一流ブランドのファッション広告は、白人モデルだけのものじゃない。
そんな思いを力強く主張するフォトシリーズを、西アフリカ・リベリア共和国生まれで、ロサンゼルスを拠点に活動する黒人モデルが発表した。
シリーズのタイトルは「ブラック・ミラー（Black Mirror）」。黒人モデルのデデー・ハワードが、「ダイバーシティ（多様性）の可能性を世間に知ってほしい」というコンセプトのもと企画した。
ハワードは、ファッション界を代表する一流ブランドの広告写真と全く同じ構図、同じ衣装で再撮影。その写真を元の白人モデルの写真と並べて対照させた。
VICTORIA SECRET/ RAFFAEL DICKREUTER
キャンディス・スワンポールとデデー・ハワード
黒人モデルのハワードが、「ルイ・ヴィトン」のミシェル・ウィリアムズや「カルバンクライン」のケンダル・ジェンナー、ランジェリーブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」のキャンディス・スワンポールといった名だたる白人モデルたちと入れ替わっているように見える。
GUESS/ RAFFAEL DICKREUTER
ジジ・ハディッドとデデー・ハワード
ハフィントンポストUS版の取材によると、完成まで3カ月かかったこのプロジェクトを立ち上げた狙いは、「ダイバーシティがもたらす可能性を世間に知ってもらうこと」だという。
11月30日にフランス・パリで開催された「ヴィクトリアズ・シークレット」のファッションショーでは、黒人モデルのジャスミン・トゥークスが、通称「億ブラ」と呼ばれる豪華絢爛なファンタジーブラのモデルを務めた。
ヴィクトリアズ・シークレットのランウェイを歩くジャスミン・トゥークス（2016年11月30日撮影）
しかし、21年間にわたるショーの歴史の中で、白人以外の有色人種のモデルがブランドの世界観を象徴するファンタジーブラのモデルに抜擢されたのは、今回でわずか3度目。
このような格差は、ファッション業界にはびこる悪い傾向を反映している。多様性を歓迎する動きはファッション業界の一部で芽生えつつも、他業種と比べると格差は驚くほど大きい。特に、有名なファッションブランドの広告には多様性が欠けているという。
そうしたファッション業界の現実に直面してきたハワードは、自ら行動を起こそうと決意し、このプロジェクトを立ち上げた。
VIVARA/ RAFFAEL DICKREUTER
ジゼル・ブンチェンとデデー・ハワード
ハワードは「ブラック・ミラー」のウェブサイトで、通常のメディアでの取り上げられ方よりも、もっとポジティブに黒人という自分の人種を表現したかった、と説明している。
「メディアは、アカデミー賞のような大きなイベントで黒人のハリウッドスターたちが過小評価されていることを取り上げたり、黒人が警察の標的になっているといったニュースを大見出しで載せたりする。私は、自分の人種に対してポジティブなイメージを与えて、人を元気づけるようなことがしたかった」
ハワードはそう語った。
プロジェクトの写真を撮影するにあたって、ショックを受けたことがあるという。写真家のラファエル・ディクリューターとファッションブランドの広告を調査した結果、「黒人モデルを全く起用していないか、ほぼそれに等しい」ブランドが大多数を占めていた。
ハワード自身、ファッション業界の多様性を認めない姿勢に苦労した経験がある。モデル事務所から、「うちは黒人モデルなら間に合ってます」と言われて契約を断られたのだ。この体験は「異常な」ものだと思い、プロジェクトを通して現代社会のリアルな一面を強調したいと考えた。
「現代社会はグローバル化が進んで、たくさんの異人種間のカップルからハーフの子供たちが生まれている。なぜ一流ブランドは多様性を受け入れず、現実を見せようとしないのでしょう？」
DOLCE GABBANA/ RAFFAEL DICKREUTER
ビアンカ・バルティとデデー・ハワード
ハワードは、このプロジェクトに対する評価に直面する心の準備はまだできていないと話した。一方で、ニューヨークのデイリー・ニュース紙やYahoo!などのメディアでこのプロジェクトは大きく取り上げられ、SNSには好意的な反応がたくさん寄せられている。
ハワードは「ひとつの社会運動を引き起こしたみたい」と話し、このプロジェクトがもたらす影響について、明るい展望を見せた。
プロジェクトの作品は、ハワードのウェブサイト「Secret of DD」で全て閲覧することができる。
CALVIN KLEIN/RAFFAEL DICKREUTER
ケンダル・ジェンナーとデデー・ハワード
ハフィントンポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。
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