クール宅急便、常温で仕分け ヤマト運輸、荷物27度に
宅配便最大手ヤマト運輸の東京都内にある複数の営業所が、「クール宅急便」で預かった荷物を外気と同じ環境で仕分けていたことが、朝日新聞が入手した動画などからわかった。同社は「食品の安全にも関わり極めて不適切」として、基本ルールを徹底するよう全社員に通知するとともに、実態の調査を始めた。
ヤマトの複数の営業所内で撮られた動画には、保冷用コンテナが開けっ放しになったまま、作業員が仕分けをする様子が収められている。「冷蔵」と書かれたシールが貼られた荷物がコンテナ外に置かれたままになっている場面もある。
現場をよく知る同社関係者が今秋に撮影したこの動画を、朝日新聞に提供した。この関係者は8月に、温度の変化を測定・記録できる機器をクールの荷物の箱に入れ、自ら発送。その記録によると、午前6時台までは11度台だったが、7時40分前後から上昇し、50分ごろには20度を突破。8時10分前後に27度を記録した後に徐々に下がり、8時50分前後には再び11度台に戻った。
【中村信義】
扉開けっ放し・箱は常温で置きっぱなし クール宅急便
保冷用コンテナは開けっ放し、「冷凍」や「冷蔵」のシールが付いた箱は常温で置きっぱなし――。朝日新聞が入手した動画には、ヤマト運輸のクール宅急便が、一部の営業所で常温のまま仕分けられていた様子が映っていた。ヤマト関係者は「猛暑が続いた今年の夏も外気と同じ環境で仕分けていた」と証言し、食の安全上からも問題視する。
動画は9月に東京都内の複数の営業所で撮影されたという。いずれも高さ1・7メートルの保冷用コンテナが5~10本ほど映っているが、閉じた状態のものは映っていない。仕分けに当たる作業員が数人いるが、誰も扉を閉めようとしない。
床などに「冷凍」や「冷蔵」と書かれたシールが貼られた荷物が置きっぱなしの様子も映る。動画を撮ったヤマト関係者によると、このコンテナは5分で仕分ける決まりだが、「そんなの無理だし、自分が知る限り、いちいち開閉する作業員は皆無」と言う。
ヤマトが1987年に業界で最初に始めたクール宅急便。物流業界の同業他社も相次いで参入し、成長が続く。その中でも圧倒的なシェアを誇るヤマトは、2000年代から需要が伸びている中国でもクールを展開し、今も「ドル箱」(同社元幹部)の一つという。
だが、クール宅急便をめぐっては11年12月下旬、兵庫県尼崎市の西大阪主管支店で常温で運んでいた事実が発覚。ヤマトは当時、寒波による交通渋滞などで配送に乱れが生じ、冷蔵設備のある車両を確保できなかったためと説明していた。
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