常はここに会議の名前がくるようです。「オンライン」は現在参加していてオンラインの人を表示しており、「存在しない機能」とは、この会議の現在のアジェンダです。この場合、VoteITに存在していない機能は何ですか?(提案してください)的なことだと思います。その下の「提案」では議題に対する提案をブレストでき、「議論」は文字通り議題を掘り下げることができるようになっています。左サイドバーのアジェンダでは、現在進行形のアジェンダ、既に終了したアジェンダ、今後扱う予定のアジャンダが表示されています。

その他、アンケートや投票を実施することもできるらしく、会議の規模や形態(匿名可能にするかどうかなど)によって様々な設定を会議(ここではこのグループページ)のモデレーターがデザインすることができるのです。今までに 100 回以上の会議に利用されおり、10 人規模から 16,000 人規模の会 議に用いられています。実際に、スウェーデンの環境党が活用した際には、2000人が参加し、1万5千の提案が、議題として細分化され、さらに小グループで各々のテーマを検討したとのことです。

ネットを活用したメリットととして、時間や場所の制約がないこと、小規模でも効果的な議論ができること、があげられますが、一方でユーザーの前提として、ソフトが議論を進めてくれると思い込んでい るため社会的規範(ルールなど)を守った議論をするのが難しかったそうです。

そこで、あえてソフトを複雑化せず、シンプルに「賛 成」「反対」と「それに対する意見」のみのに絞ったのです。それによ りひとつのページに情報を集約し、パソコンやネットの操作が苦手な人でも、簡単に利用することを可能としたのです。まさに上記の画像内の、ウェブサイトのデザインを「参加型」「民主主義型」に、しかし構造を単純化することでユーザビリティを高め、会議をファシリテートすることができたのでしょう。まさにネット上のファシリテーターですね。

直接民主党はこのようにして、このプラットフォームを使って市民から意見を吸い上げて、政党の方針を作るという訳です。

■直接民主党の経緯

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インタビュー相手の直接民主党代表のペル氏

直接民主党の前身Domoexが創設されるきっかけになったのは、「なぜ高校 生は政治への関心が低いのか」を題材にした授業だったとのこと。市が学校に提案し自治体や学校などが出資をして実現した授業で、政治家や市の職員なども授業の見学に来ていました。 前半は、生徒たちにパソコンの前に座ってもらい、進行役の人が生徒たち に「街を改善するためにあなたは何をしたいか?」という問いかけをし、生徒たちはそ れを自由にネットに書き込むというものでした。生徒たちは匿名であるため、自由に意見を 書き込み、「交通状況をよくしたい」「学生が住めるアパートを作りたい」「街に若者の居場 所をつくりたい」など、様々な提案をしました。それらの提案から 20 個をピックアップし、優先順位をつくり、順位の高いものから議論をしました。最も高い順位にきたのは、「ユースセンター(青少年余暇活動施設)を作りたい」というものでした。その後、ユースセンターを作るという結論に生徒たち が至るまでにかかった時間は、たったの 15 分でした。

それを見ていた、ある政治家は生徒たちの作業を中断させ「こんなにも短時間のうちに、君たちは素 晴らしい意見が言えるじゃないか。それならば、私たちの政党に入り、一緒に活動をしないか」と 生徒に語りかけた。すると、生徒たちの中の一人が「政治はあまり面白いものではない」と言いました。

また、ある生徒は「政治に参加してもいいけれど、私たちは他にもや ることがたくさんあって忙しいのです。したがって、優先順位を高く持つことはできません」と言 い、政治家も納得して、ディスカッションは終わってしまいました。 後日、授業に参加した生徒たちに会って感想を聞いてみると、前半のパソコンを使 ったセッションはとても面白かったが、後半の政治家とのディスカッションはとてもつまらなかっ たと言っていたのです。

