サイボウズ式:働き方改革が進まないのは、「どうせうちの会社は変わらないでしょ」っていうあきらめ感のせい──小泉進次郎×サイボウズ青野慶久

「日本は新しく何かを始める力が弱くなっているんです」(小泉進次郎)
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サイボウズ式

サイボウズの日本橋本社で行われた、衆議院議員の小泉進次郎さんと青野社長の対談。

前編では、「働き方改革は地方の中小企業に響いていない」「2年半休めなかったコンビニ店長」「24時間型社会を見つめ直そう」といったテーマについて、活発な意見交換がされました。

後編では、「働き方改革が進まない理由」「状況を変えるために具体的にどうすればいいか」など、さらに議論が深まります。

働き方改革が進まない理由は、日本人が現状に満足しているから

青野:小泉さんは、なぜ日本で働き方改革がうまく進んでいないと思いますか?

小泉:改革へのモチベーションが足りないからです。

青野:当事者たちが「働き方を変えたい!」と思っていない、と。

小泉:はい。なぜモチベーションがないかというと、現状に満足しているんですね。内閣府の調査(※)で、国民が戦後過去最高に生活に「満足」していることがわかっています。アベノミクス効果で景気がいいですしね。

※2017年8月に公表された「国民生活に関する世論調査」では、現在の生活に「満足」とした人は、過去最高の73.9%。

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小泉進次郎(こいずみ・しんじろう)さん。自民党筆頭副幹事長、衆議院議員。米国戦略国際問題研究所研究員、衆議院議員秘書を経て、2009年に初当選、現在4期目。内閣府大臣政務官、復興大臣政務官、党農林部会長、党人生100年時代戦略本部事務局長などを歴任。1981年生まれ、神奈川県横須賀市出身
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小泉:多くの人が生活に満足しているのは、すごくいいことでもあるけれども、同時に私はこの状況に強い危機感を持っています。

青野:現状に満足している中からは、「何かを変えたい」という機運は生まれてきませんからね。

小泉:そう、日本は新しく何かを始める力が弱くなっているんです。今は景気もいいし、生活に満足しているからと。でも、果たして本当にずっとこのままでいいんでしょうか、ということです。

青野:よくないですよね。

小泉:どんどん人口が少なくなる日本で、すでに人手不足を肌身で感じる話題をたくさん耳にします。

青野:ファミレスが定休日を設けるようになった、物流業界が値上げした。長時間労働、ブラックのイメージがついているところほど人が集まりにくくなっていますよね。

小泉:昨年のクリスマスに、コンビニの外でチキンやケーキを売るアルバイトは、時給2,000円出さないと集まらなかった、なんていう話も聞きました。人口減少による人手不足が、想像していた以上のスピードで現実になりつつあります。

日本人には負けグセ、あきらめグセがついている? 「何も変わらないから」と声を上げなくなっている人たち

青野:でも、本当に全員が心から満足していて、働き方改革が進まないというわけでもないと私は思っていて。

実は理不尽に虐げられているのに、「何も変わらないから」と声を上げなくなっている人が大勢いると思います。負けグセがついてしまっているというか。

小泉:なるほど。

青野:「どうせうちの会社の働き方は変わらないでしょ」っていう"あきらめ感"が先に漂ってしまっているんですよね。

小泉:かつて小林一三(こばやしいちぞう。阪急電鉄・宝塚歌劇団・阪急百貨店の創設者)がいいことを言っていますよ。「人間を動かすのは我欲」。

青野:働き方改革では「もっとこうしてほしい、ここに不満があるんだ」と、困っている人たちに、もっと大きな声をあげてほしいです。

そして、推進する側はもっと一人ひとりの声を、ちゃんと聞いてほしい。現場の声を聞かない限り、働き方改革は絶対に成功しませんから。

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青野慶久(あおの・よしひさ)。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し、離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得している。2011年からは、事業のクラウド化を推進。厚生労働省「働き方の未来 2035」懇談会メンバーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)
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小泉:不思議な話ですが、政治の世界を見ていると誰も反対しないような改革は実現しないんですよね。

青野:そういうものかもしれませんね。

小泉:「人口減少、人手不足だから働き方改革で生産性を上げましょう」だと、きれいな論理で、誰も反対はしない。でも、改革も進まない。

青野:現場はもっと声を上げなくちゃいけないんでしょうね。仕事量もやり方も変わらず「とにかく帰れ」という無茶を組織が現場に押しつけるなら、現場はもっと反対しないと、働き方改革は進んでいかない。

国に言われたら3000億円は払うけど、社員の給与アップはできない。それっておかしくないですか?

