黒のスーツに身を包んだ係員が墓石の前に立つと、ゆっくりと一礼し、花束を手向け清掃を始めた。
墓参りと清掃を代行してもらうサービスが中国メディア「重慶晨報」などに取り上げられ、現地で話題を呼んでいる。
サービスを提供しているのは中国・重慶市の「龍居山墓地」。故人の親類縁者から依頼があった場合に、係員が代わりに墓参りと清掃を行うという。お供え物や、伝えて欲しい言葉など、個々の要望も受け付ける。
サービスの特徴は、「生中継」を行う点だ。墓参りをする係員のそばにもう1人が立ち、スマホで一部始終を依頼人へ向けて中継する。指示通りに代行をこなせているか、依頼主が確認できる意味合いがあるという。
■代行は親孝行と言えるのか?
中国では4月5日に「清明節」を迎える。日本のお彼岸と同じように、故郷に戻り先祖の墓参りをする日だ。
この清明節を前に一風変わった墓参りが紹介されたこともあり、中国では「代行業者に墓参りを依頼することは親孝行と言えるのか」が議論の対象となった。
「墓参りもアウトソーシング、こんな社会なんて...!」とか「ご先祖様も知らない人がやってきて驚くだろう」など、抵抗感を持つユーザーもいた一方で、「生前にどれだけ親孝行できたかが重要だ」など理解を示す意見が多く寄せられた。
墓参り代行のサービスに従事している女性は、「北京時間」の取材に対し「家から出られないご老人や、国外で働いている人も多い。そうした境遇の人たちがテクノロジーの力で先祖に思いを伝えている」と話している。