その話を聞いて、ペル(直接民主党代表)は、前半と後半のセッションの違いはいったいなんなの だろうかと考えました。 彼は、前半は政治について「書く(Written) ディベート」で、後半は政治について「話す(Oral) ディベート」であったと分析したのです。「話すディベート」は、一人が話していたらその話を聞いていなけれ ばいけないし時間がかかる。それに対して、「書くディベート」は、ひとつのテーマから様々 なトピックに派生させることができるので、多様な議論ができ、匿名であること から、質問もしやすい。また、議論の流れも可視化できるため、時間の短縮にもなる。そこで、ペ ル氏は、こんなにも「書くディベート」のほうが優れていることが明らかなのに、なぜ従来の政治はすべて「話すディベート」なのかということに疑問を持ちました。 そしてペル氏は、生徒たちに、「もし、私がインターネットを用いて特定のテーマについて議論 をし、その結果を政治に反映させるような政党をつくったら支持をしてくれるか」と聞くと、生徒 たちは支持すると答えたのです。それからペルの出身のバレントゥーナ市は人口 3 万程度の街であることからも考え、 インターネットを使った政党は可能だという結論になり、「直接民主党」の先駆けであるDemoexが、2002 年に誕生したのでした。

■理念:民主主義と透明性

VoteItでプログラマーとして所属するロビン氏は、改めて民主主義の重要性を次のように語りました。

「人々はいま、民主主義を恐れている。というのは、ヨーロッパで経済危機が訪れている中で、右翼の人達が、賛成をしている。彼らは、民主主義的な考え方をしていない。民主主義の質を高めるには、透明性の確保が必要であるが、ある特定の人達が情報を独占している。そこで、誰かが今社会で何が起きているのかを理解している必要がある。その方法の一つが、 ジャーナリストだった。ただ、スウェーデンのジャーナリズムも変遷してきていて、以前はジャーナリストがしっかりとスウェーデン政府を監視してきたが、現在は、景気があまりよくないこともあり、利益追求に目を向けすぎて、メディアがエンターテイメント化したことで、ジャーナリストの数はここ10年間で半減している。」

さらにその解決策について。

「そこで、それを解決するために行われている取り組みが、オンラインのプラットフォームを作り、ジャーナリストだけでなく、様々な分野の専門家や有識者が参加し、政府の行っていることに関して監視をするシステムを構築することなのだ。いまは公的機関への信頼が減ってしまっている。なぜなら、公的機関が何をしているのか、市民には何も見えない。そうしないために、インターネットを用いて、意思決定の段階から市民に参加してもらうのである。」

最近ではヴァイラルメディアが力をつけ、インターネットの様々なコンテンツがSNSを通じて、シェアされるようになりましたが、それは結局エンターテイメントとしてメディアを「消費」しているにすぎないのでしょう。さらにメディアも一方向的なものから双方向化、さらには誰でもソーシャルで発信できるようになり「市民化」していることも相まって、VoteItのようなプラットフォームが可能になり、参加と監視の両方の役割を担うことが可能になったのでしょう。この点については直接民主党代表のペルは海賊党の「液体民主主義」を引用して、その意義を強調していました。

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海賊党の思想: フリーダウンロードと液体民主主義

さらにペルは「透明性」についてこう語りました。

「『透明性』とは、政治家がどのような意思決定をしたのか、なぜその意思決定を下したのか、費用の内訳はどうなっているか、などが可視化できることだ。そうすることで、市民は監視をすることができる。ヒエラルキー下では、すべての情報を上から下へと流していくことは難しい。その意思決定に関して、政治家と市民との双方向のコミュニケーションがあることが透明性なのだ。」

直接民主党代表のペル(この鉢巻きはインタビューのときにわたしたお土産です)

「例えば、次のワールドカップはカタールで行われる。FIFA のフラッターという会長がいるが、彼は会長に選出される際の選挙でカタールから多くのお金をもらい、会長に再選された。そして、カタールがワールドカップの会場に選ばれた際にも多くのお金をカタールからもらっている。このように、政治には腐敗と汚職がつきものである。ウィキリークスが行っているように透明性を高めることをしなければ、世論は操作されてしまう。民主主義の基本的な価値観として、男女に限らずすべての人に同じように価値がある。また、人には平等の権利があり、その権利の一つが「情報に対する権利」である。私たちは、身分もバックグラウンドも全く異なるが、一人一票という平等の権利を有している。」

このように、直接民主党がVoteItを利用し、実際にネットを活用した「直接間接並存政治」を実現できたのは、ペルとロビンの民主主義への深い理解とそれを可能にしたツールの開発といっても過言ではないでしょう。国政政党にはまだなっていませんが、今の中で最もホットな団体のひとつです。

ぜひ、VoteItのプラットフォームを日本語化して、新しいメディア、ネット、民主主義についてまずは「書くディベート」始めてみませんか? (ゆる募)

(2014年10月6日「Tatsumaru Times」より転載)