韓国で医学部生に最も人気のある診療科の一つが形成外科です。その根底には、美を追求する国民意識があります。
◆なぜ韓国では美容に対する意識が高いのか?
韓国での美容外科、美容医療の発展の根底には、美に対する韓国人の関心の高さがありますが、これは韓国が「美容整形大国」「美容整形先進国」などと言われるずっと前から存在する価値観の一つではないかと考えます。
韓国では子供の頃、しいては生まれた時から、容姿や外見を評価されます。男女限らず、この子は美男だ、美女だ、あるいはその逆も歯に衣を着せず、周りからはっきり指摘されます。それは幼少時から大人になるまで続き、褒められるにしろそうでないにしろ当然強く意識するようになるでしょう。
人間は様々な環境、仕事の中で、自分の個性や能力を持って評価されるものですから、外見だけにこだわり続けることはありません。しかし、潜在意識の中に容貌に関する価値観は持ち続けます。韓国のように価値評価の中で外見の占める割合が高いと考えられている社会では、特に女性の場合、美を追求することが自己価値を上げると考えるのも当然と言えば当然です。最新の美容法や化粧品が広がる以前から、民間療法的な美容法や美肌法が多くあるのも、韓国女性が昔から美容に高い関心を持ち、実践してきた証拠でしょう。
◆形成外科が人気、国の観光事業にも
美容に対する関心と需要に後押しされるように、韓国における形成外科は瞬く間に人気の科目となり、目指す研修医も増えました。日本の場合、大学の医学部を卒業し医師国家試験に合格すれば、何科を専攻するかは本人が自由に選択できます。しかし、韓国では専門医の数を厳格に管理しているため、人気の科に希望しても必ずしも思い通りにはなりません。
私が卒業した当時はまさに形成外科が人気の的で、狭き門でした。成績はもちろん、噂では人間関係?やコネも必要だという話まで出ていたくらいです。とにかく形成外科に優秀な卒業生が集まったのは事実です。しかし形成外科医が増加し、他の科の医師まで美容医療に関心を示すことから、最近はさすがに美容医療への集中もやや落ち着いてきたようです。
現在、韓国全体では美容外科、美容皮膚科のクリニック、医院が4000ほどありますが、その40%がソウルに存在します。ソウル市の高級住宅街がある江南(カンナム)地区には、いわゆる「美容整形通り」と言われる場所があり、そこだけで800のクリニックが密集しています。いくら需要があるとはいえ、さすがに国内では飽和状態になってきているのも事実です。
このような状況の中で、韓国は海外の患者を受け入れるべく、医療観光を国の経済政策の一つとして力を注いでおり、美容外科の高い技術力をベースにソウル以外でも医療特区として指定されている地域もあります。
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