米VOGUEで「芸者」風スタイル風に撮影された写真が非難されたことについて。(写真はこのリンクで見られます。)文化盗用(カルチュラル アプロプリエーション)とは、他の文化を自らの植民地のように扱う、ということだと思う。
強者(この場合、西洋文化)が他の文化(支配される側)を理解せず(もしくは理解しようともせず)、自分にとって都合のいい部分(ビジュアル)、ステレオタイプだけを切り取り、自らの文化・ポイントを推進するために利用していく。
今回の米VOGUEでは日本の着物、おすもうさん、日本の風景を小道具として使い、モデル(写真の核となる美)は自分たちにとって無理なく受け入れられる西洋美人(白人モデルカーリー・クロスさん)を起用している。
文化盗用という言葉は、西洋の植民地だった、という歴史を持っていない日本には、はじめはピンとこない考えかもしれない。(現に私も初めて聞いたときはピンとこなかった)
私にとってこの文化盗用を表す感情は2009年のミスユニバースの着物ガータードレスを観た衝撃に近いと思う。今回とは状況が違うが着物文化の美しさ、美徳を完全に無視し、日本文化と美しさが道具のように切り貼りされた着物という名のファッション。。。いやだな、と思った。
さらに今回このVogueが発売されたアメリカ(西洋)の人たちの間には長い植民地・絶対的な白人至上の歴史、支配された側には恨みの文化があるのを忘れてはいけない。
正直にいって非難されたモデルカーリー・クロスさんにはちょっと気の毒に思う。おそらく彼女は何も考えずに仕事をこなしていたつもりなのではないか。(しかしクロスさんが文化盗用と非難されたモデルプロジェクトをこなしたのは今回が初めてではない)
私自身フリーの写真家なので仕事は自分の主張、思想の軸のみでは選別してはいられない現実もある。しかし確かなことは無関係であるというスタンスは通用しない世の中になっていることだ。
自分の発言、行動(または発言しないこと、行動しないこと)に対して責任をもっていかなくてはいけない。
めんどくさい、と思う人もいるだろう。これが去年の米大統領選でのポイントの一つとなった、アメリカのポリティカルコレクトネスだ。日本では文化盗用という考えが社会に浸透するのは先のことかもしれない。でもいろんな背景をもった人がいること、こういうことをいやだと思う人がいる、ということに少なくとも心に留めておくことは大切なことだと思う。
(カバー写真は本文と関係のない私の大好きなドラァッグクイーンのネイル、私のファッション写真です。)
【訂正】2017年2月21日23時7分
一部、私の無知無神経な表現ありましたことを深くお詫び申し上げます。事実と異なる不適切な箇所である「単一民族であり、」を削除しました。