デフォルト危機の中、ギリシャ国民は「ユーロ圏離脱、自国通貨ドラクマ回帰」へと傾く

ギリシャの首都アテネにある昔ながらのカフェで、ミュージシャンのステリオス・マラガキスさん(55)は、大詰めを迎えている自国債務危機の解決策について、通貨ユーロを捨てることだと語った。
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Reuters

[アテネ 24日 ロイター] - ギリシャの首都アテネにある昔ながらのカフェで、ミュージシャンのステリオス・マラガキスさん(55)は、大詰めを迎えている自国債務危機の解決策について、通貨ユーロを捨てることだと語った。

「ドラクマに戻るべきだ。ドラクマしかギリシャを救う道はない」と、グラスから酒を飲みながら話した。

こうした意見はまだ少数派にとどまっている。しかし、債権団がギリシャにより厳しい改革案を求めるなか、国民1100万人の間でドラクマ回帰という考えは魅力を増しつつある。

世論調査機関アルコのコスタス・パナゴポロス氏によると、ユーロ圏離脱を支持すると答えた人の割合は、過去数年は20%台で推移していたが、ここ数週間で30%に上昇。「まだまだ少数派だが、増えつつある」と同氏は語った。

その背景には、終わりがないように見える支援協議や緊縮策だけでなく、一部の政治家がユーロ離脱を公然と語っていることがあるという。

ドラクマは世界で最も古い通貨単位の1つで、「つかむ」という意味の言葉に由来している。ギリシャは2002年にユーロを導入した。

<出直し>

単一通貨ユーロの導入はギリシャに堅固な成長と欧州への強い支持をもたらしたが、2008年後半にリセッション(景気後退)入りしてからは経済が約25%縮小した。4人に1人以上が失業状態となり、ユーロ圏から離脱するという考えはもはやタブーではなくなった。

ギリシャ政府は、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)に提示した改革案で、増税や年金保険料の増額、早期退職の制限などを掲げている。

アテネに住むコスタス・グラメノスさん(65)は、一段の緊縮策には苦い顔を見せる。「ギリシャは破綻国家だ。ならば行くべきところに行こうじゃないか。ドラクマでやり直すんだ」と述べた。

チプラス首相は、ギリシャはユーロ圏にとどまるべきであり、「グレグジット(ユーロ圏離脱)」は選択肢ではないとしているが、首相が率いる急進左派連合(SYRIZA)の一部政治家は、単一通貨から離れた方がギリシャの状態は良くなると考えている。

ユーロ圏の政治家たちも、この可能性について初めてオープンに議論している。

他の2つのギリシャ世論調査機関が過去2週間に行った調査でも、ユーロへの支持率は著しく低下している。GPOが今月に発表した調査では、「何としてもユーロに残留したいか」との質問に「イエス」と答えた人は69.7%で、1月の80.3%から大幅に低下した。

「欧州は大多数のギリシャ人からは必要とみられているが、現在は一部の人たちから敵だと思われている」と、前述アルコのパナゴポロス氏は指摘。「こうした状況を回復するには大変な努力が必要だろう。この先ある時点で、ユーロへの支持率が過去の水準まで戻るかどうか、私には分からない」と語った。

ATMから現金を引き出そうと列に並んでいたアテネ在住のバシリスさんは次のように語った。

「5年も打ちのめされてきた。もうこれ以上、怖いことなどない。自分たちの通貨であるドラクマに戻った方がいいと思う」

(Gina Kalovyrna記者、Ingrid Melander記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)