イギリスの朝の情報番組で、Netflix映画『ドント・ルック・アップ』のワンシーンを再演したかのようなやりとりがあり、話題となっている。
イギリス国内の複数の貯油施設を封鎖し注目されている環境活動家グループJust Stop Oil(ジャスト・ストップ・オイル)のミランダ・ウィルハン氏は4月11日、イギリスの放送局ITVの朝番組「グッドモーニング・ブリテン」に出演し、なぜデモ参加者たちが政府にメッセージを送っているのかを説明した。
「私たちは誰も人々の生活の邪魔をするようなことはしたくありません。ですが、科学や学者が語る石油の世界中への影響を考えると、政府がエネルギー政策や気候誓約に失敗している今、このレベルの行動を起こす必要があるのです」と彼女は語った。
するとキャスターのリチャード・マデリー氏は「でもあなたは、これが非常に複雑な問題、そして議論であることを理解しているでしょう?」と述べた。
「この『Just Stop Oil(石油をやめろ)」』のスローガンは、とても子どもじみていますよね。『石油をやめろ』なんて...。他にもっと言うことがあるでしょう?」
ウィルハン氏が「答えはとてもシンプルです。新たな石油のライセンスを止める必要があるのです」と説明すると、マデリー氏は「妨害することでどう議論が進むんですか?進まないでしょう?単に混乱を引き起こすだけで、否定的な反応が返ってくるだけですよ」と返した。
マデリー氏は、同番組の視聴者からは「怒りの苦情」しかなく、支援のメッセージは一つもなかったと主張した。
ウィルハン氏はこの批判に対し、「そう言う人たちは、今年発表されたIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の最新報告書について知っているのでしょうか?私たちは大きな気候災害への道にまっしぐらだと警告しているのです」と指摘し、化石燃料の使用を廃止していくべきだと訴えた。
このやりとりがTwitterでシェアされると、人々は映画『ドント・ルック・アップ』と比較せずにはいられなかったようだ。
2021年に公開され、アカデミー賞にもノミネートされたこの映画は、半年後に彗星が世界を破壊することを警告しようと2人の科学者が奮闘する姿を描いている。
レオナルド・ディカプリオとジェニファー・ローレンスが主演を務めたこの作品は、現在の気候危機に対して世界が十分な行動をとっていないことを暗喩している。
作品中には、ローレンス演じる天文学を学ぶ大学院生が朝番組で「私たちは地球全体が破壊されようとしていることを伝えようとしているのです」と必死に訴えるも、司会者には「朝番組では悪いニュースも軽く伝えるのよ」と軽くあしらわれた。
今回の「グッドモーニング・ブリテン」でのやりとりは、まさにこのシーンを見ているようだ、と話題になった。
Twitterでは、番組キャスターの態度や発言にも批判の声が寄せられた。
出演した活動家のウィルハン氏は番組放送後、「Just Stop Oilの活動について説明しようとテレビ出演したら、『ドント・ルック・アップ』のパロディになってしまった」とタイトルの文章をイギリスのガーディアン紙に寄稿した。
『ドント・ルック・アップ』を観たことがなかったという彼女だが、Twitterで話題になってから鑑賞したといい、SNS上で話題になった理由が分かったと話す。「最悪なのは、司会者やジャーナリストが、気候危機について何十年も研究してきたトップ科学者や学者たちよりもよく分かっているつもりでいて、聞く耳を持たないこと。こういった行為が、世界を滅ぼすのです」と述べた。
SNSに投稿された番組への反応では彼女たち活動家を支持する声が多いと言い、その声を行動に移す必要がある、と重ねて主張した。