なぜ就活生はコミュニケーション能力不足と言われるのか

企業は毎年のように就活生に向けて「われわれは採用選考時にコミュニケーション能力を重視していますよ」とコミュニケーション能力を身につけるよう要求しています。
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シニア世代とデジタルネイティブ世代の間に生まれているコミュニケーションの齟齬。そこに潜む「書記コミュニケーション」と「聴覚コミュニケーション」の活用スタイルの違いとは?

わたしたちのライフスタイルはスマホによってもののみごとに変わってしまいました。スマホのおかげで、いつでもどこでもお互いの情報を交換したり発信したりできます。LINEやFacebookメッセンジャーなどを使って、会話するように実時間コミュニケーションすることもできます。「スマホ・リテラシー」のないシニア層からみれば、スマホを自在に操るデジタルネイティブはきっと異次元の生きものに思えていることでしょう。

実際に、会社などで管理職の立場にある大人(シニア層)と就活生(デジタルネイティブ)の間にはなにやら深刻な齟齬が生まれているようです。ここ10年、企業は毎年のように就活生に向けて「われわれは採用選考時にコミュニケーション能力を重視していますよ」とコミュニケーション能力を身につけるよう要求しています。就活生(デジタルネイティブ)は、Facebook、Twitter、LINEなどのコミュニケーション手段を自在に使いこなしているのに、なぜなのでしょうか。

コミュニケーションは、大きく2つに分けることができます。書きことばを基本とする「書記コミュニケーション」と話しことばを基本とする「聴覚コミュニケーション」です。

「書記コミュニケーション」とは、その名の通り文字によるコミュニケーションです。ですから、原本性、再現性そして滞留性といった点でとても優れています。ビジネスでの契約書や金銭のやりとりに関する伝票などはどれも書記コミュニケーションで行います。

一方、「聴覚コミュニケーション」は、基本、揮発性で、再現性に欠け、保存もできません。音声を録音することはできますが、そのための道具がメモとペンのようにいつでもそこにあるわけではありません(スマホが普及すると録音アプリで記録を残す人は増えるでしょうね)。しかし、メリットもあります。時間と空間の共有によって、容易に「気分」や「雰囲気」といった言外の意、つまり非言語コミュニケーションを取り交わすことができる点です。

エントリーシートや小論文にいくらすばらしいテキストがしたためられていても、甲乙つけがたいコンペで賞杯を手にできるかどうかは、どれほど相手の心をゆさぶることができたか、論理よりも情熱にかかっています。

学生時代にテキストベースのコミュニケーションに慣れ親しんだデジタルネイティブ世代は、絵文字やスタンプなどをつかった書記言語に慣れすぎているためなのでしょうか。あるいは文芸作品の読書量が不足しているからでしょうか。スマホのような道具を使うのは器用ですが、とにかく文を書くのがうまくありません。シニア層が喜ぶようなこころのこもった文章を書くのが下手なのです。エントリーシートを書かせてみればどこかからコピペしたみたいによくできた中身のない優等生の文を出してきます。どこにも自分のことばが見えてこない。そんなのばかりじゃ面接官も食傷気味になって、もっと「コミュニケーション能力を!」となっても致し方ないように思うのです。

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プロフィール

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1986年 順天堂大学医学部卒業。医学博士

順天堂大学医学部講師、私学事業団東京臨海病院耳鼻咽喉科部長、順天堂大学医学部客員准教授、みつわ台総合病院副院長などを経て、国際医療福祉大学病院 耳鼻咽喉科 教授

著書に『「耳の不調」が脳までダメにする』(講談社)『耳トレ!-こちら難聴・耳鳴り外来です』(エクスナレッジ)ほか