サンタカタリナ島近くで10月13日に発見された、体長約5.5メートルのリュウグウノツカイ
カリフォルニア州の海岸で、1週間の間に2匹の巨大なリュウグウノツカイ(英名:oarfish、ribbonfish)が相次いで打ち上げられた。これを受けてソーシャルメディアでは、このめったに見られない魚の発見は、大地震が差し迫っている前兆ではないかと疑う声であふれている。
リュウグウノツカイは、現生する硬骨魚類のなかでは世界最長とされている。最大では11m、体重272kgに達した個体が報告されている。
10月13日(米国時間)には、ロサンジェルス港から南南西38kmにあるサンタカタリナ島近くで、約5.5メートルのリュウグウノツカイの死体が見つかった。そして、そのわずか5日後の18日には、サンディエゴ郡のオーシャンサイドに、体長約4.1メートルのリュウグウノツカイが打ち上がった。
大海蛇(シーサーペント)にまつわる古代のさまざまな神話は、リュウグウノツカイの巨大な体、特徴的な背びれ、それに体をうねらせて泳ぐ姿から生まれたのかもしれない。
日本では、この魚は「龍宮からの使い」として知られており、巨大地震の前触れだという都市伝説がある。2010年3月には、『Telegraph』紙と『Japan Times』紙が、日本の沿岸で発見されたり打ち上げられたりするリュウグウノツカイの数が増えていると報じていた。
その1年後の3月に壊滅的な地震が日本を襲ったこともあり、この魚はその前兆だったとする陰謀説が生まれ、今も広まり続けている。
だが、ロサンゼルス自然史博物館で約35年間魚を研究しているリック・フィーニー氏は、この説に異を唱えた。
「おそらくはただの偶然だ」と、フィーニー氏はCBSロサンゼルス局の取材に対して語っている。
英国の科学雑誌『I, Science』は、水深約210メートルから910メートルの場所に生息するリュウグウノツカイが地震活動に敏感であるという可能性はあるとしながらも、科学的な関連性はいまだに証明されていないと指摘している。
実際、この魚についてわかっていることはほとんどない。『Journal of Fish Biology』誌に6月5日付けで掲載された論文によれば、この巨大な魚が生きた状態で観測された例は、2008年から2011年の間でわずか5件しかなかったという。
Japan Timesの記事によると、2009年12月ころから、富山県の数カ所や石川県久里浜海岸で複数匹が発見され、2010年5月には京都府宮津の定置網でも複数が発見された。ほかに、岩手、兵庫、島根、山口、長崎でも発見されたという。ただし、Wikipediaによると、この魚は珍しいので発見されると報道されるが、以前から富山県等では冬になるとしばしば定置網にかかるのだという。2010年1月には、長崎県で捕獲された3.8メートルのこの魚が水族館の水槽で泳ぐ姿が一般公開されたが、公開34分後に死亡したという。
スライドショーでは、メキシコで撮影された「生きたリュウグウノツカイ」の動画などを紹介している。
[Sara C Nelson(English) 日本語版:佐藤卓/ガリレオ]