死亡消費税とは何か、伊藤元重東京大学教授が持論を展開

東京大学の伊藤元重教授が、社会保障制度改革国民会議で提唱した「死亡消費税」が話題になっているが、どのようなものだろうか?
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東京大学の伊藤元重教授が、社会保障制度改革国民会議で提唱した「死亡消費税」が話題になっている。

「死亡消費税」とは、簡単にいえば、「死亡後に、消費税を払ってもらおう」という考え方である。伊藤元重教授は、次のように説明する。

「相続税と誤解していただきたくないんですけれど、亡くなられた段階で消費税をいただくというもの。

60歳で停年されて、85歳でお亡くなりになられるまでに、一生懸命、消費して、日本の景気に貢献された方は、消費税を払ってお亡くなりになっておられる。

しかし、60歳から85歳まで、お使いにならないでひたすら溜め込んだ方は、消費税を払わないでお亡くなりになられて、しかもそれが、相当な金額にならない限りは、遺産相続の対象にならない。ですから、生前にお支払いにならなかった消費税を、少しいただく。それを、後期高齢者の方の医療費に使わせていただくというものです。」

(「第13回社会保障制度改革国民会議」より。 2013/06/03)

現在の日本では、社会保障にかかる費用が大きくなっており、政府広報によると、日本における社会保障費は、約110兆円とされており、高齢化社会に毎年1兆円規模で増えていると言われている。国民が負担する社会保険料では賄うことができず、税金が投入されている。しかし、国の財源全体でみても足りないため、借金をして社会保障に充てているという状態だ。現在のような状態を続けていると、国の財政は借金の返済を返すために使われるだけになってしまうと懸念されている。

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この状態の解決方法を議論するために開かれているのが社会保障制度改革国民会議で、政治家や官僚だけでなく民間人も参加して、議論を重ねている。伊藤元重教授は、安倍政権において、経済運営や財政運営の基本方針、予算編成の方針などを議論する「経済財政諮問会議」の一員でもあり、この社会保障制度改革国民会議には、財政の視点から言及を行なっている。

死亡消費税を社会保障制度改革国民会議で紹介した6月3日、伊藤元重教授は「経済財政の視点からの社会保障改革」という資料を使ってプレゼンテーションを行った。

その中で、日本はGDPで見た時に、社会保障以外のところに財源を使っている比率が、他のOECD諸国と比べて低いという点を上げ、今の貴重な財政資金が、将来活躍するであろう若者のための「投資」に使われているわけではなく、社会保障という名の「消費」に使っている割合が非常に大きいという点を指摘している。

非社会保障費の削減・歳出抑制は限界であるだけでなく、教育などへの歳出をここまで抑制したことへの批判も強い。マクロ的に見れば、日本は貴重な財政資源の多くを社会保障費という「現在の消費」のために使っている。教育、若者の雇用支援、子育て支援など「将来への投資」に十分な財政資金を使わない国であって、日本の将来は大丈夫なのだろうか。

(第13回社会保障制度改革国民会議 資料2 伊藤元重氏「経済財政の視点からの社会保障改革」より。 2013/06/03)

財源をもう少し、若者向けにも使って良いのではないかという意見である。伊藤元重教授の考えについて、霞ヶ関関係者の話として、日刊ゲンダイは下記のように報じている。

「急速な少子化の下、膨らみ続ける高齢者医療費は〈高齢者自身が一部負担すべき〉が、伊藤氏の持論です。しかし、年金所得からの天引きを増やせば、高齢者の不満は募る。そこで高齢者の保有資産に税をかけるという発想で、生前ではなく、死亡時に税を課す。死ぬと同時に遺産から消費税と同じ程度の比率で一律に税を徴収する。だから、〈死亡消費税〉なのです」(霞が関関係者)

(日刊ゲンダイ「政府が検討 「死亡消費税」って何だ?」より。2013/6/7)

伊藤元重教授は、自著の「経済学で読み解く これからの日本と世界」において、次のようにも論じている。

高齢者は老後の生活のために貯蓄をしてきたのだが、死亡した時点で、まだ多くの資産を残している人が多いと聞く。そうした人たちにまで贅沢に年金や医療費の補助をしていたのでは、財源余力は残らないだろう。

(伊藤元重著「経済学で読み解く これからの日本と世界」より。)

伊藤元重教授は、75歳以上になると医療費が増えるとも指摘している。平成22年度の人口一人当たり国民医療費をみると、65歳未満の男性は17万1600円、女性は16万7300円、65歳以上の男性は74万8700円、女性は66万8500円となっている。さらに、75歳以上では、男性は95万4100円、女性は83万2600円と、かなりの額がかかっている。

消費税は、社会保障費の不足を賄うために増税されるが、人口が多いとされる団塊世代は、まだ75歳を迎えていない。伊藤元重教授は、団塊の世代が75歳を迎えるこれから10年後のために、もっと大胆に踏み込んだ議論をしないといけないと話す。

増える社会保障の費用を、若い世代ではなく本人も負担すればよいのではないか。ただし、死亡後で構わないので。

こんな考えからの死亡消費税、団塊ジュニア世代としては賛成すべきだろうか。それとも親の財産は、相続のためにとっておきたいだろうか。

皆さんは、どう考えますか?

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