ニコ生「クールジャパンを斬る!!」それでもクールか!?「アウトバウンド」の巻その2。
やまもといちろうさん、竹内宏彰さん、青木美沙子さん。
中村
コンテンツ産業って海外に売って行く競争力あるんですかね。
やまもとさん
日本製のアニメでも、作画など制作の一部作業は海外でやってたりするわけですよ。いろんな国の人たちが作っていて、それでも仕事を取りまとめている日本だけがクールと言われることに対して、竹内さんどうですか?
竹内さん
それは厳密には違っていて、演出、監督、キャラクターデザインは基本的に日本のスタッフなんです。それで色をぬったりする彩色や動画部分をかつては韓国、最近ではベトナムがやっている。それはプロダクトでも一緒で、AppleのiPhoneだってコンセプトはアメリカで作って、中の部品は日本製だったりするじゃないですか。でもAppleカッコいいってなるのと僕は一緒だと思うんです。プロダクトをどこがまとめあげて出すか、これがクールになるというのは良いことだと思います。
韓国の人たちは日本に負けたくないと思ってアニメを作ってきた。でも最近の韓国の人は日本のアニメは見ていないんです。彼らは直接アメリカの音楽とか映画とか、ハリウッドを真似して作ってグローバルに展開する。だからクールであるというのはふんぞり返っているのではなく、目標になって、それを超えようとする、そういう切磋琢磨が良いんです。
中村
それが長期的な競争力が保てるかということです。一時はフランスでも日本のアニメって席巻してたんですけど、地上波のテレビから追い出されていったというのがあるじゃないですか。
竹内さん
それはあります。それは日本でも行われました。地上波のテレビで海外の映画を流さなくなりましたけど、それはやっぱりテレビ局の人が作ったものを流しましょうっていう考えがあって。でもお客さんからすればメインのメディアじゃなくても欲しいものを見れる環境はいっぱいある訳じゃないですか。ニコ生だってそう。
やまもとさん
でも、ライセンシングの問題があって、実際に海外で流通する時の日本のコンテンツは高額なんですよ。4倍位するんです。
竹内さん
良いことじゃないですか。
やまもとさん
いや、そう単純な話じゃないんです。何よりも、まず素材自体が安くならないから買い付けできないんです。海外でも受け入れられるように、吹き替えや設定を変えなきゃいけない。例えば、日本国内では大丈夫でも、トルコで十字架が立ってる建物は法禁なわけですよ。海外マーケットを見てものを作ってるかと言われれば日本はまだまだ弱いと思う。
中村
そこは韓国の方が力を入れているということですか?
竹内さん
文化解放政策以降、コンテンツをグローバルに拡げるためのお手本の国をそれぞれ研究して国際戦略を展開してます。サムスンがデザイン力で家電市場を席巻したように、最初から世界を市場とみてやっています。日本はそれができてないのが残念です。
やまもとさん
韓国は他のプロダクトやサービスにコンテンツを乗っけて輸出していくわけですよ。じゃあ日本でそれやれって言ったところで、やんのかと。トヨタがアメリカでの宣伝で初音ミク使ったって、それがどうしたって話になるわけです。
そういった売り方も含めた取り組みも踏まえて全体をコーディネートしていかないと、日本が自身を「クールです。だから買ってください」と言ったところで売れないわけです。日本のコンテンツは、ただでさえ高いから。心臓部分は日本がやってます、それが価値です、という主張それ自体はその通りなんでしょうが、その価値を皆が認めてくれる位のバリューがそこにあるのかと。
高い値段でも日本製が欲しいんだってなるかというと、今のコンテンツ界隈では必ずしもそうはなってないから、海外市場においては、例えばフランスでの競争に敗退して、東南アジアでも枠が少なくなっていってるのが実情だと思いますね。
竹内さん
例えば日本のアニメは英語圏では、クランチロールという会社がサイマルキャストといって日本で放送した数時間後に字幕つきで流してます。アメリカのユーザーは基本的に無料で見られます。HDで見たい人は月7ドルくらい払うといろんな番組が見られちゃう。
