知識も経験もないまま体当たりで始めたコインランドリー 櫻井宏美さんが忙しいママたちを救う

女性ひとりで入りやすいコインランドリーを求めて

ラシク・インタビューvol.115

株式会社アスピースコーポレーション 代表取締役 櫻井宏美さん

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櫻井宏美さんがご夫婦で経営する大型コインランドリー「晴れのち晴れ」は2010年に東府中に1号店をオープン、現在東京都内に5店舗を構えています。

元々コインランドリー事業についての知識、経験もなかった櫻井さんが、コインランドリーを始めようと思ったのは、「洗濯で困っている人の役に立ちたい」と感じたシンプルな想いから。これまでの経緯や、夫婦でビジネスに取り組む上で大事にしていること、子育てが仕事に影響したことなど、お話を伺いました。

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国道に面した部屋ではタオルを干すと真っ黒に。

女性ひとりで入りやすいコインランドリーを求めて

編集部:今、コインランドリーってすごく話題になってますが、事業を始めたきっかけはどういうものだったのでしょうか?

櫻井宏美さん(以下、敬称略。櫻井):私たち夫婦が新婚時代に住んでいた部屋は、あまり日当たりがよくなくて、国道に面していることもあって、白いタオルを干したら真っ黒になってしまうようなところだったんです。

それで顔を拭くのに抵抗があってコインランドリーを利用するようになったんですが、当時は今みたいに綺麗なところは少なくて、女性ひとりでは入りにくい雰囲気のところが多かったんです。

私たちと同じように困っている人は他にもたくさんいるんじゃないかと思っていたし、洗濯って日々欠かせないものですよね。

家事の軽減をお手伝いすることで、人の役に立てる、地域や社会に貢献できるような仕事をしたいなと思ったんです。

編集部:ご自身の経験がきっかけだったんですね。とはいっても、コインランドリー事業のご経験があるわけでもなく、お店をオープンするまでは長い道のりだったのではないかと思うのですが。

櫻井:資金調達のために食費を切り詰めるなど節約もしましたし、融資を受けたいと金融機関に出向いても何の人脈も知識もない中で「コインランドリーを始めたい」という申し出は何度も断られました。

コインランドリーって無人で24時間運営するものですから、たむろの場になるんじゃないかなど危惧されて、物件探しも非常に難航しました。

そこからようやく2010年に1号店をオープンすることができたんですが、当初は広告宣伝の方法がまったく分からなくて。

私たちは最初から布団や毛布を洗える大型のランドリーに焦点を絞っていたんですが、誰が使ったか分からないところで布団を洗うことにネガティブなイメージを持っている方もいたかもしれません。

小さなお子さんに「何でおうちに洗濯機があるのにここに来るのー?」って聞かれることもあったので、コインランドリーの利便性をどのように訴求すればいいのか悩んで、自分たちで一万世帯にポスティングもしましたし、駅前で「お願いしまーす! そこにあるから見ていってくださーい!」なんて夫婦漫才もしたんですよ。

今冷静になると「あそこまでやる必要あったのかな......」と思うんですけど、その時は何でもやってみようって考えてたんですよね。

チラシを片手に宣伝活動をする櫻井さん

編集部:ものすごい体当たり! そこからはずっと経営は順調ですか?

櫻井:決して順風満帆ではありません。事業について常に夫と何度も話し合いながら現在に至ります。でも、ここまでこれたのは、お客様からの声が大きかったです。

お客様に提供するもの、洗濯の工程から洗剤に至るまで、自分たちが納得したものをすすめたい、と考えていたので、子どもが生まれるまでは私たちも自宅に洗濯機を置かず、コインランドリーで洗濯をしていたんです。そこでお客さんと一緒に洗濯物を畳みながら、意見や要望、改善点を聞いていました。

ベビーカーを押してくる人がいれば、バリアフリーにした方がいいな、とか、妊婦さんが来たら、畳み台の高さはどうしたらいいかなど、実際の店舗でお客様を見たりお話を聞いたりすることが、店舗改善や次の店舗の運営方針に大きく影響しましたね。

夫と意見が食い違っても、洗濯に行く度にお客さんの声に励まされた

"おかあさんに優しいコインランドリー"を目指して試行錯誤の日々

編集部:旦那さんがビジネスパートナーって心強い反面、意見が食い違ったり、方向性がずれてしまうことで夫婦仲も...... というリスクもありますよね。

手を取り合って進めるために心がけていたことなどはありますか?

櫻井:もちろん議論が平行線をたどる時や喧嘩して口もきかないときもありました。

しかし、その度にお客さんの存在に救われるんです。うちに洗濯機がないからコインランドリーに行かなきゃいけないですからね(笑)

名前も知らない方たちばかりだけど、一期一会というか...... どの方のことも忘れられないんですよね。

工夫として大きかったことは、夫と私で役割を分けたことですかね。

機械の整備などのハード面、数字や経営判断は夫の役割、私はアイデアやソフト面に徹して、お互い補完し合える関係できたことが良かったのかなと思います。

旦那さんと、2歳のお子さんと一緒に。

編集部:お子さんができたことで仕事や経営に影響したことはありますか?

櫻井:子どもができていよいよコインランドリーでは間に合わなくなって、洗濯機を買いました(笑)

子どもがいるご家庭は、とにかく洗濯物の量が増えますし、保育園に預けているご家庭だと週末にシーツなどを持ち帰ったりしますよね。

しかも土日に雨なんてこともあるので、乾燥だけでもランドリーで、という提案もできるなとか、赤ちゃんの肌を守るため質のいい洗剤を使おうとか、子どもがいるからこそ気づいたことがたくさんありますね。

店舗では、無料で染み抜き剤やソフターシートを置いたりして、おかあさんに優しいコインランドリーを目指しています。

コインランドリーの経営では、常に店舗に出向くわけではないので、2歳になった息子を保育園に預けずに仕事はできていますが、次のサービスの吟味をしたり、クリーニング工場に行ったり、チラシを作ったりと、見えない部分の仕事はとても多いです。

今、大手の企業が参入していることもあって注目はされている事業ではありますが、個人で経営していく上で、私たちにしかできないことは何かと考えながら、日々業務にあたっています。

吉祥寺店開店日

編集部:決して洗濯機を置いてハイおしまい、ではないんですね。

子育ても家事も仕事も...... と「何でも自分でやらなきゃ!」と抱え込んでいるお母さんたちに櫻井さんからメッセージはありますか?

櫻井:まずはコインランドリーをぜひ覗きに来てください、どんな小さな質問でもいいのでHPからお問合せください、って思っています。

「これはコインランドリーで洗濯できるの?」というような疑問にも答えられるように私たち夫婦はクリーニング師の資格も持っています。

ワンオペ育児もよく耳にする話だし、仕事も子育ても介護も、という方も増えていますよね。

洗濯の時間を有効活用してほしいので、少しでもお役に立てたらなと思っています!

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TVや新聞で取り上げられることも増え、話題になっていることから、どこか「美味しい商売」だと思われているところもあるコインランドリーですが、櫻井さんの実直で真摯な姿勢を目の前にすると、楽なビジネスなんてあるわけがないな、と当たり前のことに改めて気づきました。

私自身もせわしない日々を過ごしていますが、櫻井さんの言葉の一つ一つが温かく、ホッとさせられるインタビューでした。

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ワーママを、楽しく。LAXIC

文・インタビュー:真貝友香

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