新型コロナウイルスをめぐり、アメリカと中国の批判合戦が続いている。
中国の報道官が「ウイルスはアメリカ軍が武漢に持ち込んだ可能性がある」とすると、その数日後にはトランプ大統領自らが「中国ウイルス(the Chinese Virus)」とTwitterでつぶやくなど、争いは過熱化する一方だ。
そして、舌戦の続きは、報道官同士によって繰り広げられる形となった。
■アメリカが「隠蔽」批判
「先手」を打ったのは、アメリカ国務省のモーガン・オルタガス報道官だった。中国のウイルスへの対応が遅れたことへの批判に対し、中国の華春螢(か・しゅんえい)報道官が1月3日からアメリカ側に情報提供していることを主張したツイートに反応した。
「中国当局は1月3日までに、ウイルスのサンプルを破棄させ、医師たちを沈黙させた。またオンライン上の懸念の声も検閲した。これこそ世界が綿密に検証すべきだ」と批判した。
オルタガス報道官のツイートの背景には、中国メディア「財新」が中国政府の情報封じ込めを告発した記事があるとみられる。
ネットから削除された「財新」の記事では、政府は1月3日に関係当局あてに通知を出し、ウイルスのサンプルを「特殊な公共資源」に指定し「いかなる機関や個人も勝手にウイルスに関する情報を公開してはならない」としたとされている。
■どちらが本当?
華報道官は、この指摘に対し5ツイートにわたって反論。「ウソと中傷では、アメリカを偉大にできませんよ」とトランプ大統領のスローガンをもじって皮肉ると「世界的なパンデミックに直面しているいま、大事なことは公衆衛生を政治よりも優先させることだ」と主張した。
そのうえでオルタガス報道官の主張について「武漢市の衛生当局は12月31日時点で通知を出している。口を開く前に状況を理解していただけませんか?」と反論した。
ちなみに、華報道官が言及した「通知」は確かに12月31日に発表されている。しかし、「原因不明のウイルス性肺炎」に言及したものにすぎず、中国政府が新型のコロナウイルスについて存在を明らかにしたのは1月9日だった。
中国はこれまでに、最初に感染が拡大したのは武漢市であると認めつつも、ウイルスの発生源については科学的な定説はないとしている。
一方でアメリカは、世界的な感染拡大の背景には中国政府の隠蔽があるとしていて、両者の舌戦はいまだに着地点が見えない状況だ。