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DELLの執行役員が、なぜ「ひとり情シス」の本を書いたのか? 約1000人との対話で明らかになったこと

中堅企業の驚くべきIT人材事情
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世界的なPCメーカー、デル株式会社 広域営業統括本部の同社上席執行役員の清水博さんによるブログが連載中です。第5弾は、企業のIT戦略立案や管理をひとりで担う「ひとり情シス」の驚くべき状況と、清水さんが書籍『ひとり情シス』を執筆するに至った経緯をご紹介します。

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「ひとり情シス」とは何だ?

「ひとり情シス」という言葉を、皆さんは聞いたことがありますでしょうか?

おひとりさまブームは、各々がひとりの時間を大切にし、自立した人間として趣味や旅行を楽しむというもので、ポジティブな印象です。しかし、「ひとり」と言うと、やはりもの淋しいイメージもあると思います。また、「情シス」とは「情報システム部」の短縮形で、企業のIT戦略立案や管理をする部門のことです。その部門丸ごとの機能を「ひとり」ですべてやってしまう状態が、「ひとり情シス」と言われています。

DELLは、お客様とダイレクトにコミュニケーションをとることで、ビジネスを躍進させてきました。ベストセラーになった創業者のマイケル・デルの著書『デルの革命 - 「ダイレクト」戦略で産業を変える』にも、「顧客が提供してくれたアイディアやフィードバックが、たえずインスピレーションと教訓を与えてくれた」と記されています。マイケル・デルは、お客様に適した提案をするために、お客様をセグメンテーションし、セグメントごとに異なる営業戦略を立案しました。特に創業当初から、大企業と中小企業では異なるニーズを抱えていると考え、中堅企業のみのお客様を担当する独立した営業部隊を置いていました。

そのDELLの伝統とDNAを現在も脈々と受け継ぐ部門が、私の担当する広域営業統括本部です。日本全国のお客様で、従業員が100名から1000名未満までの企業を担当する部門です。創業当初からユニークな中堅企業のニーズに対応してきたことは、「ひとり情シス」に代表されるIT人材不足のお客様に前向きに向き合ってきた歴史と言えます。

DELL独自調査で明らかになった「ひとり情シス」の状況

私たちのセミナー後の懇親会などで、お客様同志が情報交換をしていると、様々な話題が出てきます。IT予算の増減や、IT人材の採用や給与など、普段は聞けないような話です。そのような状況であったので、お客様から「DELLなら、お客様と直接お話することができるので、一度きちんと調査をしてほしい」との要望が多く寄せられました。複数社の動向を比較すると、会社の経営層に進言しやすくなるためです。要望を受け、DELLが独自に、「中堅企業IT投資動向調査」を実施しました。その結果、とても興味深いデータが集まったのですが、その中でも特に、IT人材不足が想像以上に悪化していることがわかりました。

この調査結果によると、情報システム要員がたった1人だけの企業(いわゆる「ひとり情シス」)が全体の14%を占め、さらに専任担当者が1人もいない企業が13%に上っており、双方を合わせると27%を占めました。100名以下の中小企業は、ほとんど情報システム要員がいません。409万8000社ある100名以下の中小企業の平均従業員数は10.4人ですので、IT管理も目が届きやすいものです。しかし、中堅企業の最も多い100名から300名の平均従業員数は163.6人です。これをひとりで管理するということは、エンドユーザーから絶え間なく問い合わせの電話がかかっている姿を想像されるとよいでしょう。

SNSで広がる「ひとり情シス」の叫び

私たちが調査結果をもとに記者会見したところ、その直後からメディア各社にニュースを配信していただけました。情報システムの人数というのは、秘匿性が高いデータなので、なかなか把握できなかった領域だったこともあると思います。また、特徴的だったのは、メディア配信とほぼ同時に、SNSでさまざまな「ひとり情シス」の叫びが聞かれたことです。そこには、「ひとり情シス」の方々が、社内のエンドユーザーからの厳しい環境におかれている状況や、理不尽な要求をされていることが書き込まれていました。

「なんかネットワークが遅いんだけど、今夜中に見といて!」

「エクセルがよく固まるんだけど、情シスなら直せるよね?」

「プリンター紙詰まりしてるよ!」

「ちょっとこのスマホ(個人用)について教えてくれる?」

「休み中にすまないけど、インターネットができなくなった。なんとかならない?」

など、「ひとり情シス」にとって、お門違いの問い合わせが寄せられている様子が伝えられました。そして、不満も爆発し、

「何度教えてもできないし......」

「これでは、便利に使われて評価されないおじさんだ」

「家族のPCトラブルまで連絡してくるからやっていられないわ!」

「パソコン使えるだけで、ついでに情シスやらされてる人もいる」

このような叫びが、一夜にして書き込まれ、数日間、この叫びは止まりませんでした。

全国の1000人近い「ひとり情シス」と対話

私はIT業界でセールスとマーケティング畑をちょうど半分ずつ経験しており、セールス時代は、横浜市内の中堅企業、海外勤務の時は大手企業の現地法人など、多くの「ひとり情シス」の方々と接してきました。しかし、この調査結果を受けて、もう一度多くの「ひと情シス」の方にお会いして実情を確認することにしました。全国津々浦々の47都道府県で、セミナーを開催して、1000人近い「ひとり情シス」と対話を繰り返しました。

