特養前で毎日起こる感謝の拍手 広がるエールの輪、地域に生まれる新たな関係

新型コロナウイルスと闘う施設に向け、3分間のエールの拍手を送った。
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施設(左側)に拍手を送る地域住民ら(5月27日)
福祉新聞

 午後5時。夕焼けチャイムが鳴ると、東京都の「大田区立特別養護老人ホームたまがわ」の前に地域住民らが集まり、一斉に手をたたき始めた。新型コロナウイルスと闘う施設に向け、3分間のエールの拍手を送る。合間に「お疲れさま」と声を上げると、施設のベランダから職員が「ありがとう」と返す。

 

 この活動は4月27日から毎日行われた。近隣マンション住人の任意団体「たまこ」の代表、堀口由佳子さんは「施設と以前から交流があり、自分たちに何かできることはないかと考え、医療現場で働く人を拍手や口笛で応援した欧州の活動からヒントを得て始めた」と言う。

 

 当初は5人だったが、この日は20人ほどが集まった。施設設立時からの音楽喫茶ボランティアも駆け付け、利用者と親しいだけに心配する表情を見せた。

 

 これまでに買い物帰りの人や、公園で遊んでいた子どもが参加することもあり、エールの輪は広がった。一方、施設の利用者が、感謝の手紙を紙飛行機にして投げたり、窓から歌を歌って応えることもあった。本間秀樹施設長は「地域のボランティアが防護服を作ってくれたり、本当に感謝している」と話す。

 

 活動は5月末で終了したが、地域住民から「終わるのは寂しい」との声があり、みんなでラジオ体操をしたり、利用者家族会との親睦会を検討したりしている。新たな関係ができたことに堀口さんは「この活動で得たものは大きい」と話す。

 

 大規模な建物のライトアップで医療・介護関係者への感謝を示す活動もあるが、顔の見える関係の中でのエールは、介護現場で懸命に働く職員に深く届き、お互いがこれまで以上に強い絆でつながった。