青野:そういう意味では経営者も、もっと国に文句を言っていいと思います。少子化を止めない限り労働力も増えないし、市場は小さくなっていくわけですから。

小泉:そうですよね。そして、時に国の規制を突破してでも、新しい商品やサービスを生み出してほしいです。野心を持って果敢に挑んでくれる企業がなかったら、経済は成長しないですから。

青野:国側とビジネス側、時にはぶつかりながら互いに成長していかないと。

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小泉:でも今、経済界がすごくおとなしいんですよ。教育無償化などの政策に対して、安倍首相が求めた3000億円の負担、経団連(※)はすぐに容認したでしょう。

教育無償化はもちろん大切な政策ですが、「従業員の給料を上げるから、3000億円の拠出はムリ」ぐらいに言ってくれる気概があってもいいんじゃないか、と思いました。

※経団連......一般社団法人・日本経済団体連合会。経済界が直面する重要課題について意見を取りまとめ、政治や行政などと対話する。日本の企業1,350社、製造業やサービス業等の主要な業種別全国団体109団体、地方別経済団体47団体などから構成されている。

青野:経団連はどこを見て仕事をしているんだ、と。

小泉:しかも、3000億円の拠出金は経団連に加入している一部の企業だけでなく、社会保険に加入するすべての企業が負担するんです。経団連で容認されたからといって、それで物事が進むのもおかしな話ですよね。

青野:サイボウズも負担するわけですね。

小泉:その一連のやり取りを見る中で、いま安倍首相に一番モノが言えないのは経済界なんだと感じましたね。特に円安で儲かっている重厚長大の輸出企業や、株高で儲かっている上場企業。

青野:経団連に加入していない小さな会社で、「従業員の給料を上げるから、拠出はムリ」という会社があるかもしれないのに......。

農協のやり方に不満があるなら、農協から抜けるのではなく、むしろ組合長を目指せ

小泉:ところで青野さんは、経団連には加盟されていないんですか?

青野:入ってないですね。お誘いいただいたことはあるのですが、あまり興味がないというか。

小泉:僕ね、青野さんみたいな人には、ぜひ経団連に入ってほしいんですよ。

青野:ええっ。

小泉:青野さんが加入されて、一言「会長は製造業じゃないとダメなんですか?」って言うだけで、いろいろ変わりますよ。

青野:(笑)。

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小泉:青野さんなら、それができますよ。僕は、若い農家の人たちにも「農協のやり方に不満があるなら、農協から抜けるのではなく、むしろ組合長を目指せ」と言っています。

何かを変えたいと思うとき、外から働きかけるよりも中から変える方が絶対に早いし、成果が出る。

青野:中からの変革......。確かにそうかもしれませんね。

小泉:青野さんのようにちゃんと声をあげて、いろんな物事と闘う姿を見ると、僕も本当に励まされます。

青野:ありがとうございます。今年は、働き方改革が今後どうなるかの極めて重要な年。お互いに、政治と経済それぞれの領分でしっかり頑張っていきましょう。

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執筆:玉寄麻衣 撮影:栃久保誠 編集:田島里奈(ノオト) 企画:藤村能光

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」は、サイボウズ株式会社が運営する「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトです。 本記事は、2018年2月15日のサイボウズ式掲載記事
働き方改革が進まないのは、「どうせうちの会社は変わらないでしょ」っていうあきらめ感のせい──小泉進次郎×サイボウズ青野慶久
より転載しました。