小渕経産大臣の政治資金に関して、国会でも質問が飛んでいる。
もちろん政治資金の流れにおかしなことがあってはならない。しかし、経産大臣に国会で金の話を質問するならば、もっと突っ込みどころがあるはずだ。
10月2日の参議院本会議で小渕大臣は、「原発の発電コストはその他の主要電源のコストと比較しても遜色なく低廉な電源と考えています」と答弁している。
本当にそうなのか。
10月8日の参議院予算委員会で、政府は「原発のコストについてはキロワットアワー当たり8.9円以上となっておりまして、その他の電源に比べて低廉なものと認識をしています」と答弁している。
これは福島の事故の費用が5兆8000億円であるとして計算された数字だ。2011年のコスト等検証委員会の計算である。
この計算の前提は、福島第一原発の1号機から4号機の4基を除く50基の原発がすべて再稼働され、その後、40年間稼働するというものだ。
しかし、実際の福島の事故の費用はこれをはるかに超えている。
立命館大学の大島堅一教授の試算では
損害賠償額 4兆9088億円
賠償対応費用 777億円
除染費用 2兆4800億円
中間貯蔵施設1兆0600億円
事故収束費用2兆1675億円
行政対応費用 3878億円
合計 11兆0819億円
原発の発電コストと経産省が称するものにこの費用を加えたものを、50基の原発が40年で発電する電力量で割ると、キロワットアワーあたりの原発の発電コストは9.4円になる。
さらに、これを現実的な試算に置き換えてみる。
現在、我が国にある50基の原発がすべて再稼働するものとするが、それぞれの原発は建設から40年経ったところで運転を停止するとして計算すると、11.4円になる。(大島堅一教授の試算による)
もちろん福島第一原発の5、6号機は再稼働しないし、日本原電の原子炉も再稼働できないだろう。その他にも再稼働しないものは少なからずあるはずだ。
だとすると、原発のコストはさらに高くなる。とてもじゃないが「原発の発電コストはその他の主要電源のコストと比較しても遜色なく低廉な電源と考えています」などとは言えない。
小渕経産大臣に、国会で、金の質問をするならば、まず、こっちのほうから質問するべきではないか。
ちなみに
損害賠償額 4兆9088億円 電力消費者負担
賠償対応費用 777億円 電力消費者負担
除染費用 2兆4800億円 支援機構の株の売却益を想定*
中間貯蔵施設1兆0600億円 国民負担
事故収束費用2兆1675億円 電力消費者負担
行政対応費用 3878億円 国民負担
* 国が1兆円で買った東電の株を3.5兆円で売却し、その利益2.5兆円を充当する。
事故費用のうち、東京電力が自らの利益で負担したのは、災害特別損失の10-12年度の合計額1兆259億円と新総合特別事業計画で積み増した1兆円の合計2兆259億円と原子力損害賠償支援機構への特別負担金だけだという。(大島堅一教授による)
ちなみに2013年度までの特別負担金は500億円。
(2014年10月17日「ごまめの歯ぎしり」より転載)