量の概念(高畑紀一)

「量の概念」。大きく揺らいでしまうと適切な選択、判断を成し難くなります。

こんにちは、木曜日担当のPlus Action for Children 高畑です。

暑い日が続いています。暑さにも寒さにも弱い私にとっては、真夏の猛暑とクーラー効き過ぎが交互に襲ってくるこの時期が、もっとも体にしんどい季節です。でも、暑い夏は大好き!という、ちょっと面倒くさい奴でもあります。炎天下、嬉々として外に出ては、「暑い~」と融けそうになり、涼を求めて喫茶店などに入ると「寒い~」と言って、外に出て(以下、ループ)。こんな私に付き合ってくれる家族たちに感謝ですね。

さて、先日、こどもたちに「量の概念」について、話をしました。

「量の概念」というとなんだか小難しそうですが、具体的な事例を用いると、小学生でも十分に理解できます。

なぜ「量の概念」なんてことをこどもたちに話したのかというと、この「量の概念」が大きく揺らいでしまうと適切な選択、判断を成し難くなるからです。

例えば食品添加物。

現在、我が国の食品添加物の使用は基本的に厚生労働大臣が定めたもののみが使用されており、かつその使用量についても明確な基準が設けられています。

この基準は十分に安全性を担保する内容となっていて、一般的には実験動物に一生食べ続けさせても健康に害を及ぼさない最大量(無毒性量)の1/100の量を「ADI」として設定し(この量を毎日食べ続けても健康に害を及ぼさないという一日あたりの接種許容量)、そのADIに対しさらに低い値で使用量の基準を設けています。

実際に私たちが口にする食品からどれ位の食品添加物を摂取しているのかということも調査されており(※マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査)、結果からは一日あたり摂取量(ADI)に対し1%にも満たないものが殆どであることがわかっています。

その量を毎日食べても健康に害を及ぼさないという食品添加物の一日あたりの摂取量がADIですから、そのさらに1%にも満たない量というと、どれだけ現在の食品添加物が安全性を重視して規制されているかが理解できると思います。

では、ある食品に使用された食品添加物の量が、規制値の10倍だったとします。

ここで、量の概念が身についているか否かで、この事柄についての反応が大きく違ってしまうことがあります。

「基準に反してしまった」という事実よりも、「10倍」という数字(倍率)に驚き、その数字が意味する事実を適切に理解することなく、健康への影響を恐れてしまう、といったケースです。

基準を大幅に超えていることが明らかなのですから、何故そのような状況になったのかという原因究明と再発防止は不可欠です。

そのような観点からは決して看過できない出来事といえます。

一方で、その食品を口にしてしまった、としたらどうでしょうか。

例え基準の10倍だとしても、毎日摂取し続けても害を及ぼさないADIを超える数値には到底及ばず、健康への影響を心配する必要性は極めて低い(というか、心配しなくても良い)と思われます。

にも関わらず、「やばい」「大変だ」と反応してしまうことって、案外珍しく無いんですよね(私もそういうときがあります)。

量の概念が欠如している場合は、リスク等の見積もりが往々にして不正確になりがちです。

そのため、本来は無視しても良い程度のリスク(リスクという表現自体が不適切かも知れませんね)を避けることを優先し、本当に避けるべきリスクを避けそこなったり、不必要に新たなリスクを抱え込んだり、ということにもなりかねません。

こどもたちには、「○○倍」とかいう時は、そのもとになる数字もちゃんとみておくんだよ、と話しました。

1gが2gになっても倍、1kgが2kgになっても倍、500kgが1tになっても倍、だけどそれぞれ違いは、1gと1kgと500kgです。

運搬する荷物の重量なら、1gは無視しても良いですし、1kgは頑張れば対応できますが、500kgは無視できませんし頑張りだけでは対応できません。

「2倍」だけでは、その差を正確に把握することはできないんだよ、と。

単位と桁も大切だ、ということも話しました。

1kgと1000gなら同じだけど、単位の前につく数字は1000倍違います。

また、億と兆では1万倍違うのですが、個人のお金の感覚からするとどちらも「大金」なんですよね(違いとしては1万円と1円の違いと同じなんですけど)。

こどもたちに上手く伝えられたのか、理解を促せたのかは定かではありませんが、これからも折に触れ意識付けしていきたいと思っています。

木曜日担当・高畑紀一@一般社団法人 Plus Action for Children

2004年、当時3歳だった長男がインフルエンザ菌b型(Hib/ヒブ)による細菌性髄膜炎に罹患、「今晩一晩が山」という状況に陥る。

幸い、奇跡的に回復することができ、「運悪く稀な病気に罹り、運良く回復できた」と考え、それ以降は病気のことを考えない、思い出さないようにして日々を過ごす。

そ の後、ヒブによる細菌性髄膜炎がワクチン(ヒブワクチン)で防ぐことができる疾病であること、2004年当時、既に多くの国々でヒブワクチンが導入され子 どもたちが細菌性髄膜炎から守られていたことを知り、「運悪く稀な病気に罹った」のではなく、ワクチンで防ぐことのできる疾病から守ってあげることができ なかった、自分自身を含む大人たちの不作為で生死の淵を彷徨わせたのだと後悔する。

この経験をこれ以上、繰り返さないため、ワクチン後進国と揶揄されるわが国の状況を改善し、子どもたちがワクチンで防ぐことのできる疾病から守られる環境を整えるため、活動に参加。

その後、ワクチン・予防接種だけにとどまらず、子どもたちを取り巻く環境を改善するため、そしてそのために行動する大人を支援するため、「一般社団法人 Plus Action for Children」を設立、現在に至る。