原因不明の難病である潰瘍性大腸炎の治療用に開発された新薬が効果的であることを臨床試験で確認した、と東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の研究グループが、このほど発表した。潰瘍性大腸炎は国内で推定16万人の患者がいて増加傾向にある。研究グループは、日本でこの病気の新薬が開発されたのは十数年ぶりで、治療の選択肢が増える、と期待している。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に潰瘍やびらんができる炎症性の病気で、多くの場合症状が良くなる「寛解」と悪くなる「再燃」を繰り返す。精神的、肉体的ストレスで悪化する。最近の研究で免疫機構、特に自己免疫が発症に関係していると指摘されているが、詳しい原因は分かっていない。国内患者数は、2011年の約13万人が現在約16万人以上と増加している。患者は20代から30代が多いが、中高年も増えている。現在、決定的な治療法はなく、症状によって副腎皮質ステロイド薬、免疫調節薬などが使われている。投薬効果が表れないケースも多く、新しい薬剤の開発が期待されていた。
研究グループは、新薬の有効性、安全性を調べるための第2相臨床試験を実施。全国42医療施設の計102人の潰瘍性大腸炎患者を対象に、8週間投薬試験を行った結果、臨床試験基準上「明らかに効果あり」を示すデータが得られた、としている。
研究グループが臨床試験に用いたのは、味の素製薬株式会社が開発した薬剤「AJM300」。AJM300は、リンパ球が腸管で働く際に必要な分子の機能を阻害するメカニズム(抗体製剤)の経口薬。抗体製剤は海外で既に臨床応用例があるが、経口薬としては世界で初登場、という。
関連リンク
・東京医科歯科大学プレスリリース「潰瘍性大腸炎の日本発の新治療薬をオールジャパン体制で開発」
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・2015年2月16日ニュース「慢性炎症で大腸がん悪性化の仕組み解明」
・2014年11月25日ニュース「藻類の成分が潰瘍性大腸炎を抑制」