数年前、ということは知事をしていたとき、いかにして若い人たちに美術館に足を運んでもらうのかということに取り組んだことがある。そのとき、あまり美術館に行かないと言う若い人たちになぜ行かないのかを聞いてみた。そもそも美術に関心がない、行く理由がない、デートに使えない、などいろんな答えが出てきたが、そのほかに印象的だった答えがあった。
「電源がないから」というものだった。
全国の美術館関係者のみなさん、ショックではありませんか? 「電源がないから美術館に行かない」という人たちが存在しているのだ。
スマホ時代になり自分の携帯の電池がどれくらい残っているのかがいつも気になるようになってきた。だから逆に言えば充電ができる環境というのがいかに大事になっているかということになる。とはいえ、美術館に行かない理由になっているとは。
佐賀県では去年から無料Wi-Fi環境の整備に着手したがその際併せて充電スポットも整備するようにしたのはこの「電源がないから」という答えが1つのきっかけになったのは間違いない。
ところで先週、国交省海事局から全国にある船員養成学校に関する行政改革についてブリーフィングを受けた。僕の選挙区である唐津には国立唐津海上技術学校があり定員は1学年40人。中学を卒業した人たちが3年過程で学んでいる。行政改革と聞いて、学校を廃止統合するという話か?と身構えたがそうではなかった。内容を聴き終えた後、ちょっと安心して僕は訊ねた。
「最近、海員学校って人気あるんですか?」
「はい」
元気に担当者が答えてくれた。
「仕事はちゃんとありますし、以前に比べれば船の中の労働環境も随分よくなりましたから」
「それはよかったですね」と相槌をうったところ、こう付け加えられた。
「でも課題もあるんです」
「それは?」
「通信環境です」
「と言うと?」
「船員ですから沖合に出ます。そうすると携帯電話が繋がらなくなって彼女と通話やLINEができないんです」なるほど。
彼女と連絡ができないのならこの仕事につくのをやめる。
そこまで極端ではないにせよそのような考え方をする人たちもいるのだと言う。
「電源」といい「通信環境」といい、若い人たちにとってマストな要素、が変わってきてるのは間違いないようだ。
地方創生もまずは通信環境から、という気もする。
(2015年3月2日「週刊yasushi」より転載)