失踪して「死んだ」と認定されたルーマニア人男性が、戻ってきたのに裁判所に「生きている」と認めてもらえなかったという信じがたいニュースが起きた。
ルーマニアの裁判所は、「(死亡認定の)取り消し期限を2年を過ぎている」として要求を認めず、男性は「死んだ人」として生き続ける羽目になってしまった。
生きているのに、死んだことにされてはたまらない。日本で同じようなケースが起きたら、どうなるのだろうか。
民法は『失踪宣告』
日本の場合は、行方不明となり、生死が分からない人を「死亡した」とみなす『失踪宣告』という民法上の制度がある。裁判所のホームページによると、対象となるのは次の2つのケースだ。
・行方不明になり、7年以上、生死が分からないとき(普通失踪)
・戦争や船の沈没、震災など、死亡の危険性が高い危難に遭遇し、その後1年以上、生死が分からないとき(危難失踪)
配偶者や親族、保険金受取人などの「利害関係人」から請求があれば、家庭裁判所は失踪宣告ができる。
宣告を受けた人は法律上「死亡した」とみなされ、結婚していれば婚姻関係が解消されるほか、その人の相続も始まる。
では、失踪宣告を受けて「死んだ」人が、実は生きていたらどうなるのか。
本人や家族が家裁に申し立て、本人が生きていると証明されれば、「死亡」が取り消される。(民法32条:失踪の宣告の取消し)。
ルーマニアのケースのように、取り消しができる期限のようなものはあるのか。
最高裁判所は、ハフポスト日本版の取材に「確認する限り、法文規定では特段記載は見受けられない」と話しており、「期限がすぎている」として取り消してもらえないことはなさそうだ。
戸籍法は『認定死亡』
また『失踪宣告』とは別に、行方不明者を「死亡した」とみなす『認定死亡』と呼ばれる戸籍法上(第89条)の制度もある。
法務省によると、災害や航空機・水難事故などに遭い、死亡したことが確実だが遺体が発見されない場合に、現場を調べた警察や海上保安庁などが自治体に報告し、「死亡」と認定する。
災害や事故から1年経っていなくても、法律・戸籍上「死んだ」ことになる。
その後、生きていると確認された場合は、「死亡」の報告をした警察などが自治体に「取り消し」を再報告する。 取り消しができる期限について、法務省の担当者は「法律上の記載はない」と説明している。
■「死亡」覆らないケース、アメリカでも
失踪した人の「死亡」が覆らないケースは、ルーマニアだけでなくアメリカでも過去に起きていた。
CNNによると、1980年代に失踪したオハイオ州の男性が、死亡宣告の取り消しを求めた訴訟で、裁判所が2013年に男性の要求を認めない決定を下している。
オハイオ州法では、死亡宣告後3年を経過した場合、宣告を覆すことはできないと定めているという。
こんな思いもよらない事態に巻き込まれないよう、もし長年家族と連絡を取っていなかったら、久しぶりに「元気だよ」と連絡してみたらいいかもしれませんね。