「聖地が脅かされる」アメリカ先住民族、石油パイプライン建設に抗議行動

ここは条約で定められたスー族の土地だ。
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10月26日、「ダコタ・アクセス・パイプライン」建設に反対し、ノースダコタ州キャノンボール近郊でハイウェイを封鎖するデモ隊。

アメリカ・ノースダコタ州とイリノイ州を結ぶ石油パイプライン「ダコタ・アクセス・パイプライン」の建設をめぐり、建設ルート近くの居留地に住むアメリカ先住民スタンディングロック・スー族が抗議を続けている。彼らは水源のミズーリ川が汚染されることを懸念している。

Facebookのユーザーたちが、アメリカ先住民族の暮らすスタンディング・ロック保留地に「チェックイン」して連帯を示している。

なぜFacebook上で友人たちが突然、ノースダコタ州の先住民居留地「スタンディング・ロック保留地」に集結しているのか不思議に思うかもしれない。

11月2日、160万人以上がFacebookで保留地に「チェックイン」し、数カ月前から石油パイプラインの建設に抗議をするスタンディングロック・スー族とその支持者に連帯を示した。これは建設会社「エナジー・トランスファー・パートナーズ」がノースダコタ州バッケン地帯からイリノイ州中部の製油所まで1200マイル(約1930km)にわたって建設している、石油を輸送するためのパイプラインだ。

デモ隊は200以上の部族出身の代表者などが参加し、自らを「水の保護者」と名乗り、パイプラインによって聖地や埋葬地が脅かされ、先住民が飲み水として利用するミズーリ川が汚染されてしまうと主張している。

10月31日の早朝、Facebookのユーザーらはスタンディングロックにチェックインし始めた。彼らはジオタギング(投稿した写真などから位置情報を取得する方法)を使って治安部隊から監視されているノースダコタ州のデモ隊を守るために「チェックイン」することが必要だとするメッセージを再投稿した。

モートン郡の保安官事務所はジオタギングについて「まったくの事実無根だ」と述べている。デモ隊キャンプの主導者たちは、事実検証サイト「スノープス」に対し、自分たちはSNSの嘆願には関わっておらず、SNSによる監視に効果があるとは思えないと語ったが、連帯を示してくれたことには感謝した。

今も続くパイプラインの抗議活動への関心は高まり、誤った情報が広がっている。そこでどうしてこうなったのかを検証し、真偽をはっきりさせよう。

■ いつ、どうして抗議が始まったのか?

スタンディングロック・スー族がパイプラインに対する抗議を主導している。パイプラインがミズーリ川を横切ることを承認したアメリカ陸軍工兵司令部を告発した訴訟の中で、スー族は「文化的、歴史的に重要な土地が傷つき、破壊される可能性が極めて高い」と述べ、安全な飲み水の供給が危険にさらされると訴えた。また建設の一時中止を求めた。

連邦地裁の判事は9月初旬、中止の訴えを退けたが、司法省、陸軍、内務省は同日に「オアヒ湖周辺の陸軍工兵隊所有地またはオアヒ湖地下」から20マイル(約32km)圏内の建設を停止し、この件は引き続き連邦政府機関が調査すると発表した。それ以降、連邦機関はパイプラインに関してコメントしていない。

■ 誰が抗議しているのか?

スタンディングロック・スー族のデモ隊に、他の部族や先住民以外の多くの支持者が加わり、ノースダコタ州のキャンプや連帯を表明して世界中でデモを行うというかたちで参加している。俳優のマーク・ラファロと公民権活動家のジェシー・ジャクソン牧師もデモに参加した。

■ デモ隊は何を求めているのか?

デモ隊はパイプライン建設の完全中止やルートの変更を求めている。彼らはパイプライン建設現場での事故が近年増加していることを挙げ、水源の安全性が脅かされることを懸念している。

「パイプラインは小さな隙間から石油が漏れ出ることが多く、私たちは漏れているかどうかを知ることができません」と自然保護団体「シエラクラブ」のダグ・ヘイズ弁護士は9月、ハフポストに語った。「部族の人たちが心配しているのはこういうタイプの問題で、実際そう主張するだけの十分な根拠があります」。

州都のビスマーク付近を通過する最初のルート案が破棄されたことも、こうした懸念の一因だ。

また、スー族と支持者らは、このプロジェクトによって聖地や埋葬地に出る影響を懸念するのもおかしな話だと考えている。

ここは条約で定められたスー族の土地だ。強引に土地を収用するアメリカ政府は国際法に違反している。

■ パイプライン開発業者の反応は?

エナジー・トランスファー・パートナーズ社のケルシー・ウォーレンCEOは9月の書簡で計画を擁護し、文化的な影響について軽視し、抗議者らの水の安全を懸念する声については「何の根拠もない」と述べた。

■ 地元当局はデモ隊をどう扱っているか?

抗議が始まってから建設現場では400人余りの逮捕者が出ている。基本的に不法侵入や暴動に関与した罪で逮捕される。

デモ隊は警察がトウガラシスプレー、催涙ガス、ビーンバッグ弾(殺傷能力のない散弾銃)を使用していることや平和的なデモ、パイプセレモニー(先住民の儀式)、そして祈りの輪に武力を行使したことを非難している

女優のシャイリーン・ウッドリー、記者のエイミー・グッドマン、ドキュメンタリー映画監督のディア・シュロスバーグなど他の著名な支持者らは、デモに参加またはデモを記録したとして逮捕されたり、告訴されている。

3日だけでデモ隊のうち141人が逮捕された。開発業者の所有する土地でパイプラインのルートを塞いでいた前線のキャンプを当局が撤去したことで暴動が起きたのだ。しかしデモ隊は1851年に調印されたフォート・ララミー条約のもと、この土地の収用権はスー族にあると主張した。

こうした権力の行使を目の当たりにし、人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は治安組織がどのようにデモ隊に応じているかをチェックするため、調査チームを派遣することにした。また、国連も治安組織が過度な力を使い、人権を侵害しているというスー族の訴えを受けて調査している

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10月27日、1806号線でにらみ合うデモ隊と警察。デモはエスカレートし、141人が逮捕された。

■ 今後どうなるのか?

どんどん寒くなってきたが、デモ隊は熱心にデモを続けるようだ。ある部族の指導者はガーディアン紙に「最後の抵抗」をする準備はできていると述べた。

しかし治安組織の方も長期戦の準備はできているようだ。地元紙ビスマーク・トリビューンは3日、ノースダコタ州の緊急対策業務部が抗議に対応するため、追加で400万ドル(約4億1200万円)の資金提供を受けると報じた。同じ目的ですでに受け取っている600万ドル(約6億1800万円)に加算されるという。

一方、ノースダコタ州エリアのパイプライン建設はほぼ完了し、今すぐにでもミズーリ川まで到達しそうだ。

オバマ大統領、 ダコタ・アクセス・パイプラインの抗議について「当局には慎むべき義務がある」

パイプラインの開発業者は、ミズーリ川の地下を掘る許可がすぐにでも下りるのを待っている。バラク・オバマ大統領は11月1日、動画ニュースサイト「NowThis」のインタビューでスー族や支持者の懸念に対処するため、アメリカ陸軍工兵司令部はパイプラインのルート変更ができるかどうかを調査していると述べた。

シアトル・タイムズによると、1月1日までにパイプラインが完成し、原油を輸送できなければ、開発業者と輸送業者の契約は期限切れになるという。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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