アメリカ連邦捜査局(FBI)は10月28日、アメリカ大統領選の民主党候補のヒラリー・クリントン氏が国務長官在任中に私用メールを使った問題で、新たに政府の重要機密情報を取り扱ったとみられるメールが見つかったため、捜査を再開したと発表した。
一連のメールは、クリントン氏の側近であるフーマ・アベディン氏と夫のアンソニー・ウィーナー元下院議員が共有していた電子機器から見つかった。ニューヨーク・タイムズが最初に報じた。ウィーナー氏は未成年の少女と性的なメッセージのやり取りをしていたとして、連邦政府の捜査を受けている。彼とアベディン氏は8月に離婚した。
FBIのジェームズ・コミー長官は28日、アメリカ議会の各委員長に送った書簡で「無関係の事案と関連して、メール問題の捜査に関連するとみられるメールの存在を発見した」と述べた。コミー長官は、FBIはそのメールが「重大なものかどうかを現時点では判断できず、追加の捜査を終えるまでにどれだけの時間が必要になるかは予測できない」と述べた。
FBIのコミー長官は、議会メンバーへの書簡で、FBIがクリントン氏の私用サーバー問題で追加のメールを調査していると述べた
AP通信によると、今回FBIが捜査を行っているメールはクリントン氏の私用サーバーから見つかったものではない。ロサンゼルス・タイムズによると、捜査当局は「メールはクリントン氏が送受信したものではない」とも述べている、さらにメールの一部、あるいはすべてが、FBIがすでに調査済みのものと重複しているのではないかとされている。
FBIのジェームズ・コミー長官は7月、FBIはクリントン元国務長官に対する刑事訴追を見送るよう司法省に勧告すると発表したが、機密情報の扱いについては「極めて軽率だった」と指摘した。
ヒラリー・クリントン氏の選対部長を務めるジョン・ポデスタ氏は、投票直前にコミー長官が発表したのは「異例だ」と批判した。
「3カ月以上前にこの捜査を終えたFBIのコミー長官は、『分別のある検察官ならこれ以上本件を追及しない。さらに、この件は危機的なものではない』と述べている。その後の数カ月間、ドナルド・トランプ氏と共和党の支持者たちは根拠もないままFBIを批判し、決定を覆すよう彼らを公私両面で威圧し、ヒラリー・クリントン氏の大統領選に悪影響を与えようと必死になっていた」と、ポデスタ氏は声明で述べた。
「コミー長官は、8人の共和党委員長に送ったものよりもさらに詳しい情報をアメリカ国民に即座に公表すべきだ。すでに、FBIが捜査を『再開』したという見方も出ているが、コミー長官の発言はその見解と一致するものではない。コミー長官による書簡では、メールは無関係の事件から明るみになったものだとされているが、我々はその一連のメールが何なのかも知らず、長官自身も重要なものではないかもしれないと述べている」
さらにポデスタ氏は、クリントン陣営はFBIが7月と違う結論に至ることはないと確信していると述べた。
ホワイトハウスのエリック・シュルツ報道官は、大統領はコミー長官の発表を報道を通じて知り、「どのような結論になるにせよ、FBIの捜査はすべて事実にもとづいて行われることを大統領は求めている」と述べた。
クリントン氏は国務長官時代に私用のメールサーバーで個人のメールアカウントを使用していた。2015年3月にニューヨーク・タイムズが第一報を報じて以来、その問題は彼女につきまとってきた。
クリントン氏は職務関連の3万通のメールを国務省に提出したが、職務に関係のないメールは削除したと述べた。彼女は当初、利便性の面から私用メールを使い、国務省の規則でも認められていたと述べたが、後に自身の間違いを認めている。
クリントン氏を批判する人々は、コミー長官がクリントン氏を守るために訴追しないよう勧告したと非難している。これについてコミー長官ははっきりと否定している。クリントン氏批判の急先鋒は共和党候補のドナルド・トランプ氏だ。クリントン氏は腐敗しているという批判を繰り返しており、28日の発表にも即座に反応し、「彼女は信用できない。大統領になる資格はない」と発言した。
ニューハンプシャー州で開かれた集会で演説を行ったトランプ氏は、壇上に上がる数分前に書簡のことを知ったと語った。
「ヒラリー・クリントンの腐敗はかつてないものだ。彼女が犯罪の計略を大統領執務室に持ち込むのを許してはならない。FBIと司法省が自分たちの犯した恐ろしい過ちを正そうという勇気を見せていることに対して、多大な敬意を表したい」とトランプ氏は述べた。「アメリカ国民はちゃんと分かっていた。これは深刻な誤審だったと。それが正されようとしていることは皆さんにとっての希望だ」
共和党副大統領候補のマイク・ペンス氏は、捜査関連のメールを公表するようFBIに求めた。
トランプ陣営のケリーアン・コンウェイ選対本部長は、今回の発表に満足しているとツイートした。
今日は私たちにとって良い日でしたが、それがさらに素晴らしいものになりました。クリントン氏の問題に関してFBIが新たなメールの調査を行っています。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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