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お会いするとさまざまなタイプ、むしろまったく異なるタイプがいらっしゃることがわかりました。突然IT担当者を任命された方、 ITの知識がまったくない方、 IT一筋40年以上担当している方、経営参謀、次期社長候補などバックグラウンドと異なるスキルセットの方がいました。実際に集まって頂き、様々な意見交換や共通の課題などを討議する座談会も各地で開催しています。しかし、ひとり情シスを公にすることは、会社上層部から難色を示すこともあり、写真撮影時には覆面を被って頂きました。実態は、ホンモノのひとり情シスの方たちです。

同人誌を書くに至った理由

さまざまなタイプの「ひとり情シス」はいらっしゃいますが、全ての方に共通していることは、「時間がない」ということです。そのため、勉強会やコミュニティ活動、外部セミナーなどに出席することが難しいことがあります。活躍している「ひとり情シス」の方の印象に残る言葉があります。

「社内でトラブルなど発生した場合でも、インターネット上にある情報で85%対応できます。しかし、残り15%はできません。人に会うとか、セミナーで聴講するなどアナログ活動を通じて得た情報がとても重要なのです」。

私たちが全国で開催しているセミナーの懇親会では、お客様同志が直面している課題をぶつけ合って、活発な話し合いをしている姿をお見受けします。お客様によっては、昼間のセミナーの講義より、夜の懇親会に生きた情報があるとおっしゃられます。しかし、すべての「ひとり情シス」の方が参加できるわけではありません。セミナー終了直後に、小走りで会社に戻られる方も多いです。

セミナーに参加できないお客様から、「資料を送ってください」という依頼があるのですが、プレゼンテーションのスライド資料だけでは、その行間に説明したこともお伝えできません。また、懇親会でお客様とお話したおもしろいエピソードをもっと皆さんにお伝えしたいと思いました。そのため、おもしろい話や役に立つエピソードが得られると、毎日ちょっとずつ自分自身で書き溜めていきました。そして、イベントで配布する小冊子を作るに至りました。これは、出版社による出版でもなく、自費出版でもなく、会社近くの24時間営業のキンコーズで夜中に印刷してもらったものです。

同人誌を発表し、状況が一変。書籍の発刊へ

そうしたところ、メディアでも大々的に取り上げていただきました。

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Dell EMCが作った同人誌「ひとり情シス」を、ホンモノのひとり情シスに見てもらった件(ITmedia エンタープライズ)http://rd.itmedia.jp/1Ffv
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正直、この時に初めて同人誌の言葉の意味を知ったのですが、苦労して書いたことが報われた気がしました。実は、同人誌といえども、出すことを最初は躊躇していました。自分の意見をさらけ出すような気持ちがして、「稚拙な考えではないかな?」「勉強不足ではないかな?」など、自分の知識や知性を人目に出すことへの不安でした。

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しかし、同人誌を出した後、状況は一変しました。今までの自身のネットワークとは異なる方たちとお話しする機会が増えて、景色が変わったようでした。中には、定年退職を控えた経験豊富な企業内情報システム担当者の方がお声掛け下さり、「もし困っているひとり情シスの方がいらっしゃいましたら、定年後にお手伝いさせていただきたい」とか、プログラミングできる「ひとり情シス」の方が「内製したシステムがあるので、活用してもらいたい」など、予想外の言葉が多く、心温かくなりました。

ご自身が昔に苦労した時に、経験豊かな人に教わって成長したことへの恩返しの意味もあるとのことです。更に、想像以上に直面している難しい課題や、「ひとり情シス」を取り巻くシビアな状況などもわかりました。同人誌を作る時点で、「ひとり情シス」を詳しく知っているとの自負があったのですが、まだまだインサイトに入れていなかったことを痛感しました。そして、同人誌の一部を修正し、新たに知り得た情報を加えて、東洋経済出版社から書籍を発刊することになりました。今は、この本をきっかけにして、更なる「ひとり情シス」との対話が進むことに胸を高鳴らせています。 

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東洋経済新報社『ひとり情シス』清水博著https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4492961518/hnzk-22
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デル株式会社 上席執行役員 広域営業統括本部長 清水 博

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横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス、本社出向)においてセールス&マーケティング業務に携わり、アジア太平洋本部のダイレクターを歴任する。2015年、デルに入社。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手がけた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。現在、従業員100名以上1000名未満までの大企業、中堅企業をターゲットにしたビジネス活動を統括している。自部門がグローバルナンバーワン部門として表彰され、アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。産学連携活動とし、近畿大学と共同のCIO養成講座を主宰する。著書に「ひとり情シス」(東洋経済新報社)。AmazonのIT・情報社会のカテゴリーでベストセラー。早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。