9月20日、金曜日、午後5時。
秋晴れが心地よく、夕暮れの涼しい風が肌を撫でるなか、私は渋谷の国連大学前にやってきた。気候危機への早急な対策を求める「グローバル気候マーチ」に参加するためだ。
ニューヨークで9月23日から開催される国連気候アクションサミットを前に、世界中で開催されたマーチ。日本国内でも20以上の都道府県で行われた。
若者を中心とした気候変動に対するデモの動きは、2018年に当時15歳だったスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんがスウェーデン議会の前に座り抗議を始めたことがきっかけ。その後#FridaysForFuture #ClimateStrikeというハッシュタグとともに彼女の運動は世界中に広がり、これまでに100万人以上の世界中の子供たちが学校ストライキをし、気候危機に向かって立ち上がる動きに発展している。
今回私が参加を決めたのは、もともと海が好きで環境に興味があったこと、そしてハフポスト日本版で環境やSDGs関連記事を多く担当するなか、日々環境が悪化していくニュースを目にし気候変動の影響に危機感を感じているからだ。また、今回主体となっている若者と少しでも連帯できれば、と思った。
今回のマーチ、他の参加者はどんな気持ちを持っているのだろうか?
山梨から父親と他の友達と来たというフリースクールに通う9歳の女の子は、「ゴミが多かったり、地球の温暖化が進んでいたり、地球のピンチだってことをもっとみんなに知ってもらいたい」と話してくれた。スクール関係者の方によると、子どもたちが自ら参加すると言ったという。私が9歳のときなんて、何考えてたっけ?と自分が少し恥ずかしくなった。
都内の大学に通うという女性は、「地球が大変なことになっているのに、政治も対策が進まず、市民も自分ごとにしていないということに危機感を感じています」と話した。私が大学生の時は「気候変動」という言葉も知らなかったのではなかろうか?いや、当時は「地球温暖化」と言われていたっけ?今ではもはや「気候危機」と呼ぶべきだ、という動きもある。
気がつくと、国連大学前広場には、たくさんの人が集まり、列を作っていた。5時半になり、先頭での掛け声とともに、列が動き出した。
参加者は小さな子どもから大人、そして国境を越えて多くの人が、思い思いの手作りプラカードを持って、声を上げながらマーチを始めた。中には企業で参加しているグループも数社おり、マーチ参加のため営業休止にして参加している会社もあるという。
「I say 地球、you say 守ろう」
「気候は変えず、自分が変わろう!」
「Save our future、Protect our future」(未来を守ろう)
「What do you want? Climate Justice!」(何が欲しい?公平な対策!)
「When do you want it? NOW!」(いつ欲しい?今!)
大きな声で訴えながら、長い列は表参道をねり歩いた。
金曜日の夜ということもあり、街には多くの人がいて、携帯を片手に動画や写真を撮っている人も多くいた。
通りすがりの若者に声をかけてみると、関東在住という20代の男性は「こういうの見ると、温暖化とか、どこかで起こってるんだなぁ、と思いました。会話を始めるきっかけにはなりますよね」と話した。このデモを見ても、あまり自分ごととは感じにくいようだ。しかし、きっとそれが現状なのだ。大雨や熱波の悪化よりも、「増税」や「セクハラ」などの問題の方が日々の生活への影響を感じやすいだろう。大都市のど真ん中を歩きながら、その温度差をひしひしと感じだ。
日は沈み、マーチは高級店ひしめく表参道から、ヒップな若者の街「渋谷」に入った。
参加者の中でもひときわ声を大きく張り上げている若者がいた。早稲田大学で国際教養を学んでいるというアディティヤ・ゴーヤルさんだ。彼は今23歳だというが、「これは、これから先の、僕らの子供や孫の問題ではなく、僕ら自身に影響のある問題です。そしてあなたが50歳であろうが80歳であろうが関係ありません。問題はすでに起こっています。気候変動は、科学が証明している。僕は自分ができることをやっているだけです」と力強く話した。
列はついに、世界でも有名な観光名所、渋谷のスクランブル交差点に差し掛かった。
商業ビルや巨大スクリーンからのライトが私たちの長い列を照らした。
スクランブル交差点で赤信号を待つ多くの人たちが、このマーチを見ていた。彼らは何を思っただろうか?
コーナーを曲がり、青山通りの坂を登ると、スタートでありゴール地点である国連大学が見えてきた。時間はもうすぐ7時だ。参加者が多く、そのまま解散となったが、お互いを讃えハイタッチする人々もいた。
東京では今回、約2800人がマーチに参加したという。
マーチを終えた帰り道、今回出会った子どもや学生たちの言葉やプラカードを思い返した。そこには彼らの「危機感」と変化を求める「強い意志」があった。「気候危機」を自分ごととし、市民への責任ある行動や、国への対策を訴えている。
私たち大人は、彼らを「たくましい」と傍観するだけでなく、彼らに負けじと行動する必要がある、と強じるマーチだった。
「気候は変えず、自分が変わろう!」
そう、まずは自分から。