昔、日本のアニメを海外で見ようと思ったら、平日の夜中の深夜帯の枠とか、それこそ放送されないものは買わないといけなかったってことがあるので、広がりはありますよね。作っている身からすると利幅が薄くなってきてるんで、そこは悲しいことはありつつも。
やまもとさん
ファンサブ問題で、向こうが勝手に翻訳して、ネットで共有してしまうことへのディストリビューターとしての対策はあると思うんですよ。一方でその仕組みが持続的かっていう問題は別問題になるわけですよね。要は安い値段で日本のコンテンツを叩き売るようなことだと意味ないじゃないですか。そこに政府がこういう形で後押ししますよって言ったところで、制作サイドは多少助かるかもしれませんけど、流通サイドは潤わないって話になるわけじゃないですか。
竹内さん
すいません、割り込みますけど、クリス・アンダーソンが「FREE」で言ったみたいにコンテンツは長期的に見るとタダ、フリーになりますよね。タダと自由という意味合いで、今の僕らのアニメ業界は配信は宣伝としてどんどんやりながらその周辺でビジネスをする。例えばフィギアやカードを売ったり、それがグローバルで新しい流れになる気はしています。
やまもとさん
ふつう、それは逆で、ビジネススキームからすると儲かったあとで後追いでそれらを模倣したフリーのものが出てくる。広告宣伝代わりに無料でばら撒くのはいいですが、原資はどこにあるんですか。要はコンテンツの商売があって、収益が上がっているからこそ、その広告宣伝戦略の一環として、フリーミアムのものがあって、広告戦略として成り立つ、これは自然だと思うんです。逆に、まずフリーになっちゃってて、
竹内さん
でもそれは、今はハリウッド映画でもその流れに乗っかってるわけです。これは流通とかプロデューサーが仕掛けられる市場の流れから逆行してます。その中でコンテンツの価値がどう生き残って行くかということになっていく。
やまもとさん
フィギアなどの周辺の二次利用で儲けるって、次に続きますかって話ですよ。
竹内さん
続くと思います。
やまもとさん
続いてないじゃないですか。何が続いてます?
竹内さん
まず、聖地巡礼を含めた観光が作品にかなり紐づいてます。日本に来てもらって、日本語のブルーレイ買って行く外国の若者がすごく増えてます。周辺のおもちゃやフィギュアなどもどんどん海外の人に買っていただいてます。
これは今までアニメを作ってきた人たちからすると、おもちゃとかって海外で売るのは大変だったわけですよ、当然アメリカは国土が広いし、流通網は持ってないと。そういうものがAmazonに乗せたりして売れてきている。完全に今そこで潤ってるわけではないんですけども、
やまもとさん
だから、何度も申し上げているように、だんだん縮小再生産になって続かないじゃないですか。
竹内さん
いや、続いてる、作っているんだもん。
やまもとさん
そうじゃなくて、日本である程度回っているものが海外で英語化されて海外用にされて、海外の人たちが買うようになりましたと。そん時のロイヤリティーは4パーセントから6.5パーセントだったわけですよね。どれくらいの市場ボリュームがあって、アメリカ向けの別の作品をつくるだけのボリュームはあるんですかと。
DVDは国内で売れます、例えばある作品が2000本から3000本売れます。その仕事で儲かった中で再生産していくことはできると思うんですよ。それは日本国内の市場でだけ回転しているのであって、海外に出て行く時のコストや海外でディストリビューションしていくコストを日本の会社が次回も仰るような二次利用メインの事業で回収できるのかってのが一番の問題だと思うんです。
竹内さん
それは問題ないですね。海外のディストリビューションコストってのは昔よりかからなくなってきました。それにアニメや漫画がそのビジネスの中に閉じてないんですよ。今日青木さんもいらっしゃってますけども、コスプレはアニメ作品に相まって海外に広がってますよね。
どこでマネタイズがあるかは議論のあるところですけど、少なくとも海外の人がキャラクターを見て、知って、そういった格好をビジネスとして売るとか、コスプレとかでフィギュアが売れるという流れも出てきます。ここは完璧じゃないにしても、今までにないビジネスの可能性がでてきたかなと・・
つづく
(2014年2月12日「中村伊知哉Blog」より転載)