空に雲がひとつもない−−。
そんな理由だけで、ドライブに行きたくなる朝がある。
レンタカーを借りるか。いや、そういえば......手にしたスマホで検索画面を開く。
「dカーシェア、だったよな」
レンタカーより気軽だし、自分じゃ買えない高級車に乗れるし。20〜30代にもオススメだって、新しいモノ好きの友人が言っていた。
久々の休日。天気は最高。
なんだか思いつきで行動をしたい気分だ。
スマホでカンタンに登録。手軽なのに、安心。そのワケは?
dカーシェアのアプリを起動したら、指示に従って操作をするだけ。必要項目を入力し、免許証の写真を撮って送信。驚くほど簡単に登録できた。
きちんとdカーシェアによる審査も入るから、確認されるドライバーとしても安心できる。もちろん、1日自動車保険への加入もアプリ上でできる。
利用の流れとか、レンタカーとの違いとか。初心者が疑問に思うところを細かくカバーしてくれている。
レンタカーを借りるときは、免許証のコピーを取られたり、手書きで書類を書いたり......その煩雑さに比べれば、こうしてパジャマ姿で、スマホひとつで登録できてしまうのだから、格段の手軽さだ。
どんな車があるのか、家の近くを指定して検索できるし、画面も見やすい。誰のどんな車が登録されているのか、一目瞭然だ。
ベンツのSLクラスをシェアしているオーナーさんを見つけた。「やっべー」と、思わず声が漏れる。やっぱり、純粋にカッコいい。レンタカーでは、こんな高級車を運転する機会はまずない。
少し緊張するけれど、チャットで挨拶を投げかけてみた。
オーナーのussssiさんからは、すぐに返事がきた。想像していたよりずっと気さくで、一気に緊張がほどけていく。単純かもしれないけれど、電話より気軽にやりとりができるチャット機能の恩恵はデカい。
初めて利用する旨を伝えると、丁寧に返信をしてくれた。その流れで、鍵の受け渡しについて指定をしてもらう。ussssiさんの慣れたやりとりのおかげか、気持ち面でのハードルがさらに下がる。
鍵の受け渡しで、オーナーと初対面。緊張するかと思いきや...
指定された天王洲に到着すると、オーナーのussssiさんこと、牛嶋さんが現れた。親近感のある笑顔で「寒いですね」と呼びかけられ、ホッとする。年もそう変わらなそうだ。
「疑問に思うことがあればなんでも言ってください」
オーナーとしてマイカーシェアを経験してきたからこそ、お互いに利用者が注意すべき点をしっかり把握しているようだ。
まずはお互いの運転免許証と車体の傷などを、牛嶋さんと一緒にチェックした。
「車高も調整できますし、ボタンを押せばオープンカーになります。駐車の際にこすってしまった方がいたので、気をつけてください」
仕事柄、細かいところが気になるタイプだけれど、車内も綺麗でゴミひとつなく、匂いもしない。
車の基本操作から、オススメのドライブコースまで。雑談を交わしているうちにいくつか共通点も見つかり、まるで前から友人だったかのような気分になる。この身近さは、"シェア"だからこそ感じられるのかもしれない。
地元の横浜方面へ。今日の景色は、いつもと違って見える。
乗った瞬間に、違いがわかった。滑らかなシートの感触、足元の開放感。
軽く踏み込んだだけで、身体中に加速を感じる。
昔からドライブは好きだったけれど、こんなにいい車で首都高を走ったのは初めてだ。
いつもより大きめのBGMに合わせて、スピードを上げる。
雲の切れ間から光が差し込む。視界が開けていく。
最初は緊張していたけれど、乗り慣れてくると自分の車のように感じ始めた。
レンタカーや実家の車では体験できない、贅沢なひとり時間。
「自分を見つめ直す」なんて大仰なことは言わないけれど、こういう休日は必要だ。
今年で社会人3年目。仕事は忙しいけれどやりがいを感じる。30歳までに目標が明確化されてきて、自分なりの方法で課題にチャレンジできるようになってきた。ロールモデルとなる先輩もいる。
「最後は俺がいるから、お前は好きなようにやれ」——迷っていたときにかけられた言葉が忘れられない。いつか自分も言えるだろうか。
夕暮れが近づいてきた。今日の横浜は、なんだかいつもと違って見える。
予想外の渋滞。チャットでこまめに連絡を取り合う。
高速に乗った途端、嫌な予感が的中した。渋滞が始まっている。
いつもだったらイライラするかもしれないけれど、今日はなんだか笑えてきた。
なんて、悠長なことを言っている場合じゃない。大幅に遅れることはないが、早めに牛嶋さんに連絡しておいたほうがいいだろう。
サービスエリアに入り、チャットで牛嶋さんに連絡をする。すぐに返事が来て、15分前後の遅れならば問題ないと言ってもらえた。時間が前後したことで返却場所も当初から少し離れた場所となったが、住所もすぐに送ってくれた。何から何までフォローしてくれて、本当にありがたい。
そういえば牛嶋さんは、マイカーシェアのドライバーと仲良くなって飲みに行ったことがあると言っていた。なんだか納得できる。とても魅力的な人だし、車にも詳しいから、いろいろと話を聞いてみたいと思う。
チャットで連絡を取ったので、焦ることなく帰ってくることができた。小さなことかもしれないけれど、すべてが安全性につながっているのだ。
返却場所に到着すると、朝と変わらない様子でスラリと立っている牛嶋さんを見つけた。
鍵を受け渡し、ドライブコースや食べたものなど、他愛ない会話をしながら、車に傷はないか二人で一緒に確認する。
「今度はぜひ、横須賀港から車のまま東京湾フェリーに乗って、千葉の金谷港まで行ってみてください。美味しい浜焼きが食べられますよ」
最後の最後まで優しくて気さくで、爽やかな笑顔で......おかげで充実した休日が過ごせたと、何度もお礼を伝えた。
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久々の休日に、一人で高級車に乗ってドライブをする。それだけでも十分楽しかったけれど、最終的に印象に残ったのは、車のオーナーである牛嶋さんの人柄だ。
「この人の車を利用できて良かった」と安堵とともに終えられたドライブは、何物にも代え難い貴重な体験となった。
それに加え、登録の手軽さと、安全性も挙げられる。全てが備わり絶妙なバランスで"マイカーシェア"が成立していると知った。
また牛嶋さんの車を使用して、今度はオススメされたコースをドライブしてみよう。気になる彼女を誘って......。
※画像はすべてイメージです。