「イスラム国」への参加阻止するヨーロッパ、国内の攻撃を懸念する声も

過激派組織「イスラム国」の複数の戦闘員が明らかにしたところによると、欧州各国が渡航制限を強化しているため、同組織への参加を志願する欧州出身者の流入が断たれているという。
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ロイター

[ベイルート 20日 ロイター] - 過激派組織「イスラム国」の複数の戦闘員が明らかにしたところによると、欧州各国が渡航制限を強化しているため、同組織への参加を志願する欧州出身者の流入が断たれているという。

ただ、ロイターが接触したシリアとイラクのイスラム国戦闘員は、欧州出身者は戦力全体のほんの一部にすぎないため、戦場での影響は限定的だとしている。

シリアとイラクで戦ったというイスラム国戦闘員の1人はインターネットを通じてロイターに対し、「現在、(外国人)戦闘員の大半は、タジキスタンやウズベキスタンといったアジアの国々から来ている。彼らは勇ましい」と語った。

また、欧州が中東への渡航制限を設けることで、逆に自国で聖戦士になりたい個人による攻撃を招いている可能性を指摘する声も聞かれる。

欧州各国は、ISISやISILとも呼ばれるイスラム国に自国民が流入するのを阻止すべく懸命に取り組んでいる。

イスラム国は欧州を含む世界中から多くの志願者を集めてきたと自負する一方、西側諸国は欧州出身のイスラム国戦闘員が帰国して自国で攻撃を行う可能性を懸念している。

昨年公開された英米の人質が処刑されたとみられるビデオ映像には、英国なまりの英語を話すイスラム国の男が登場し、欧州出身のイスラム国戦闘員の存在が西側で特に注目を集めた。欧州各国はイスラム国への勧誘者を取り締まっており、一部の国では志願者から渡航文書の押収を許可する法案が成立している。

イスラム国支配地域に住み、同組織の支持者だというシリア人の1人は、このような措置はイスラム国の重大さが認識されている証しだと話す。「こうした国々は当初、われわれを軽視していた。自国から戦闘員が渡ってもそこで死ぬだろうと。だが、彼らが訓練を受け、友人や親戚に参加を呼びかけるとは予想していなかった」

イスラム国はイラクとシリアの各地で戦線を張り、勢力を拡大する一方、他地域でも支配を広げようとしている。リビアやエジプトを含む複数の国々でも同組織に忠誠を誓う武装勢力が現れている。

イスラム国の複数のメンバーによれば、イラクとシリアには6万人の戦闘員がおり、その大半は現地のイスラム教スンニ派だという。

ドイツ当局者によると、約550人の自国民がシリアでイスラム国戦闘員として戦っており、約180人が帰国したとみられる。同国では、志願者の身分証を最長3年の間、没収できる法案が検討されているという。

フランスは2014年半ばから取り締まりを強化。同年後半にはテロ対策強化法が制定された。当局によると、約400人のフランス人がシリアにおり、180人がすでに帰国。また、200人が欧州のどこかから現地に渡ろうとしているという。

英国でも約600人の自国民が現地で戦闘に参加、300人がすでに帰国しているとみられる。同国では現在、警察当局は出国希望者のパスポートを最長30日間没収でき、イスラム国との関与が疑われる自国民の再入国を一時的に阻止することが可能だという。

メイ英内相は声明で、こうした措置を可能にする法律について「海外での戦闘に参加し帰国しようとする人たちを阻止できる」として、その重要性を強調した。

<一匹オオカミ>

こうした取り締まりにもかかわらず、イスラム国は支配地域の周辺国から新たな戦闘員を獲得し続けている。複数の関係筋によると、トルコ経由がいまだに主な渡航ルートになっているという。

当局者や外交官の話では、シリアへの戦闘員流入を警戒する西側同盟国から強い非難を浴びたトルコは国境支配を強化している。

トルコ軍は今月、イスラム国に参加しようとしていた少なくとも19人を国境付近で拘束したとしている。そのうち13人が外国人だったという。西側外交官の1人も「トルコが対策を強化しているという印象を受ける」とロイターに語った。

また、シリアの反イスラム国活動家によれば、同組織は一部のメンバーと緊張状態にあり、主に外国人が逃亡しているという。だが、イスラム国の戦闘員はこれを否定している。イラクを拠点とする戦闘員の1人は「(外国人は)イスラム国を離れてはいない」と述べた。

イスラム国は当初から欧州に目を付けていた。同組織が公開するビデオ映像の多くで、戦闘員が標的の1つは「ローマ」だと宣言している。これは一般的に、キリスト教圏としての欧州を意味するとみられる。そして今、イスラム国は欧州内で攻撃を実行する「一匹オオカミ」を奨励している。

バクルと名乗るイスラム国戦闘員は「彼ら(外国人戦闘員)がここに来られなければ、自分が住む国で異教徒と戦えばいい」と話した。

(Mariam Karouny記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)