死海文書とは何か?「恐怖の洞窟」で60年ぶりに紙片を発見【動画】

人気アニメ『エヴァンゲリオン』シリーズの題材にもなっています。
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新たに発見された死海文書(イスラエル考古学庁のFacebookより)
Facebook/AntiquitiesIL

イスラエル考古学庁は3月16日、20世紀最大の考古学的発見と言われた「死海文書」の新たな断片が約60年ぶりに発見されたと発表した。現地紙ハアレツなどが報じた。紀元前1世紀のものとみられている。

同庁の公式Facebookで発掘の模様を動画で公開した。

【イスラエル考古学庁の動画】死海文書のほか、ミイラ化した遺体のシーンが含まれているので注意してください。

■死海文書とは?

死海文書はパレスチナ地域の塩湖「死海」周辺の洞窟などで見つかっている古文書だ。

1946~47年に現地の遊牧民がクムラン丘陵の洞窟の中で、瓶に入った7つの古い写本を見つけたのが最初だったと『死海写本「最古の聖書」を読む』(講談社学術文庫)は書いている。

約2000年前の文書と判明し、旧約聖書の最も古い時代の写本と分かったことで世界的なブームを巻き起こした。

世界大百科事典第2版の解説によると「死海文書」は、狭義にはクムランの11の洞穴から出た「クムラン文書」だけを指す。ただし一般的にはナハル・ヘベルなど死海周辺のより広い地域で、羊皮・パピルス等の文書の総称と呼ばれることが多い。

大部分は断片だが、その数は700点あまりに上る。前3~後1世紀のものと推定され、大半がヘブライ語・アラム語で書かれたユダヤ教文書だが、ナバテア語やギリシア語の法律文書・手紙も含まれるという。

死海文書を記したのは、ユダヤ教エッセネ派のクムラン教団と見られている。「死海文書」の日本語翻訳書を編集した中川和夫さんによると、イエスに関する直接の記述はないが、キリスト教と共通する部分も多くみられると「好書好日」のインタビューで述べている。

「死海文書にある終末論、『光の子らと闇の子らとの戦い』という二元論的な発想、後の時代の出来事がすでに旧約聖書で預言されていたとする解釈など、キリスト教と共通する部分も多くあります」

死海文書はサブカルチャーで取り上げられることも多く、人気アニメ『エヴァンゲリオン』シリーズでも登場したほか、月刊「ムー」が人類破滅を予言しているなどと取り上げていた。

■「恐怖の洞窟」で新発見

ハアレツなどによると、イスラエル考古学庁は盗掘から文化財を守るために、2017年から発掘調査を進めていた。

今回、新たな死海文書が見つかったのは、死海西岸のユダヤ砂漠。涸れた川「ナハル・ヘベル」の上流だ。崖の上からロープで約80メートル降りないとたどりつけない「恐怖の洞窟」の中にあったという。この洞窟の名前は、1950年に約40人の骨格が見つかったことに由来している。

今回見つかった紙片は、ギリシャ語で書かれていたが、神「ヤハウェ」の名前は古代ヘブライ語だった。旧約聖書の「ゼカリヤ書」「ナホム書」の一節などが記されていたという。今回の調査で、ミイラ化した6000年前の子どもの遺体も見つかっている。

エルサレムポストによると、イスラエル考古学庁の死海文書調査チームのOren Ableman博士は次のように語ったという。

「さまざまな大きさの紙片が80個以上見つかっており、そのうちのいくつかは文章を含んでいました。文書の年代は、紀元前1世紀の終わりのものでした。洞窟に運ばれたときには、文書が書かれてから100年は経過していたようです」